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ろーぷれ  作者: めろん
24/60

第24話 森

「街のみんなが連れ去られた?」


 次の日の朝、目が覚めた葵が驚いたように言った。


「……はい。虫取網で」


葵の言葉にこくりと頷く青髪の少年。


「そ、壮絶だね」


何が壮絶なのかはよく分からないが、葵は真顔でそう言った後、


「じゃあ、みんなはエディとエディの街の人達を助ける為に?」


と、鈴と悠と麗の方に顔を向けて尋ねた。


「はい。500000にょ――ムグ」


三人は、破格の依頼引き受け金額を言おうとした青髪の少年、エディの口を押さえ、


「そ、そうだ。こいつ、相当困ってるようだしな」


「も、勿論、です。困っている人は助けるのが当然、です」


「あ、あったり前じゃない! 人として!!」


冷や汗を掻きながらわざとらしい綺麗事を並べた。


「わあ、みんな優しいね」


が、それを聞いて、葵は嬉しそうに微笑んだ。


((あ、葵……))


彼が何ひとつ疑うことなく向けた素敵な笑顔を見て、酷く胸が痛くなる三人。


「じゃあ、僕も協力させてもらうね、エディ?」


「あ、ありがとうございます! では、早速出発しましょう!」


 こうして、五人は森の中に入っていった。










 木々が鬱蒼と生い茂る森の中を進んでいる途中で、


「そう言えば、どうしてエディだけ無事だったの?」


葵が小首を傾げながらエディに質問をした。


「ボク、お散歩してたんです」


エディは顔を上げてそう返した。


「お散歩から帰る途中で、虫取網を担いだ怪しい奴が街から出てきたのを見て……ボク、怖くて慌てて花の中に隠れたんです」


その時のことを思い出しながら語るエディ。


「そこから恐る恐る様子を窺ってみると、奴が持ってる虫籠の中に街のみんながごっちゃり―…」


「そろそろ突っ込むわよ、なんじゃそら?!」


エディの突っ込み所満載な解答に、痺れを切らした麗が彼に思い切り突っ込みを入れた。


「虫籠の中に街人がごっちゃり……ホラー、です」


「それに、虫取網で連れ去られたとか、花の中に隠れたとかあからさまにおかしいでしょう!?」


鈴の発言の後に二連突っ込みをかます麗。


「……? どこがおかしいの?」


「おかしいとこ分かんないヤツいたー!!」


麗は素で首を傾げた葵に突っ込みを入れた後、


「……ったく、何の為に擬態使ってんのよ?」


と、頭に右手を当てて溜め息をつきながらエディに言った。


「「? 擬態?」」


彼女の言葉に小首を傾げる葵と鈴。


「! 気付いてたんですか?」


その隣で、エディは驚いたように目を見開いて麗を見た。


「当然。気配が違うわ」


「……」


腕を組んで偉そうに頷いた麗を無言で見る悠。


「……何よ?」


それに気が付いた麗が聞くと、


「……虫ついてるぞ」


と、自分の右肩をちょいちょいと指さしながら悠が言った。


「へ? ――いやああああ!!」


自分の右肩を見た麗が絶叫した。

彼女の右肩には、鮮やかな黄緑色をした親指大のイモムシが這っていた。


「虫! 虫ぃ!! 悠、お願い取ってええ!!」


それを見た虫が大の苦手な麗は青ざめ、涙目で悠にお願いした。


「そのくらい自分で取れ」


が、悠はぷいと顔の向きを変えて、すたすたと歩き出した。

詰まり、全く取り合ってくれなかった。


「無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理!!」


ほとんど泣きながらそう叫んでいる途中で、


「……?」


麗は自分に背を向けた悠の肩が微かに震えていることに気付いた。


(……笑ってやがる……)


悠にとって、人の不幸はきゅうり味(葵以外)。


「こんの腹黒大魔王!!」


麗の中で、悠はいつの間にか大魔王に昇格していたようだ。


「ええと、擬態って?」


「詰まり、エディは人ではない、ですか?」


 悠と麗がそんなことをしている間、葵と鈴はエディに先程の話の続きを聞いていた。


「……はい、そうです。ごめんなさい。この姿じゃないとみなさんが驚くと思って……。実はボク、」


エディはそれに応えてこくりと頷くと、


「「!」」


ポン、と小爆発を起こし、少年の姿から淡い青色の光の玉に四枚の薄い羽がついた姿、


「妖精なんです」


――妖精に変わった。


「わあ……ファンタジーだね」


「フェアリー、です」


「……あれ? それだけですか?」


 鈴と葵が思ったより、と言うか、まったく反応を示さないので、ちょびっとショックを受けるエディ。


「……妖精、」


「あ、は、はい?」


悠に声をかけられたので、エディはしょんぼりと下に向けていた顔を上げて、


「その怪しい奴ってのはどんな奴だ?」


「怪しい奴です」


「喧嘩売ってんのか?」


「すみません」


という流れを終えた後、


「黒いローブを着た、虫籠を肩に下げて、虫取網ととても大きな鎌を担いだ奴でした」


と答えた。


「詰まり、こいつか?」


「はい。そいつです」


 五人の前に黒いローブを着た、虫籠を肩に下げて、虫取網ととても大きな鎌を担いだ奴が現れた。


「長いわ!!」


直後、麗が謎の突っ込みをかました。

右肩に乗っていたイモムシは、どうやら葵に取ってもらったようだ。

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