NEW部、廃部
「あのね、努力は必ず報われるんだよ。まだ諦めちゃダメだよ!」
フルート片手に佳代は暉を説得している。
「だから、暉はまだ続けて」
「うるさいっ!」
佳代の言葉を遮り、暉が叫ぶように言った。
いつも大人しい暉の言葉に佳代は驚いて一重の目を大きく見開いた。
「ごめん…。でも、退部することに変わりはないから」
暉は猫背気味の背中を小さく丸め、とぼとぼと歩き出した。
その後ろ姿を見るだけで誰も止めようとはしなかった。
「もう、廃部…だね…」
佳代はぽつりと呟いた。
「文化部規定の人数、いなくなっちゃった…。」
佳代の言葉を静かに聞いた。
―吹奏楽部は廃部した―
廃部を誰も止めずに静かに吹奏楽部は廃部した。コンクール出場前だった。
「美宮ー」
「憂、どうしたの?」
放課後の静かな教室に憂の明るい声がよく響いた。
「吹奏楽部、廃部したんだって?」
「そう…だけど…」
「俺と一緒に部活つくろうぜ!」
慰めると思ったが、予想が外れた。
「廃部してショックを受けている人間に言うこと?」
「佳代って若干自己中だから美宮は佳代のこと嫌いだと思ってたけど…。へ〜ショックなんだ。意外〜」
「憂、嫌い」
憂は真っ青な顔をして謝った。
「美宮、ごめん。この通りだ。だから別れようなんて言わないでくれっ!」
「言わないよ。これからは失礼なこと言ったらダメだよ」
憂はにっこり笑って「はいっ!」と返事をした。
窓から乾いた風が吹き込んだ。