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ろーぷれ  作者: めろん
29/60

第29話 一緒に

「か、河童!?」


 悠が突然告げた言葉を、鈴は驚いて聞き返した。


「……ああ。しかも、ボスキャラだ」


穴の中を流れる川の浅瀬に座り込んで背中に走る激痛に耐えながら言葉を付け加える悠。


「! そんな―…」


「……まあ、」


悠は、更に驚いたわりには相変わらず無表情の鈴の発言を遮り、


「そこにいる盗賊は最初から感付いていたようだがな?」


「!」


と、麗に顔を向けてそう言った。

それにつられるように、鈴もそちらに顔を向ける。


「……当然よ。気配が違うわ」


すると、麗は悠を見据えて静かに言った。


「う、麗……では、本当に悠は……」


 麗と出会った金山で、彼女が悠の心臓目掛けてナイフを投げてきたことを思い返し、恐る恐る麗に尋ねる鈴。


「魔物の血は青いの。それは鈴もよく知ってるでしょう?」


麗が鈴に向き直って、彼女の目を真っ直ぐに見ながらそう答えると、


「どうだっていいよ、そんなこと」


今まで黙っていた葵が、その言葉を打ち消した。


「「!?」」


「どっ、どう?!」


その言葉を思わず聞き返す麗と、いつもと感じが違う葵に驚く鈴と悠。


「鈴、早く回復魔法。悠が死んじゃうでしょう?」


「は、はい、です」


「! ま、待て、葵!? 俺は魔物で、しかもボスキャラなんだぞ?!」


鈴に回復魔法を使わせる指示をした葵に、悠が慌ててそう言った。


「だから?」


と、聞き返してきた葵に、


「敵を回復させてどうする?! 俺はこのまま死んだ方が―…」


悠がそう答えかけると、


「!」


悠の顔に、冷たい輝きを放つ諸刃の剣が突きつけられた。


「……それ以上言ったら、そのかっこいい顔に傷がつくよ?」


予想外の行動に驚いている悠に対し、葵はうつ向き加減に、不良のような脅し文句を口にした。


「あ、葵……」


「……」


名前を呼ばれても、黙って下を向いている葵。


「……今、俺を回復させたら、すぐにお前らを殺しにかかるかもしれないんだぞ?」


そんな彼が突きつけている剣が微かに震えているのを見ながら、悠は静かに尋ねた。


「大丈夫だよ。今までも大丈夫だったし、さっきだって、悠は僕を殺すどころか命がけで助けてくれたでしょう?」


彼の問いに、葵は下を向いたままそう答えた。


「さっきみたいに都合よく正気に戻らなかったらどうする?」


が、悠が再び質問をした。


「……俺は……お前らを殺したくない」


悠はそう呟いた後、


「……それなのに、俺の青い血はお前らの赤い血を求めてやまないんだぞ?」


顔に突きつけられている諸刃の剣を掴んで、自分の首に向けさせた。


「だから―…」


「僕だって悠を死なせたくない!!」


その手に力が入る前に、葵は顔を上げて彼に向かってそう叫んだ。


「……!」


その顔を見て、悠は目を見開いた。

それは、珍しく怒っている彼が泣いていたから。


「……だから、死んだ方がいいなんて言わないで」


葵は自分の頬を伝う雫を拭うと、


「これからも一緒にこの旅を続けて、一緒に元の世界に戻ろう?」


悠の手を剣から外しながらそう言った。


「……あ―…」


「ごちゃごちゃとうっさいわよ、ザビエルハゲ」


そんな葵に何か言いかけた悠に、麗が言った。


「ざ、ざびっ!?」


「あんたに拒否権なんてあると思ってんの?」


麗は、予想だにしなかった酷い呼称を思わず聞き返してきた悠を見据え、


「……リーダーがついて来いって言ってんだから、あんたは黙ってついて来ればいいの」


腕を組んでそう言った。


「それに、もう四人分の宿代を払ってしまいました、です」


すると、彼女に続いて、


「悠が来ないと、もったいない、です」


相変わらずの無表情で鈴が言った。


「お前ら……」


素直ではないけれど、二人の気持ちはしっかりと伝わった。


「って言うか、あんたは主戦力なの! あんたがいなかったら、私まで戦わなくちゃならなくなるでしょう?」


「……それに、攻撃してきたら返り討ちにしてやる、です」


すると、じわじわと恥ずかしくなったのか、麗と鈴は照れを隠すようにそっぽを向いてそう言った。


「というわけだから、町に戻ろう、悠?」


「……」


そんな二人を見てくすりと笑いながら、葵は悠に右手を差し延べた。

悠は少し迷ったが、


「……分かった」


決心したようにその手をとって立ち上がった。

そう言ってくれた悠に、葵はいつもの笑みを向け、鈴と麗は胸を撫で下ろした。


「……が、葵、」


「?」


名前を呼ばれたので、葵が小首を傾げると、


「そろそろ死にそうなんだが」


と、どくどくと背中から青い血を流しながら悠が言った。


「わあ!? 鈴、早く早く!!」


「い、癒しの風!」


その一言で悠が大怪我をしていることを思い出した葵は、慌てて鈴に回復魔法をお願いした。


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