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その6.ハイ・グローバの昼と夜(4)

 大主様がナイトロードをハイ・グローバに《強制帰還》させた理由は、エイミーが言ってた通り、ルルドニア異界の召還者絡みだった。


「森の妖精の二形達も、力ある者は召還され、皆傷ついて戻って来た。ただ、死者が居ないのを考えると、あちらも召還獣の使い方を重々配慮しているということなのだろうが」


 エイミーや里の長老は森の妖精、つまりエルフなんだと。エルフはハイ・エルフより魔力は無いけど、一つの魔法にとびっきり強いヤツが、時々出るらしい。

 長老もその一人で、他の魔法はほとんど出来ないが、水の魔法だけはハイ・エルフも敵わないんだと。


 ――だから、長老になれたのかー。


 それはともかく。


「一度、強い魔力を持つ者がルルドニアへ出向き召還者との話し合いをしなければ、こちらの者達は、このままでは他の異界への召還もままならない。――ナイトロード」


 真っ金キンの大主様は、金色の目で俺らをぐぐっ、と睨んだ。

 くーっ!! いくら、このお姿が黄金竜の二形そのものじゃなくって、魔法で創り出したダミーだって言われても……やっぱ、ド迫力なのは変わんねえ。

 かっこわりーけど、ヤンキーの俺でも、ビビるっ!!


「急ぎで済まないが、お主、出向いてはくれぬか?」


 ちょっ?

 簡単におっしゃいますが大主様。召還魔法って、あっちから掛かってこなければ、こっちからは行かれないんじゃ?

 って、俺が勝手に騒いでる声を、やっぱ大主様は聞き取ったっ!! さすが、太古から生きてる黄金竜……


「その通りだ、アルシオン異界の人間。ルルドニア異界からは、召還魔法がこちらへ通じている状態が続いているのだ。里の者達が家に引きこもっているのも、その波動に捕まらないため」


「なるほど」と、ナイトロードが頷いた。


「ある程度の魔力を有している者を捕まえるための魔法の波動なので、エイミーのような比較的魔力の薄い者は引っ掛からない。逆に、竜のような強大な魔力を有する者は、召還者の器量が追い付いておらず、召還出来ない」


「なので、こちらから逆召還の術を掛け、そなたを送り込む」


 うおおっ!! 強行突破っ!?


「その前に、私の知識をオーブに移してしまいたいのですが」


 ナイトロードは大主様にお許しを頂いて、丘へ上がった。

 俺らから見えない反対側に、頂上まで上がれる階段があったんだ。

 でっかい水晶球にナイトロードが手を翳す。と、俺の頭の中でも、これまで見て来た色んなことが――それこそ、生まれてからこっちの色んな景色とか人とかバイクとか事故とか……、見たくもない、自分が死にかけの状態とか、全部がぐるぐる渦巻いて、どっかへ流れ出て行く。


 でも、忘れた訳じゃない。ドラゴン・オーブは、手を翳したヤツの記憶をコピペってしまっちまうみたいだ。

 ナイトロードは記憶のコピペを終わらせると、次に短く呪文を唱えた。


 途端。

 今度は、見たこともない文字やら風景やら乗り物やら宇宙やら星やらが、俺の頭の中にも一杯に広がった。


 見たことのない街、見たことない人、見たことない獣……


『なんじゃこれ?』情報の洪水に目眩がする。


『これから行く、ルルドニア異界の様子と魔法だ』


 ナイトロードが説明する。

 ちぇー、やっぱすぐ行くのか……

 思わずぶーたれた俺に、ナイトロードは「済まないな」と、また謝った。


(われ)からも謝ろう、アルシオン異界の人間よ。我らの事情に巻き込み、申し訳ない」


 金色の、オール○―ドの美人が頭を下げる。ワリとでっかい胸が、ぷるんっ、と揺れた……って、おーい俺っ!! こんなとこでセイル以外の女に血迷っちゃ、いかんっ!!!!

