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嫌がらせの手口は至って子供じみたものであったが、毎日違ったパターンでたて続けにやられるとさすがに華絵も滅入ってしまう。
食事は華絵が主に担当することになっていたが、出来上がった料理に対する非難は毎回歯に衣を着せないものである。
あるときなどは、口をつけただけで皆で外食に行かれてしまったこともあった。
「何これ。キャットフードか何か入れなかった?」と次女の薫。
「入れてません!」華絵も常に黙っているわけではない。
「うそうそ。ゼッタイ入れてる。じゃなければレシピが猫のエサだったに違いないわ」
すると姑がたしなめる。
「薫。我慢して食べなさい。華絵さんは料理がへったくそなだけなんですから。それにビーフストロガノフなんて食べたこともないんだから、ましてや作れる訳なんてないでしょう」
――我慢して食べなさいって何よ! それって、全然フォローしてないじゃない。
「私は嫌よ。こんなまずいもの食べられやしない。角のフレンチレストランに行って食べてくるわよ。さあ、みんな一緒に行こうよ」
妹たちだけで出掛けるかと思いきや、姑までもが一緒になって出掛けてしまうので、あとに残された夫の満夫はそわそわしだし、遂には華絵を一人家に残して出掛けてしまう。
すっかりお酒が入って上機嫌で帰ってきた夫に華絵は口調を強めて言う。
「あなた。酷いじゃない。私、こう見えてもじっと堪えているのよ」
「ああ。ヒック。そりゃあ当然だろ。ヒック。おまえが一番年上なんだから」




