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ろーぷれ  作者: めろん
26/60

第26話 カエルの町

「……?」


 ぽつ、と肌に何かが当たり、葵は空を見上げた。

見上げた空は、青々と晴れていた先程までとは打って変わって、どんよりと鉛色をしていた。


「雨、です」


 その隣で鈴が言った。

彼女も、葵と同じように空を見上げている。


「うっそ? さっきまであんなに晴れてたのに?」


最悪、とでも言いた気に空を見上げる麗。


「……」


悠は、乾いた地面に徐々に増えてゆく水の跡を無言で見つめていた。


「わあ、強くなってきちゃったね」


「笑ってる場合じゃないでしょう!?」


くすりと笑いながら言った葵に麗が突っ込みを入れると、


「街が見える、です」


鈴が前方を指さしてそう言った。


「ついてる〜ぅ! 走るわよ、野郎共!!」


麗が拳を振り上げながら、盗賊の頭領だった頃のように言った。


「……鈴、野郎じゃない、です」


「き、気にしなーい気にしない!」


鈴が突いてきた細かいところを笑って誤魔化す麗。


「……本当に強くなってきたね、悠?」


 本降りになったので、自分の後ろを歩いていた悠の方に顔を向けながら葵が言った。


「……」


が、悠は反応しなかった。


「……? 悠?」


「何? あんた、まーだ死神のこと怒ってんの?」


小首を傾げた葵の隣で、麗が呆れたように言うと、


「……別に怒ってない」


悠は短くそう返した。


「あっそ。じゃあ、早くあの街に行くわよ」


「悠、行こう?」


「……分かった」


 そうして、四人は前方に見える街を目指して駆け出した。










「いやああああああ?!」


「か、かか、カエル、です!」


 街の宿屋に入ると、麗と鈴が顔を青くして叫んだ。


「わあ、“カエルの町”はペンギンの町みたいに住んでる人がみんなカエルなんだね」


そんな二人をよそに、くすりと笑いながらカウンターに向かう葵。


「わ、笑ってる場合じゃないでしょう!? って言うか、人じゃないし!!」


「あ、葵、早く此処を出ましょう、です」


麗が突っ込み、珍しく動揺していながらも相変わらずの無表情で鈴が言うと、


「え? もう部屋取っちゃったよ?」


「お部屋はそこの階段を上がってすぐケロ。ごゆっくりケロン」


葵が振り向いてケロリと言い、カウンターにいるヘッドドレスをつけたカエルがにこっと笑いながらそう言った。


「あーもー、このうっかり症候群!!」


「……早くも擬音まで感染されやがって、です」


そんな彼の発言に、頭を抱えてわけの分からないことを叫ぶ麗と、若干口が悪くなる鈴であった。










「雨、止みそうにないね」


 部屋の窓から外の様子を見ながら葵が言うと、


「……この町には長くいたくない、です」


椅子に座った鈴がぽつりと呟いた。


「そうよ! だから早く雨止ませなさいよ、葵!」


すると、ベッドに倒れていた麗が立ち上がり、葵をズビシッと指さしてそう言った。


「ええ!? 無理だよそんなの?!」


「葵って名前なんだから空くらい青くしてみなさいよ!!」


「ええ!? 意味分かんないよ、麗?!」


「……寒い、です」


そんな会話を聞いて、鈴が再び呟いた。

はたしてその“寒い”は、体感温度に対してなのか、麗の発言に対してなのか。


「って、悠! 何笑ってんのよ!?」


 すると、麗が今度は悠を指さしてそう言った。

三人に背を向けて壁を向いている悠は、肩が震えていた。


「……」


が、まったく悠は反応を示さなかった。


「……? 悠、寒いの?」


「寒いってどういう意味よ!?」


心配そうに首を傾げた葵とは対照的に、麗は寒いの意味を取り違えて悠の腕をがしっと掴んで彼を振り向かせようとした。

 すると、


「触るな!!」


「きゃあ!?」


悠は麗を思い切り突き飛ばした。


「……!」


はっと我に返った悠は、三人から逃げるように部屋を出ていった。


「!? 悠?!」


「麗、大丈夫、ですか?」


「え、ええ……」


突然部屋を出ていってしまった悠に驚く葵と、突き飛ばされた麗の元に行く鈴。


「……悠、何処に行った、でしょうか?」


「うん……傘も持たないで大丈夫かな?」


「そこかい」


最後までしっかり突っ込む麗であった。

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