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ライブ会場追放から始まる、柊死音の自殺計画 〜推しが押しかけて来て死ねません!  作者: 八ッ坂千鶴


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第9話 激甘展開許さん!②

「死音。お前の部屋汚いな……」


「ごめん……。今朝は片付いていたんだけどね……。誰が汚したんだろ?」


「ん〜。思い当たるとしたら、功辺りだな……。あいつよく暴れるからさ……」


 あんな大人しそうなのに暴れる? たしかに功は柊兄弟の中で最年少だけど……。どういう状況でそうなるのか全く分からない。


 とりあえず寿に協力してもらって、部屋に散乱した衣服を片付けた。だけど、ここでもう一つの違和感を感じた。


 タンスが増えている。もしかしてこれって……。


「功のやつ。俺のタンスを持ってきていやがる……。まあありがたいんだけどさ……」


「やっぱり寿のタンスだったんだ……。それにしても大きいね……。引き出しは……。7段もある……。これ使いきれてるの?」


「んー。今じゃ私服よりも衣装タンスになってるな……。たしかここに……あった。お前が一般配信する予定だったライブで着てたやつ」


 それは、グリーンを基調とした蝶柄のジャケットだった。下は黒いズボン。金と銀のラメが入っている。


 推しのライブ衣装をこんな近くで見れるなんて、私ってめちゃくちゃラッキー? ただ汚すと困るのですぐに片付けるよう促した。


「それにしても、お前の部屋も広いんだな……」


「い、ま、さら……だと思う……」


「ん? なにが今更だって? まあ、その通りっちゃその通りだけどさ……。この服はこっちのクローゼットで合ってるか?」


「あ、はい……!」


 寿が私のタンスを触っている。せめて一番上の引き出しだけは開かないで……。一番上のは男性には見られたくないものが置いてある。


 これを見られたら、もうどうしようもない。特に、新婚生活を開始したばかりの私たちには刺激が強い。かもしれない。


 とにかく一番上の引き出しだけは開けて欲しくなかった。下から足音が聞こえる。私の部屋は2階。下にいるとしたら、幸王子と功王子だけだと思うが……。


『頼もーーーーー!!!!』


「ッ!?」


 私の部屋に飛び出して来たのは、ゴスロリを着た小柄な少女だった。髪は長く、三つ編みツインテ。そして、歯が鋭い。


 寿は私の服をしまったあと、その少女に近寄った。この場で浮気なんて許さ……!


「やあ、よくここにいるとわかったな」


「そんなのは当然のことであーる! 妾の嗅覚は非常に効くのである」


「つまり、俺の匂いを嗅ぎつけて来たってわけか。相変わらず人探しが上手くて逃げるのも大変だ。母ちゃんには内緒にしてるか?」


「うむ。それもしっかり考えて、GPSを切ったのである。しかし、あのお方はどこまでも追っかけてくるだろう。何せ、死音殿は自宅周辺で動画配信することが多々あるのでな」


 ギクッ! 加えて寿の母親関係!? ちょっと以上に困るんだけど……。っていうよりもこの人誰?


「ん? ああ、こいつは俺の先輩アイドル。たしか名前は……」


彩芽(あやめ)であーる。本日は寿殿に用事があってでな……。頼まれごとをしたのであーる! ほれ、其方のお望みのものを持ってきた!!」


 彩芽という少女が持ってきたのは、なんの変哲もない林檎だった。それを寿が食べ始める。


 徐々に蒼白になってく彼が気になったが、それでも寿は全部食べた。この林檎は一体……。


「あ、これか?」


「うんうん……」


「毒林檎」


「へ?」


 寿が毒林檎を食べたってこと。死んじゃう、死んじゃうよ……。毒林檎なんて食べたら最後、永遠の眠りについてしまう!


「ならねぇよ……。彩芽。もう一ついいか?」


「もちのろんである!」


 寿は2つ目の毒林檎を食べ終えると、彩芽さんがナイフとコップを取り出した。寿が袖を捲ると彩芽がナイフで左腕の皮膚を切り裂く。


「ジュルリ……」


「彩芽。死音の前ではやめろ……」


「そんなの……できないのであーる……。オイシソ……」


 滴っていく寿の血液。それを、彩芽さんが眺める絵面は、どうも納得できない。でも、寿は彩芽さんのことを先輩(・・)と言っていた。


「そろそろ飲めそうなのであーる。替えのコップに置き換えて……。いただくのであーる!」


「ちょちょちょ……。なんで寿の血液を……!」


「むむ。妾の食事を邪魔するだと……?」


「邪魔も何も。なんで寿の血液を飲もうとするの! もしかして、彩芽さんも変食者!?」


「偏食者ではないのである」


「変食者でしょ絶対に! 普通人の血なんて飲まないから!」


「偏食はしてないのである! ちゃんと肉も魚も野菜も食べてるのである!」


 私と彩芽さんの熱が上がっていく。その様子を、寿が優しい目で見詰めていた。その表情から察するに『女の喧嘩恐るべし』だろう。


 私だって、喧嘩をしたことはない。喧嘩は不幸の始まりと言うから当然だし、私が喧嘩に割り込めば、絶不幸で被害者に仕立てあげられる。


 だから人の多いところはライブ会場だけで十分だった。そんな会場にも行けない私を慰めて……!


