表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ろーぷれ  作者: めろん
17/60

第17話 雪崩の後

 押し寄せる雪の波の轟音の中に、凛とした声が響いた。


「隔壁の雫!」


鈴がそう唱えると、杖先が光を放った。

その直後、四人は光に包まれた。


「! 光の盾!?」


「凄い凄い凄いわ、鈴! 私、惚れちゃいそ〜!」


温かな光を放つ、まるで水滴のような球形の盾に包まれ、驚きの声を溢す葵と歓声をあげる麗。


「……雪崩の攻撃力を100とすると、鈴の盾の防御力は0.5、です」


すると、鈴がぽつりと呟いた。


「え」


彼女の呟きを聞いて固まる麗。


「……ええと、詰まり?」


葵が恐る恐る尋ねると、


「鈴の負け、です」


鈴はさらりとそう答えた。


「ええええええええ!?」


「いやああああああ!!」


「レベルアップが必要、ですね」


と同時に、光の盾は雪崩に負けて砕け散った。











「うっ……たた……」


 後頭部を押さえ、葵はゆっくりと起き上がった。


「……? あ、あれ!? 私たち、生きてる?!」


「はい、生きてる、です」


その隣で起き上がった麗が言った言葉に、そのまた隣で起き上がった鈴がこくりと頷いた。


「わあ、ラッキーだね」


「はい、それに」


鈴は葵の言葉にも頷くと、


「街が見える、です」


すっ、と前方を指さしてそう言った。

その先には、白い雪の中にぽつりと存在する小さな街が見えた。


「! すっごい!! これは日頃の行いが良いから神様からのご褒美ね!!」


「……では、葵」


はたして麗の日頃の行いは良いものなのか、ということは敢えて口にせず、鈴は葵の隣に倒れている悠を指さして、


「それ、運んで下さい、です」


と言った。


「それって……うん。分かった」


鈴が悠のことを“それ”扱いしたことを若干気にしながら、葵は背負っていた剣を外し、その代わりに悠を背負った。


「あ。どうしよう? 戦えなくなっちゃった」


その為、両手が塞がってしまった葵。


「……鈴は今、悠の代わりにリュックを持っている、です」


その隣で、葵が外した剣を預かり、更に悠の代わりにリュックを背負っている鈴が言った。


「な、何よ、あんたたち? もしかして、このか弱い麗ちゃんを魔物と戦わせる気?」


「うん。ごめんね?」


「はい、です」


麗の問いに、葵と鈴はこくりと頷いた。


「はあ……分かったわ。ただし、私は基本的に戦闘型じゃないから、どうなっても知らないわ、よっ!!」


 麗は溜め息をつきながらそう言い終わるや否や、彼女のポシェットからナイフを素早く取り出し、それを後方に現れた魔物に向けて投げつけた。


『ぐっ―…』


「「!」」


ナイフは、先程現れたばかりの魔物の胸に突き刺さった。

その魔物の存在にすら気付いていなかった葵と鈴は、驚いて目を見開いた。


「そことそこっ!!」


麗は前方に姿を現した二体の魔物を再びナイフを投げて倒すと、


「ウラァ!! 出てこい魔物ども!! って言うか、この麗様がいるからには何処に隠れたって無駄よーっほっほっ!!」


今度はポシェットから、拳銃のように矢を放つことが出来る、ボウガンという武器を取り出し、ズガズガと連続して矢を放った。


『ぐう!』


『ぎゃあ!』


『わあ!』


ただ暴走して無方向に乱射したかのように見えたその矢は、雪に隠れていた魔物を次々と射止めていった。


「……わあ、麗って戦闘型じゃないのにあんなに強いんだね?」


「いえ、十分戦闘型だと思う、です」


喜々として魔物を倒しながら歩いていく麗の後ろを歩きながら、そんな会話をする葵と鈴。


「……悠よりは弱いようですが、麗にも魔物を察知出来る能力がある、ですね」


麗を見ながらそう呟く鈴。


「っと……わ!?」


その隣をふらふらと歩く、悠を背負った葵。


「……」


彼に背負われている悠は、ぐったりとしていて動かない。


「悠……大丈夫かなぁ?」


そんな悠を心配する葵と、


「……葵の方が大丈夫、ですか?」


そう言いながらふらふらと歩く彼を心配する鈴と、


「逃げてんじゃねぇぞコラァ!!」


魔物が思わず逃げ出すほど狂気に満ちた麗は、その雪原の先にある街を目指すのであった。


「街に着いたら、まず悠を休ませる場所を探さなきゃね」


「それなら、宿屋が良いと思う、です」


「麗ちゃん最高ーっ!!」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