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ろーぷれ  作者: めろん
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第3話 白魔道士

 葵に一刀両断された巨大ネズミたちは、息を引き取ると同時に、白い光に包まれた。


「?」


突然光に包まれた巨大ネズミたちを見て、小首を傾げる葵。

すると、それらは砕け、無数の光の粒となって青空へと帰っていった。


「……ええと、ご冥福をお祈りします」


 ぱむっと合掌しながら葵がそう呟くと、


「す、凄いです!!」


と、背後から歓声があがった。


「え?」


葵がその声に振り向くと、


「あ、あの、剣士様ですよね!? 遠方からわざわざこの国にいらしてくれて嬉しいです!!」


金髪の少年が駆け寄ってきながらそう言った。


「え? いや、僕は剣士なんかじゃ―…」


「え?! 見習い剣士様なんですか!? こ、これは失礼いたしました!!」


「い、いや、だから……」


「見習いであそこまでお強いなんて……私、尊敬します!!」


興奮しすぎて葵の話を聞く余裕がないのか、少年は葵の左手を掴むと、


「見習い剣士様は十分お強いと思いますが、魔物退治には体力が要ります!! ですから、私の街でゆっくりと休んでからご出発してください!!」


そのまま葵を街に連れ込もうと引っ張った。


「……? 魔物?」


少年に引っ張られながら、先程の言葉に小首を傾げる葵。


「? 何をとぼけていらっしゃるんです? “魔物”とは、体内に邪悪な魔力を宿した生き物の総称です。って言いますか、貴方、先程それを見事に倒したじゃないですか!」


それを見て、葵がふざけていると思ったのか、少年は笑いながらそう言った。


「……」


さも当然のようにファンタジーな説明を自分にした少年に、


「……ええと、此処は何処で、あなたは誰ですか?」


葵はゆっくりと質問をしてみた。


「……? 此処はシードリーブス王国で……あ、名前はまだでしたね! 申し遅れました! 私はラフカディオ=シードリーブスです!」


そう言いながら、恭しくお辞儀をする少年、ラフカディオ。

もちろん、国と同じ名字を持つ彼は、


「……もしかして、王子様?」


「はい!」


だった。

聞いたこともない国名、明らかに日本人離れした名前と容姿、それなのに、何故か普通に通じる言葉、そして、魔物。

これらのことを通し、


「……此処……ゲームの中なんだ……?」


葵はようやくその事に気が付いた。

そして、なんだか少し、悲しくなった。












 翌朝。


「あ、葵様!」


「? ラフカディオ?」


「ま……間に合ってよかったです」


魔物退治に行く為、丁度街の門を出ようとしていた葵を、慌てて走ってきたラフカディオが呼び止めた。


「どうしたんですか?」


「葵様お一人では何かと大変だと思ったので、お仲間にと……」


葵の問いに、ラフカディオは息を整えてからその顔を上げ、


「街の教会にいらっしゃった、白魔道士さんをお連れしました!」


と言いながら、自分の後ろにいた人物が葵に見えるように、右にずれた。


「白魔―…って、鈴!?」


すると現れた真っ白なローブを身に纏い、フードを被り、頭の方がぐるぐるととぐろを巻いている典型的な木製の杖を持った少女を見て、驚きの声をあげる葵。


「! 葵……お久しぶり、です」


葵を見て、少女、鈴も、無表情ながら驚いた声を発した。


「……? お二人は、お知り合いなんですか?」


その問い掛けに頷いて答えた二人を見て、


「そうですか……お二人がお友達でよかったです」


自分も少しは役に立てたのだと分かり、ラフカディオは胸を撫で下ろした。


「……では、お二人とも、お気を付けて!!」


「はい。鈴を連れてきてくれてありがとうございました、ラ―…」


 そう言ってくれたラフカディオにお礼を言っている途中で、


「わっ!?」


葵の眉間に、杖の鋭く尖った方が勢いよく向かってきた。


「り、鈴さん!?」


それをなんとかかわした葵を見て安堵した後、彼に不意打ちを仕掛けた人物の名前を叫ぶラフカディオ。

すると、


「……今日の味方は明日の敵、に、なるかもしれないので、今のうちに殺そうと思った、です」


鈴は淡々とした口調でそう言った。


「あ、成程〜」


「いや、納得しないで下さい葵様?! って言いますか、そんな杞憂レベルで人を殺そうと思わないで下さい鈴さん!?」


すんなりと納得した葵と、平気でそんなことを口にした鈴に突っ込みを入れるラフカディオ。


「分かりました、です」


彼に言われたことを了解した鈴は、葵の顔のすぐ横に突き出したままの杖を引き戻し、


「うわあっ!?」


再び突き出した。


「こっ、今度はなんですか!?」


ラフカディオは再び見事にかわしてくれた葵に安堵した後、不意打ち第二弾の理由を鈴に尋ねた。

すると、


「……寝首を掻かれないよう、今のうちに殺そうと思った、です」


鈴は先程と同じ口調でそう言った。


「流石鈴だね」


「どんだけ人を信じていないんですか鈴さん?! って言いますか、笑い事じゃないですよ葵様!? って言いますか、貴方たちは本当にお友達なんですかーっ?!」


笑いながらまたしてもすんなりと納得した葵と、人をまったく信用していないような鈴に、精一杯の突っ込みを入れるラフカディオであった。


「わあ、凄いですね。ツッコミ三連発」


「ご苦労様、です」


「……もう早く行って下さい……」



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