「まあまあまあ。死音も彩芽も落ち着けよ……。あと彩芽。もうすぐ2杯目の準備ができるぞ」


「2杯目? 本当なのであーる! 急いで飲むのであーる! 死音殿邪魔するでないぞ!」


「ハイハイ……」


 そうして、彩芽さんは寿の血液を飲み始めた。口の周りを赤く染め、まるで道化師のような赤い化粧になる。


 1杯目のコップを寿の腕下に置くと、今度は2杯目を飲み始めた。その顔はとても優雅で絵になっている。


「残りの分はペットボトルに詰めるのである。死音殿漏斗を持ってくるのであーる!」


「じょ、漏斗?」


「急ぐのであーる!」


「わ、わかりました!」


 自室から飛び出し、キッチンへと向かう。そういえばよく両親が紫蘇で飲み物を作ってくれたことを思い出した。


 場所は分からないけど、漏斗くらいならあるはずだ。1階で漫画雑誌を読む功王子。推理ゲームに入り浸る幸王子。


 この場合。真っ先に聞いた方がいいのは、功王子だろう。彼に話しかけて、漏斗をピンポイントで取り出すよう伝えた。


 するとなんということか。新品のアイテムが飛び出してくる。恐る恐る近くに放り出していた私の鞄を確認。


 財布をチェックすると、234円分が抜かれていた。漏斗ってそんなに安かったっけ? 


 それと同時に幸王子の姿が消えていた。どこに行ったのかは知らないけど、2階がなんだか騒がしい。


 漏斗片手に階段を上り自室に戻ると、幸王子が包帯で寿の腕をグルグル巻きにしていた。


「漏斗。必要なかったな……」


「当然だ。オレならそんなもの使わずとも、ものの移動を制限することは可能。時間操作。空間操作には自信がある」


「助かったのであーる。では、妾はおさらばするので――。死音殿?」


 ちょっと、私の出番無し? そんなの嫌。推しの役に立てると思ったのに、役立てないのは嫌。


 でも、寿の血液を見ずに済んだからラッキー? それなら嬉しいけど……。って、寿がナイフを持ち始めたんだけど!


「死音。俺の血の採血するか?」


「いえいえいいです。結構です! まだ寿の顔面に飛び込んだ方がマシです!」


「そうか……。じゃあ。コンソメパンチを半年分買ってやるから、俺の血を採血しろ」


 ここ、コンソメパンチで釣らないで……。でも、コンソメパンチには寿に対する恨みもあるし……。


「わ、わかりました! 今すぐ準備します! 彩芽さんも、もう少し付き合ってください。寿。毒林檎もう一度食べますか?」


「ん。頂こう」


「彩芽さん。例のお願いします!」


「了解なのであーる。幸殿。妾の自宅とここを近づけるのであーる」


「承知した。距離圧縮。彩芽宅との距離を短縮」


「助かるぞ。幸殿」


 彩芽さんが窓から飛び出ると、5分ほどで戻ってきた。両手には大量の林檎が抱えられていた。


 寿は林檎を持つと勢いよくかぶりつく。その速度は1回目よりも早かった。彼も早く終わらせたいのだろう。


 一度に5個を平らげると、右腕を差し出す。功王子も駆けつけていて、私の部屋はぎゅうぎゅう詰め状態になった。


「功。1リットルサイズの空のペットボトルを用意してくれ」


「りょーかい!」


 功がペットボトルを用意すると、そこに私が持つ漏斗を差し込んだ。幸と彩芽さんが、ペットボトルの下を押さえると、寿が右腕を乗せる。


 これって、私が切る役? 私が寿の身体を傷つけるって意味だよね? そんなことはさておき、体調の悪そうな寿の右腕をナイフで切り裂く。


 滴り落ちていく血。それが、どんどんペットボトルに入っていく。出血量が多い。だけど、寿の顔はとても爽やかだった。

読んでくださりありがとうございます。


ぜひブクマしていってください。


いいねは賽銭箱に大事にしまっておきます。

リアクションも別の賽銭箱に入れておきます。


次回。『ホラゲ実況配信!?』

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