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抱き合いながら、気が付くと二人はサバンナ草原の中にいた。二人ではない。二頭である。
仲睦まじくじゃれ合う二頭のオスメスライオン。
華絵は自分がメスライオンであることに気が付いた。脇にいるのは大きなたてがみの立派なオスライオン……。
――あなたは誰? サバンニャなの?
「がおう!」
それは『みゃあ』ではないが、サバンニャの返事であることにもはや疑いは無かった。
――あなたは猫じゃなかったの? ライオンだったの?
――ライオンの魂を持った猫? どうして?
「がおう!」
――サバンニャ。あなたを動物病院に連れて行ったとき、獣医先生は、太りすぎです! と言ってたよ。メタボ猫ですって。今のあなたの、オスライオンの姿もかなりメタボだよ。
「がおう!」
「がおううう!(でも、メタボのあなたが好き!)」
「がおう!」
華絵は、自分の『こころ』を取り戻すために家を出たことを思い出した。
――幸せ……。私には、はっきりと『こころ』がある。ロボットなんかじゃない。生きている。そして、あなた。サバンニャも生きている。生きた『こころ』を持っている……。
「がおう」、「がおう」。幸せの極致。そして絶頂。
二頭はどちらからともなく、愛の交歓を始めた。
メタボライオン、サバンニャは、そのパワーを全開した。
百獣の王。ライオンの愛の交歓は半端なものではない。飲まず食わずで数時間から丸一日、『愛の交歓』を繰り返す。その間、少なくて十数回から普通は三~四十回程度。記録上最も多いもので連続百回を超えるものも確認されている。
しかし、このケースでは、もしかして観測記録を上回ってしまったかもしれない。