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ろーぷれ  作者: めろん
31/60

第31話 眠気

 背の高い草むらの中を進む四人。


「それにしても、一体何をしに来たのかしら? 死神のヤツ」


草を掻き分けて道を作りながら、先程現れた死神について麗が言った。


「きっと僕たちと遊びに来たんだよ〜」


すると、彼女の前を歩いていた葵が振り向き、くすりと笑いながらそう言った。


「……いいわね? 葵は頭の中までほのぼのしてて」


そんな葵を見て、一気に体の力が抜ける麗。


「? 違うの? じゃあ、死神さんは一体何をしに僕たちの所に来たの?」


「どぅあ〜かあ〜らあ〜、それが分からないから質問したんでしょう!?」


 足を止めて小首を傾げて尋ねてきた葵の両頬を、麗は思い切り左右に引っ張った。


「……確かに、何もしないで帰っていったな」


その隣で悠が言うと、


「いえ、悠の鼻をへし折っていった、です」


彼の後ろでさらりと鈴がそう言った。


「きさ―…」


鈴に悠が何か言い返そうとしたところ、


「う、嘘!? 悠、大丈夫?!」


「!」


葵が心配そうに悠に顔を向けて言った。

悠の方が背が高いので、葵は必然的に彼の顔を見上げる形になる。


「だっ……大丈夫だ。と言うか、今のはただの表現技法だ」


そんな風に心配そうな顔で自分を見上げる葵を見下ろしながら、悠は若干恥ずかしそうにそう応えた。


「よかったぁ……って、え? そうなの?」


胸を撫で下ろした後、小首を傾げた葵に、悠が言葉の意味を説明し始めた。


「……もしくは、葵に会いに来た、です」


「……あり得るわね」


その様子を見て、そんなことを呟く鈴と麗。


「……ったくもー、男のくせにこのプリチー麗ちゃんより男にモテるってどういうことよ?」


そう呟いた後で、心持ち膨れながら溜め息まじりに麗が言うと、


「……」


鈴は、麗の顔を無表情、且つ、無言で見つめた。


「……何よ?」


それに気付いた麗が尋ねると、


「麗、葵に焼き餅、ですか?」


と、小首を傾げながら鈴が言った。


「! ち、違うわよ!?」


「……あれ? 霧が出てきたね」


 顔を赤くして否定した麗の発言のすぐ後に、悠から言葉の意味を聞き終わった葵がそう言った。


「そう、ですね」


周りを見回した後、こくりと頷く鈴。

四人の周りには、彼の言葉通り、いつの間にか白い霧が発生していた。


「なんかだんだん濃くなってきたわよ?」


歩を進めるに連れて濃くなっていく霧を見ながら麗が言うと、


「……この濃霧の中をこれ以上進むのは危険かもな」


悠がその場で足を止め、背負っていたリュックを降ろしてそう言った。


「宙を舞う三日月」


悠の魔法のおかげで、背が高い草が茂っていた彼らの前に、三日月型に開けた場所が出来る。


「そうだね。じゃあ、此処にテント張ろっか」


葵はリュックの中から道具を取り出し、そこにテントを張ることにした。


「鈴、手伝う、です」


「ありがとう」


テント張りを手伝うと言ってくれた鈴に、くすりと笑いながらお礼を言う葵。


「じゃあ、私は見張りね」


辺りに魔物はいないかと気配を探る麗。


「俺はきゅうりだな」


「働けよ」


腰を下ろしてきゅうりを食べ始めた悠に、麗は素早く突っ込みを入れた。


「よいしょっ」


「完成、ですね」


葵と鈴によって二つのテントが完成すると、


「ふあ……」


「……鈴、急に眠くなってきた、です」


「ええ……私も〜……」


「うん……じゃあ、今日はもう寝よっか」


突然の眠気に襲われ、四人は男女に分かれてテントの中に入っていった。


『……』


 テントから少し離れた所に、木の幹に隠れながら、四人の様子を見ている少女がいた。


『……ふぅ〜ん。あれが(わたる)のお気に入りまろか』


『む〜』


ピエロのような格好をしたその少女が面白そうに四人を眺めながらそう言った。

すると、それに答えるかのように、彼女の頭に乗っているトンガリ帽子の横から顔を出した、丸い犬のぬいぐるみのような生物が鳴いた。


『面白そうまろ。さあ、行くまろよ、むぅちゃん!』


『む〜』


 四人がテントの中に入ったことを確認すると、少女はそちらへ向かって、不思議生物と共に走り出した。

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