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ろーぷれ  作者: めろん
20/60

第20話 状態変化

「葵、後ろだ」


「うん。分かった」


 悠の指示に従って葵は素早く剣を抜き、そのまま後方に現れた魔物に向かっていった。


「悠! まさか本気で私たちにそのあったかくなる光魔法掛けない気!?」


「めんどい」


白い息を吐きながら訴えてきた麗に、悠は当然のごとく頷いてさらりと答えた。


「めんどがるなコラァ!」


「麗、手袋がある、です」


鈴が手袋を持ち出しながらそう言うと、


「ホント天使ね、鈴!!」


麗はころっと態度を変えて彼女に飛び付いた。


「ふうっ」


魔物を倒した葵が、剣を担いで額に掻いた小汗を拭いながら一息つくと、


「……葵」


悠が静かに彼の名前を呼んだ。


「?」


「右と左と後ろと前だ」


振り向いた葵に、悠はさらりとそう言った。


「……わあ、いっぱい来たね?」


四方から現れた魔物達を見て、くすりと笑う葵。


「笑ってる場合じゃないでしょう!?」


「鈴も手伝う、です」


「がんば」


「ありがとう、三人とも」


葵は迫り来る魔物達に剣を向けながら、ナイフを構えた麗と、杖を握り直した鈴と、きゅうりをかじっている悠にお礼を言った。


「って、なんで悠もカウントしてんのよ?!」


明らかに戦う気がない悠にもお礼を言った葵に突っ込みを入れる麗。


「え? だって応援してくれたから」


「あーもーいいヤツだわねあんたは!!」


魔物を倒しながらそんな会話をする葵と麗。


「悠も戦う、です」


魔物に突き刺した杖を引き抜いた鈴がそう言った。


「めんどい」


「めんどがるなコラァ!」


まったくやる気を示さない悠に、麗は激しく突っ込んだ。

直後、真横でキィンと大きな音が鳴った。


「!」


「よそ見したら危ないよ、麗?」


見ると、麗に向けて振り下ろされた魔物の爪を、葵が剣を横にして防いでいた。


「ありがと、葵! たあっ!」


麗は葵にお礼を言った後、彼に攻撃を防がれた為に動きが止まっている魔物の眉間にナイフを突き刺した。


「これで終わり、です」


その後ろで鈴の首尾一貫が決まり、これで襲ってきた魔物はすべて消え失せた。


「悠、まだ魔物来る?」


「……大丈夫だ」


 剣を鞘に納めながら言った葵の問いに、悠が頷いたのを見て、


「そっか。じゃあ、ちょっと休憩しよう?」


と、葵が言った。


「そう、ですね」


「ちょっと待った!」


鈴がそれに同意すると、麗が声を張り上げてそう言った。


「「?」」


「……この辺、トラップの予感がするわ」


小首を傾げた二人に、辺りを見回しながら言う麗。


「? 洞窟の中なのに罠がある、ですか?」


「随分手の込んだことをする雪女だな」


「氷の女王、です」


「同じようなもんだろ」


さらさらと流れるような会話をする鈴と悠の隣で、


「“予感”?」


麗の言い方に葵が小首を傾げた。


「ええ……寒くていまいち勘が働かなくっ―…」


そう言いながら周囲を確認するために一歩踏み出した麗の足元から、カチリという良からぬ音が鳴った。


「て」


素早く自分の足元に目を向ける麗。


「……何か踏んだね」


「ああ、踏んだな」


「はい、踏んだ、です」


三人もそれを確認した。


「踏んじゃったあああああ!!」


顔を真っ青にして頭を抱えながら叫ぶ麗。


「……?」


その時、何かが割れたような音が聞こえた葵は、自分達が進んできた道を振り向いた。


「あぁああ……一体なんの罠なのかしら? 本当ゴメン、みんな!」


「……洞窟の中の罠と言ったら、岩とかが転がって来るものが、定番、です」


「よくあるあの妙に丸くてでかい岩のことか?」


「ああ、あれね。あれって何故かプレイヤーを追って来るのよね〜。不思議〜」


鈴と悠の発言を聞き、何かを諦めたように笑う麗。

すると、


「……みんな、走って」


後ろを向いていた葵が口を開いた。


「え? ま、まさか……」


「岩、ですか?」


「ううん」


葵は顔を白くした麗と鈴に首を横に振り、


「氷柱が来るよ!」


と叫んだ。


「「?!」」


「いやああああああ!?」


 葵が気が付いた、だんだん近付いてくる何かが割れる音、それは、天井の巨大な氷柱が落下して砕け散る音だった。

葵のおかげでそれに気が付いた三人は、彼に従って駆け出した。


「す、凄い罠踏んじゃったみたいだね、麗?」


「麗、ドジ、です」


「まったくだ。罠に掛るなら周りを巻き込まずに一人で掛れ。笑ってやるから」


「今更だけど、あんたって本当に性格最悪ね?!」


迫り来る氷柱から逃げながら会話する四人。


「ええと、鈴、盾は?」


「分かりました、です」


葵の提案に鈴はこくりと頷き、


「隔壁の雫!」


と唱えながら、地面に杖を突き立てた。

彼女の声に応えるように、光の盾が四人を包み込む。


「「・・・」」


が、氷柱が当たると同時にピシッと盾の天井に亀裂が走った。


「あ、駄目、ですね」


詰まり、鈴の負け。


「もうちょっと頑張ってよおお?!」


「悠、お願い!」


砕け散った盾の上から降り注いでくる氷柱を見て、麗と葵がそう叫んだ。


「真紅に燃える灼熱の剣」


それに答える代わりに、悠は左手で葵の頭を下げさせて、右手で釵をかざして呪文を唱えた。

直後、釵は真紅に燃え上がり、その炎は剣の形を成した。


「……爆ぜろ」


悠が静かにそう言うと、炎の剣は勢いよく弾け、辺り一面を焼き尽すように広がった。


「きゃああああああ!?」


「あ、あ、危ない、ですっ!」


灼熱の炎は氷柱を溶かし、地面や岩壁に張っていた氷も溶かし、彼の側にいた麗と鈴の頭をかすめた。


「……炎魔法は苦手だ。加減が効かん」


葵の頭から手を離し、釵をしまいながらぽつりと呟く悠。


「……? なんか揺れてない?」


 氷柱の罠を回避することが出来、ひとまず安堵していた麗が小首を傾げてそう言った。


「はい、地震、でしょうか?」


それに同意する鈴。

確かにこの洞窟は今、ゴゴゴという不気味な音を立てて揺れていた。


「……みんな、走って」


すると、葵が再びそう言った。


「こ、今度は何……ですか?」


それを聞いた鈴が恐る恐る尋ねると、


「水が来るよ!」


と、葵が叫んだ。

同時に、彼らが歩いてきた道から大量の水が押し寄せてきた。


「あれ、悠が溶かした氷、ですか?」


「わあ、悠の本気は凄いんだね〜?」


「本気出しすぎよ馬鹿ああ!!」


「炎は好かん」


「知らないわよおお?!」


そんなことを言いながら、四人は押し寄せてくる水から全速力で逃げ出すのであった。

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