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その5.知略謀略火事の元(2)

 最初っからあんなモノ(バレンタイン伯爵は、あんなモノかよっ)は相手にしていない、と、セイルは言い切った。


 昼食を終えて、城に戻る道すがら、俺は他の候補者のことも聞いてみた。

が。


「どれもこれも、バレンタインとどっこいどっこいだ」と、セイルは仏頂面だった。


 自室に戻った俺は、再びオリバーおっさんの講義を聞かされた。お供につこうとして失敗したマメ犬2匹もナゼか一緒で、しかも、いつも俺の顔見ちゃキャンキャン吠えてたのが、キャンのキの字も言わなかった。

 マジメにベンキョーしているイヌッコロに、俺もまじめにならざる得なかった。


 その夜は特別な客もないので、派手な晩餐ではなく、俺は昨日より小さめの食堂で、セイルと向かい合わせで食事した。

 献立は、ナイトロードのリクエストの肉料理がメインで、コクットという俺らの世界でのガチョウに似た鳥の丸焼きと、温野菜のサラダ、豆のスープ、デザートだった。


 びっくり仰天な話で、こっちの世界には最初、野菜も食べられる鳥も居なかったんだそうな。


 伝説では、魔法を使える種族(今は王族と貴族なんだと)が異世界からここへやって来た時に、野菜やら食用の動物やらを一緒に連れて来たって話だ。  コクットはハイ・グローバから持ち込まれた鳥で、野菜の一部は、俺らの世界から種を持って来たものらしい。

 だから野菜の名前も、聞いたことのあるのがいくつもあった。


「サラダに入っている温野菜は、カベッジとカリフラウ、緑のものがグリーンアスパレラ、赤いのがキャロット」

 キャロット。もろニンジンだ。

 味もニンジン。俺の故郷のニンジンよりちっと固いけど。

 カベッジ、ってのは、刻まれた葉っぱだった。味はキャベツ。……キャベツだこいつ。


 昨夜の夜メシん時は、使ってる材料については全く気にならなかった。ってか、話聞きながらーの、俺腹減ってらーので、食い意地が先に立って考えなかった。

 けど、ここは異世界。万が一にも《食ったら毒》ってなものを警戒しなきゃだったんだ。

 って俺が思った時。


『私が微量の魔力で、いいか悪いかは判断出来る。一輝の身体に毒なものならば、私が食べる前に警告を発している』とナイトロードが教えてくれた。


 そっか。魔力のあるナイトロードには、俺の身体に毒か毒でないか、簡単に判るんだ。


 俺はそこで、はっと気が付いた。


『そー言や、俺こっちに来てから全く言葉に不自由してねーけど、それもナイトロードの魔力のせいなのか?』


 俺の疑問に、ナイトロードは苦笑って感じの声で『そうだ』と肯定した。


『ハイ・グローバの者は、ほとんどが魔力を有しており、何処へ召還されようが、その世界の言語をすぐに魔力によって訳す癖がついている』


「それは、便利だな」

 セイルが、俺の世界のものと寸分違わないパンを口に運びながら感心する。

 あ、また聞こえちゃってたのか。でも、まあいいか。


「俺も便利だと思うぜ」


 フーフになるんだし、と、俺は勝手に思って、で、思った言葉に恥ずかしくなって、勝手に真っ赤になった。

 ほっぺたやデコが異様に熱いぜ。多分ゆでダコな顔を見られたくなくて、俺はセイルとは逆方向を向いた。

 俺の口元に、不意にセイルの指が触れて来た。


「なっ……!?」


「ジャムが付いてる」


 ちょっと冷たい指先で口の脇をなすられて、俺はびっくりして振り向いた。

 セイルはいつもの無表情のまま、ワイルドベリージャムがくっ付いた指をぺろっと舐めた。


「どっ、どどど……!!」

 嬉しいやらこっ恥ずかしいやら。慌てふためきマル判りにドモッちまった俺に、セイルは微笑んだ。


「夫婦になれば、ずっとこんなふうに一輝の世話が出来るのだな」


 俺は、椅子から転がり落ちた。


 ******


 んがっ!!


 アルフレッド卿が言った通り、バレンタイン白ウナギ伯爵他のムコライバル達は、俺とセイルが急接近するのを黙って見ているようなヤカラではなかった。


 初デートから4日目。ヤツラは王城に乗り込んで来た。

 バレンタインを筆頭に、ムコライバルが5人。どれもこれもセイルが言った通りのヒョウロク玉が、派手な服来て廊下を行進して来た。


 相変わらずこっちの世界の事情に疎い俺は、オリバーおっさんにべんきょーさせられていたところへ、5人はずいっ、と入って来たんだ。


「竜王陛下ばかりが女王陛下のお側にずっとおられるのは、不公平の極み。首都滞在の我ら5人も、これからは女王陛下のお側にて、自信の存在をアピールいたします」


 と、特撮戦隊ヒョウロク玉ン(とくさつせんたいひょうろくだまん)は胸を張る。

 ほんと、ヘコまねーんだ、白ウナギ。


「女王陛下には、既に許可を得ております」と、白ウナギ2。


 ヘンダーソン侯爵とかなんとかって名前だけど、もー、俺にはどいつもこいつもヒョロヒョロのウナギにしか見えねーしっ。

 3も4も5も、一斉に大きくコックリしたけど、それって多分、セイルはゴリ押しされて渋々、って感じで、こいつらの王城滞在を許可したんだろうなー。

 メンチきって来やがったんだからケンカ買ってやろうと思ったら、ナイトロードが、


『吹けば飛ぶような奴らだ。今は放っておけ』って言うんで、睨み返すだけでやめた。


 けど、その晩の夕食時に、事件は起こった。


 俺がどうやってナイトロードとくっついて、どうしてこっちへ飛ばされたかを検証するために、3日間魔導師館にカン詰めになっていた魔導師長と部下連中が、久々にセイルの声掛けで晩メシを一緒に食うことになった。

 もちろん、白ウナギ軍団も一緒だった。  

 なんやらっつう神様に短いお祈りを(お祈りは、食事の時いつもやってる)して、みんなが食前酒を飲んだ時。


 ヒョウロク玉ンの1人、ウォール侯爵が泡を吹いて倒れた。

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