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ろーぷれ  作者: めろん
32/60

第32話 悪夢

 太陽が昇り、テントの入り口の隙間から眩しい朝日が差し込んできた。


「ん……」


その光が顔に当たり、麗は顔をしかめてゆっくりと目を開けた。


「……もう朝か」


状態を起こしながらそう言った麗は、


「……?」


自分の高い声を聞き、喉元に右手を持っていきながら不思議そうに首を傾げた。


「……」


その動かした右手が視界に入り、麗はぱきっと固まった。


「な、なんだ、これは……!?」


麗はそう言って素早く立ち上がり、自分の姿を見回して見た。

白い肌に明るい色の可愛らしい服を来て、まだ縛ってない狐色の髪は腰まで伸びている。

それは、いつもと変わらない麗の姿。


「……っ!」


自分の姿を見て顔を真っ青にした麗は、


「おい、起きろ、鈴!」


と言って、隣で寝ている鈴を起こした。


「……? ……なん……ですか、麗?」


麗にやかましく起こされ、目を擦りながら少し不機嫌そうに鈴が尋ねた。


「違う! 俺は悠だ!」


彼女の質問に、麗は真剣な顔でそう叫んだ。


「……」


すると、鈴はまだ眠たそうな目を麗に向けた。


「……麗? 鈴の感情が薄いから、それを改善するために、毎日朝一番でボケてくれるのは、嬉しい、ですが、」


鈴はそう言った後、


「朝から大きな声を出さないでください、です」


と言って、再び横になり、深々と布団を被った。


「こ、これが冗談に―…」


そんな鈴に、麗が何か言いかけると、


『きゃああああああ!!』


「「!?」」


隣のテントから、つんざくような叫び声が聞こえてきた。

 何事かと思い、急いで隣のテントに向かう麗と鈴。

二人がテントの入り口を開けると、


「超最悪!! あり得ない!! マジ最っっ低!! 死ねよこのエロ河童!!」


「ちょっ……いたっ……痛いってば!」


顔を真っ赤にして怒り狂っている葵と、彼に手当たり次第に様々な物を投げつけられて痛がっている悠がいた。


「こ、これは……!?」


その光景を見て、目を見開く麗と、


「あ、葵にここまで言わせるなんて……!」


悠は一体何をしたのか、と思う鈴。


「!! 鈴!! ちちち、違うわよ!? おっ、起きたらいつの間にかこいつが私の隣に寝てて―…」


鈴の姿を見た葵は、顔を真っ赤に染めて必死に彼女に弁解している途中で、


「……え?」


彼女の隣に立っている麗を見て固まった。


「きゃああああああ!! ドッペルゲンガー!!」


そして叫んだ。


「……ったた……それは僕の台詞だよ?」


すると、起き上がった悠が葵に向かってそう言った。


((ぼ、“僕”?!))


悠の聞き慣れない自己呼称に驚く鈴と葵。


「あ、葵……なのか?!」


 そんな二人をよそに、麗が恐る恐る悠に尋ねた。


「え? そうだけど……何言ってるの、麗?」


「違う。俺は悠だ」


小首を傾げながら答えた悠に、麗がきっぱりとそう言った。


「ええ!? じ、じゃあ、もしかして……麗?!」


それを聞いて、悠は葵を指さしてそう尋ねた。


「そ、そうよ」


葵は頷いて答えた後、


「……え? 詰まり、私たち、入れ替わっちゃったってこと?!」


頭を抱えてそう言った。










「……成程、詰まり、この葵は麗で、この麗は悠で、この悠は葵、になってる、ですね?」


 どういうわけか中身が入れ替わってしまった三人を順に指さしながら鈴がややこしいことを言うと、三人は頷いた。


「世の中、不思議なことがいっぱい、ですね」


「いや、俺はお前だけ入れ替わってないことの方が不思議でならないんだが?」


ふむふむ、と頷きながら鈴が言うと、麗姿の悠がさらりと突っ込んだ。


「……その体に入ると、誰でも突っ込み役になる、ですか?」


そんな悠に、鈴は小首を傾げてそう言った後、


「恐らく、これのおかげ、です」


懐から壊れた十字架を取り出した。

これは、吸血鬼との戦闘時に出したもの。


「ああ、これってあの時の十字架?」


「はい、です」


鈴は、葵姿の麗の言葉にこくりと頷いた後、


「この十字架には、魔除けの力があった、です」


と言った。


「でも、壊れちゃってるよ?」


すると、悠姿の葵が小首を傾げた。


「……はい、魔除けの効果は一度切り、だったよう、です」


中身が葵だということは分かっているのだけれど、いつもとはまったく違った悠の言葉遣いにどうにも馴染めない鈴。


「……ということは、私たちは寝てる間に誰かに魔法を掛けられたってことね」


その隣で腕組みしながら麗が話をまとめた。


「魔法掛けたヤツ出てこいウラァ!!」


そして叫んだ。


「……葵の姿でそんな下品な言葉を口にするな」


すると、悠がさらりとそう言った。


「下っ―…あ、あんただって、私の姿でそんなぶすっとした顔しないでよ!?」


「は? それはもともとだろ?」


「なんですって?!」


そうして火花を散らし始める麗と悠。


「け、喧嘩しないでよ、二人ともっ?」


二人を止めようとする葵。


「ゆ……悠が喧嘩を止めてる、です」


そんな様子を見て、やはりどうしても馴染めない鈴であった。

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