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その3.けけけっ、結婚?(3)

 ……きょーれつパンチな一言だった。

セイルの決心を聞いて、俺もボロボロにうろたえたけど、さすがの大人なナイトロードも、ちょっと慌てたみたいだった。


「とにかく、今日のところはすぐに返答は出来ない」


 とかなんとか言って、女王様の私室を後にした。

 ……そーだよなぁ。あんなきれーな女の子(くどいようだけど、今だけ)に、


「あなたの子供が欲しい」なんてコクられたら、男だったら誰でもグッとくる、ってか、ググッとたちあがって……。


 いやいや。

 とにかく、ちょっと頭(と他の部分も)を冷やして、冷静に考えよう。   

 ******


 翌日、俺らは朝もはよから、の5時に起床させられた。

 センドランドの魔導師達の習慣で、毎朝5時半には着るもんをちゃんとして、《召還師の神》とかいうのにお参りする、らしい。

 どんなお参りなのか、どこへ行ってするのかは、俺らは行かなかったので知らない。

 昨日俺らを食堂へ案内してくれた侍従が、「竜王陛下はお客さまですので」って、お参りの強制はしないってことを、起きてすぐに通知してくれた。


「……なら、起こすんじゃねーよっ」


 今日は持ち主の俺が身体の支配権を握っている。

 文句を言って、またごろん、とベッドに転がった俺に、ナイトロードが軽く笑った。

 頭の中にもう一人居るっつー、かなり妙な状況に、俺は何となく慣れて来た。

 ってか、物知りで大人なナイトロードに頭上がんないって状況だ。こっちに来たらいきなり戦闘で、ヘタしたら死んでたかもの時に、入れ替わって助けてくれたし。

 ナイトロードの話では、あン時は、召還の衝撃でかハイ・グローバでの戦いのせいでの死にかけだったからか、ナイトロードの意識はギリギリまですっ飛んでたらしい。


『謝罪するのは、私のほうだ。一輝に途轍も無い試煉を与えてしまった』と、逆に恐縮されちまったけど。


 でも、どっちにしても、ごっちゃになっちまって半分を受け持つ俺としては、あの状況で入れ替わって魔法を使ってくれたことに、感謝だ。

 でなけりゃ今頃、悔しいがあのド派手人でナシ女レジーナ・シェイクロッドに、俺は木っ端微塵か、ぺったんこに潰されていただろう。


 ――うーっ!! 思い出しただけでも、チョームカツクッ!!! あの変人ド派手バカ魔女っ!!


 俺が並べ立てた悪口がツボに入ったらしく、ナイトロードが頭の中で大爆笑してる。

 へー。ナイトロードってば、俺の下手な悪態みたいなコトで笑うんだ。  なんて感想を持ったら、『一輝は、言葉選びが上手いな』って、笑いながら返してきた。


 いやいや。俺は表現上手くないって。

 いや、面白い、とナイトロード。面白くねーよ、と俺。

 そんな脳内やり取りをくだくだやりながらベッドでごろごろしているうちに、魔導師達の《お参り》の時間が終わった、らしい。

 侍従(ヘイスって名前だった)が、朝食の準備が出来ました、と、連絡してくれた。


 いけね、着替えんの忘れてた。


 俺は急いで隣のバスルーム(洗面所とバスルームがひと繋ぎになっるんだ、この客室。ちなみに便所は、ベッドルームを挟んでバスルームの反対側にある)へ駆け込んだ。

 綺麗な模様の入った台付き洗面器の真上にくっついている黄色い玉を触ると、途端に洗面器の中一杯に水が溜まる。

 俺は、魔法で現れた水でザバザバ顔を洗った。  

 こういう時、魔法って便利だよなー。


 昨晩、ナイトロードに身体を返してもらってから風呂入ろうと思ってバスルームに行ったら、バスタブにお湯が無かった。どーすんだよって怒鳴ったら、ヘイスが、


「湯船の右側手前に付いている、青い玉を触って下さい」って、教えてくれたんだ。


 言われた通りに触ると、突然お湯がバスタブにワッと溜まった。

 さすがにびっくりして固まっちまった俺に、ナイトロードが、


『魔力の無い者の微弱な気力にも反応する仕組みだな、この玉は』って解説してくれた。


 そんなことが出来るんだ、へー、とか、ほー、とか感心しながら、俺は風呂に入った。

 洗面所のは、だから風呂のと一緒だって、一発で分かった。

 顔を洗って着替えを済ませて……、おっと、髪型。

 ヤンキーはリーゼントでなきゃよ。

 決めようと思ってブラシを探す。けど、何処にも見当たらない。

 ったくよぉ、クシぐらい用意しとけよ。客間なんだからよ。


『右手を頭に当てろ』ナイトロードが唐突に言った。


 なんだろ? と思いつつ、俺は言われた通りにする。と、俺の掌がきらっ、と光って、あっという間に髪がリーゼントに固まった。


「うおおっ!! すげーっ!!」


 思わず感動の声を上げた俺を、ヘイスが微妙な顔で見ている。


「あ、俺、竜の時でないと、魔法の使い方わかんねーんだ」


 本当の事を言った俺に対して、ヘイスはちょっと驚いた顔をした。が、すぐに「そうですか」と笑顔になった。


「竜王陛下は、真摯でいらっしゃるのですね」


 へ? シンシ?  瞬間、何を言われたのか分かんなくってキョトンな俺に、ナイトロードが、


『誰にでも真面目に正直に対応する人物だと、言っているのだ』と補足してくれた。


 あー……。


「俺さ、ウソが嫌いだしよ、苦手なんだわ」


 ヘイスに向かって、というより、ナイトロードに返事する積もりで言って、俺は頭を掻いた。

 俺より5、6コ(後で聞いたら、何と2コだった!!)上だろうヘイスは、どうしてだか嬉しそうに頷いた。


「恐らく、ですが、女王陛下も、竜王陛下のそういったご気性を、お気に召されたのでしょうね」


 なんて言ってくれるから、朝食の時、真ん前に魔導師長が居るのに、俺はすぐ隣に座っているセイルが気になって、ずっと顔が熱かったっ!!

 ちゃかすなって、ヘイスっ!!

セイル女王様、あくまで(今だけ)女の子、です。

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