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ろーぷれ  作者: めろん
30/60

第30話 リーダー

 次の日の朝、鈴と麗の希望通り、四人はカエルの町を素早く後にした。


「わあ、いい天気だね」


「ああ、そうだな」


自分の隣を歩いて、以前と同じように同意してくれた悠に、なんだか嬉しくなる葵。


「……詰まり、あのマフラーの下にはお皿がある、ですか?」


「ぷぷー! 超ダサいんですけど!」


すると、後ろからそんな会話が聞こえてきた。


「すると、雪山で倒れたのはお皿が凍ったせい、ですか?」


「きゃはは! ちょっとやめてよ、鈴―…」


鈴が言ったことに対し、麗が楽しそうにきゃらきゃらと笑っていると、


「宙を舞う三日月」


悠が、前を向いたまま、さらりと呪文を唱えた。


「きゃああああああ?!」


その魔法によって発生した風に吹き飛ばされる麗。


「ったいわね! いきなり何するのよ!?」


起き上がってもの申し始める麗。


「おお。これはいいストレス解消法だ」


それを無視し、邪悪な笑みを浮かべながら悠がそう言った。


「って言うか、なんで私だけなのよ!?」


「鈴、避けた、です」


「なんですとぉ!?」


 そんな三人を微笑みながら見ていた葵は、


「あ、そう言えば麗、いつの間に僕がリーダーになったの?」


ふと、昨日疑問に思ったことを聞いてみた。


「は? そんなの、あんたの職業が剣士だからに決まってるでしょう?」


その問いに、麗は小首を傾げながら答えた。


「? 剣士だとリーダーなの?」


「あったり前じゃない」


葵の二つ目の問いに、さも当然のように頷いて答える麗。


「でも、僕、剣士の見習いだよ?」


そんな麗に、葵がさらりとそう言った。


「はわ!?」


葵の言葉にはっとする麗。


「そ、そうだったわね……見習いがリーダーってのはちょっと変かもだわ……」


「何を言っている? 葵以外リーダーになれる奴がこの中にいると思っているのか?」


ぼそっと呟いた麗に、悠が溜め息をつきながらそう言うと、


「あ、ありがとう。でも、実力で考えると、悠が一番強いし、頭も良いから、悠がリーダーの方がいいんじゃないかな?」


彼にお礼を言った後、葵は小首を傾げながらそう言った。


「あ、葵……」


「……そう言えば、悠は学年トップ、でしたね」


葵の言葉を聞いて、照れる悠と、思い出したように言う鈴。


「ただのきゅうり馬鹿にしか見えないのにね〜?」


「学年ワースト十位は黙ってろ」


「ワースト九位よ!!」


「麗、下がってる、です」


 そんな会話をしている傍らで、


「うーん、誰が一番リーダーに向いてるのかな?」


葵は首を捻っていた。

すると、


『やっぱ断然オレ様だろ』


と、後ろから抑揚のない声が聞こえてきた。


「って、あんたこのパーティーのメンバーじゃないでしょう?!」


「! 死神さん」


その声を聞き、麗が突っ込みを入れて、後の三人も彼に振り向いた。


『ふわふわ』


振り向いて見てみると、死神は巨大な鎌に乗って宙に浮いていた。


「じ、自分で効果音を言ってる、です」


「ええ。ただ者じゃないわね」


それとは別のところに驚きポイントを置く鈴と麗。


「……貴様、何処から湧いて出た?」


そんな二人はほっといて、悠は睨みを利かして死神に質問をした。


『お前、馬鹿? 人が湧いて出てくるわけないだろう?』


その質問を聞き、死神は右手で自分の頭を指さして、それをくるくると回しながら悠に言った。


「貴様は人じゃないだろ」


悠は、ぷ、と噴き出した麗を釵を突きつけて黙らせた後でそう言った。


『すたっ』


すると、死神は鎌から降りて、


『ん。神だ』


えへんと胸を張って言い放った。


「「……」」


死神と四人の間を、冷たい風が吹き抜けた。


「……あそっか。“死神”だから」


数秒後、ぽん、と手を叩いて葵がそう言うと、


『流石葵。大好きだ』


死神は葵を抱き締めた。


「暗雲の閃光は破滅をもたらす」


悠は即座に光魔法の呪文を唱えた。

直後、轟音を伴う激しい雷が死神目掛けて落下する。


『ぶん』


それが直撃する寸前、死神は自分で効果音を言いながら大鎌、鎌子を振るった。


「!」


「か、雷を……」


「斬った……です」


すると、あろうことか、雷は切り裂かれ、斬撃に負けて消え去った。

そんな信じ難い光景を目にし、四人はただただ驚くばかり。


『……まだまだ修行が足りないな』


死神は鎌子を担ぎながら、目を見開いて固まっている悠にそう言った後、


『む。おやつの時間だ』


と言って、


『ちゃお』


姿をくらました。


「「……」」


 死神が消え去った場所を無言で見つめる四人。


「……ええと、リーダーどうしようか?」


そんな居た堪れない空気を変えるべく、話題を元に戻す葵。


「……」


「……」


「……葵でいいわよ」


「う、うん。分かった」


こうして、葵がこのパーティーのリーダーとなった。

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