 俺はぶるぶるっ、と頭を振った、積りになって、気合いを入れ直した。


『てっ……、てか、アルシオン異界って、ナニ? それが、こっちから見たとこの、俺らの世界のコトか?』


「そうだ」大主様が頷く。


「アルシオン異界は、我らにとって第二の故郷と同じ。大気に魔力を含まず、二形の者が楽に居られる場所だ。ハイ・グローバに生まれた殆どの二形が、アルシオン異界の人間の姿を他方に持つ。……なぜだかは、定かではないが」


 ******


 大主様のいる洞穴には、魔法陣は描けない。

 ってんで、長老の家の中に逆召還の魔法陣を描くって大主様のお言葉で、俺達はまたそっちへ戻ることになった。


 帰り道。

 やっぱりエイミーの先導で大木の枝を歩いていると、ふと、ナイトロードが上を見上げた。


「ここは、《捨て子の里》という呼び名の他に、《ハイ・グローバの夜》とも呼ばれる。昼なお暗い大樹の森に抱かれ、隠れるように二形の者達が暮らしている、かららしいが……」


 へー、って俺が相槌を打つ前に、エイミーが猛然と振り向いた。


「その呼び名は、大主様への侮辱です。どうしてハイ・グローバの真の統治者たる御方が、この里の近くにお住まいなのか。考えもしようとしない外の者達の、バカな言い草ですっ」


「分かっている」ナイトロードは、静かにエイミーを見返した。


「深い森は魔力が安定している。それに引き換え、我ら竜族の棲む広い荒野は、魔力のばらつきが酷い。――大主様は、魔力の均衡を保つのが難しい体質の二形の者を、この森の中に住まわせ、守っていらっしゃるのだ」


『私達のような、愚かな強者から』


 後の言葉は、俺にしか聞かせなかった、んだけど。


――うーん、二形の連中とそーでない連中が、なんとなくタイマン張ってんのは分かったけどよ。


 それに大主様が、二形側についてるってのも。

 弱きを助け、強きを挫く。確かに、大主様のしてるこたあ、正義だぜ。

 けど、それにごちゃごちゃ文句タレる輩もいるって訳か。ショーグン様やご隠居の印籠に楯突くってカンジで?

 いろいろあんだな、異界ってもよ。


 なんて、俺が感心しきりの間に、エイミーもナイトロードも無視して歩き出しやんのっ。


 ――ちぇっ。ちっとは人の感想にも付き合え、相棒っ。


 ムクれる俺に笑い掛けたナイトロードの神経が、ぴん、と緊張した。

 なんだなんだ? と思って、ナイトロードの視線の方向を注意すると、枝の道の前方から、誰かが歩いて来た。

 銀色の、膝近くまであるすっげー長い髪に、足首までの白いドレスを着た、長身の、どえらい別嬪っ!!


 うっおおっ!!! こりゃマジでセイルと張り合う超絶美形っ!!

 目の形は、セイルとおんなじような、きれーなアーモンド型。

 セイルは黒だったけど、こっちの別嬪は薄水色と来た。

 

 比べっこしてわりいけど、エイミーも飛びっきり可愛いけど、やっぱセイルやこの美人の敵じゃねえ。


 超美人は、立ち止まったエイミーとナイトロードへ、滑るように近寄って来た。

 ナイトロードの《心》が酷く波立ってるのを感じるぜ……。お、どーしたん?

 もしかして、昔のジョカノ? って思ったら、美人はエイミーの脇をすり抜けて、ナイトロードにモロ接近っ。次の瞬間、思いっ切りの、ビンタっ!!!!


『――いってーっ!!』


 避けもしなかった相棒の代わりに、俺が脳内でしこたま痛がった。

 あー、やっぱり、昔なんかしでかしただろー、ナイトロードっ!!

なんかまた、ナゾの美女登場ですが・・・


今度はナイトロードの、ムニャムニャ?

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