第6話 柊兄弟プレゼンツ!寿の○○を食す!?
第6話
帰宅した時にはかなり疲れ果てていた。部屋は綺麗に片付いていて、冷蔵庫を確認すると買ったものが全て入っている。
「死音。料理配信するぞ」
「りょ、料理配信!? 今このタイミングで!?」
「別にいいだろ。幸のおかげでなんか、いいもん作れそうなんだ」
「そ、そう……」
寿が右手を真横に伸ばすと、エプロンが召喚された。功王子との連携がバッチリだ。
キュッと締めると、冷蔵庫からブロックの豚肉を取り出す。そのまま器用に包丁で薄切りにしていった。
しかも、時々生の豚肉を普通につまみ食い。ちゃんと火を通してよー!! って全部食べちゃった!?
「この肉いいな……。功。今すぐスーパー行ってこれと同じ豚肉をブロックで」
「4つね! 行ってくる!」
功が消えると、残りのブロック肉をまな板の上に乗せてスタンバイ。私は配信準備を進めた。
「ねぇ。寿。胸の違和感とかないの? その……。心臓を圧縮された圧迫感とか……」
「気にしてないな……。元々俺朝弱くてさ。兄弟の中で一番朝に強い幸に起こしてもらってたんだ」
「それとこれは関係ないでしょ?」
「ほんとのこと言うと、これまたちゃんとした理由があるんだなぁ。毎回胸を苦しめられてたせいか、体内時計が正常に戻ってさ。早起きできるようになった」
「いや、心臓圧縮で起こされてたんですかーい!!!!」
「そうだが……。今じゃ喘ぐ演技が基本だけどな!」
いや、そういう問題じゃないから。寿の心臓の筋肉どんだけモリモリしてるの? 人間やめてるんだけど!
そんな人が私と結婚してるのってマジありえないから! すると、功が帰ってきた。ちゃんと靴を脱いでるかチェック。
――問題無し。
「寿お兄ちゃん。これで合ってる?」
「お! サンキュ! あと、死音もっと俺のこと知りたいんだってよ」
「いや、心臓モリモリが気になってるって意味じゃないから! むしろ不自然にしか感じないから!」
「なら証明した方がいいんじゃない? 寿お兄ちゃんの心臓」
「だから、心臓の話題にしないで! って! 功王子も幸王子もなんていう格好してるの!」
私がツッコむ前に功王子と幸王子は腰にナイフセットを装備していた。なんか怖い。嫌な予感しかしない。
幸王子が腰からサバイバルナイフを取り出し、突然研ぎ始めると自分の左腕を切り裂いた。
もしやこれって、弟も生の豚肉を……。
「寿お兄ちゃん。準備して!」
え? 寿指名? どういうこと? すると、柊兄弟は外に出ていった。私の実家は広い中庭がある。
そこには遊具もたくさんあって、小さい頃よく遊んでいた。ただ1回でやめた遊具がほとんどだ。
寿が上着を脱ぐ。かなり引き締まった身体。やっぱり身体を鍛えているんだろう。これまたビジュアルが半端ない。
「死音。ちょっと作業入る前に、俺の腹筋触ってみるか?」
「え? え?」
それよりも作業って何? やっぱり怖いことでもするのかな? って、今度は功王子がガスバーナーを持ってるんだけど!?
火力調整中のようで、『ゴォォォォォ』という音を響かせている。この2人は何者? 寿に何をするの!?
「死音お姉ちゃん。今のうちに腹筋触ってきた方がいいよー。このあと寿お兄ちゃんの筋力ガクンと下がるからー」
「う、うん……」
私はゆっくりと寿の方へと移動した。『失礼します』と言ったあと、彼の腹筋に手で触れる。しっかりと割れていて硬い。
次に私は『撫でてもいいですか?』と問いかける。すると、寿は『いいけどほどほどにな』と許してくれた。
撫でるとスベスベで、気持ちがいい。その時誰かのお腹が鳴った。振り向くと寿を見ながら功王子がニヤニヤ笑っている。
「お兄ちゃん見てたらお腹空いちゃった」
「同感だ。さて……本題に行くとしよう」
幸王子が両手にナイフを持つ。ジャキンジャキンと、こんな環境で鳴りもしない音が響いた。
今度は功王子の番。何やら聴診器を持ってきていた。だんだん大掛かりになってきた。すごいぞこの現場は!?
「死音お姉ちゃんは部屋に戻ってて」
「う、うん……」
私はゆっくりと部屋に戻る。窓が大きいので、少しだけ寿たちの様子が見れた。功が聴診器を寿の左胸に押し当てている。
『うーん。やっぱり音が弱いね……。心臓圧縮これまで何回した?』
『んー。忘れた。ここに来る前はほぼ毎日だった気もするし……』
『なるほどね……。少し強ばってるかも。動きも弱そうだしね』
『頼む』
ここで一旦会話が切れた。チラリと見ると、寿の上半身が見えない位置に功王子と幸王子が向かい合っている。
ザクンザクン。なにかを切る音が聞こえてくる。しばらくすると、功王子の笑い声がしてきた。
『やっぱり、肥大化してる……。これじゃあ、血流も悪いままになるよ……』
『俺の身体の悪いところだな……』
『ここまでくると、腹が空く……。ちょうど食べ頃だろう』
た、食べ頃……。何が食べ頃なの……。っていうか何が肥大化してるの!? 気になる。気になるけど見れない……。
功王子と幸王子がナイフを取り出す。そして、サクッサクッという音がした。何かを削っているのだろうか……。
どうしても黙っていられない私は、部屋から飛び出した。寿の方を見に行くと、左胸が引き裂かれている。
微動だにしない彼の心臓。たしかに大きくなっていて、硬質化しているように見えた。
「死音嬢。今はお取り込み中だ」
「これから、食事タイムだからねー。はい、幸お兄ちゃん」
功王子が、赤く少し脈動している赤身が乗った皿を幸王子に渡す。それを、幸王子は普通に食べ始めた。
「味どう?」
「まあまあ」
「幸お兄ちゃんはそう思うんだね。じゃ、ボクも食べるよ」
2人で何事もないように食べていく。そして、皿の中身がなくなると功王子がナイフを持って寿の心臓を削り出した。
「2人とも、寿の心臓を食べてるの!?」
「そうだけど……」「そうだがどうした?」
「いやいや、人肉は普通食べないでしょ!」
「人肉? 違うな……。魔力補給と能力増強のために食べている」
いや、それでもあなたたちが食べているのは、どっからどう見ても人肉です!
「今すぐやめてください!」
「死音。いいんだ。俺の場合これしないと心臓が完全停止するからさ……」
心臓が完全停止!? 心停止しちゃうの!? それはそれで嫌だけど、食べてるこの2人はどんな味覚してるの!?
その後もザクザクと切り取っては食べていく幸王子と功王子。今度はフライパンを取り出し、寿から削り取った肉を置く。
ガスバーナーで火を通し、まるでステーキでも食べるかのように、2人はワイワイやっていた。
すると、功王子がフォークを持ってきて焼いた肉を刺し、私に向けてくる。これをどうしろと……。
「死音お姉ちゃんも食べる? 魔力も獲得できるし、自己防衛能力も上がるよ?」
「いや、私はいいです……。人の肉なんて興味ないし……」
「わかった。じゃあ、残りの肉は取り分けておいて……。寿お兄ちゃん。元に戻すよ」
「頼む」
「時間圧縮。寿の心臓状況及び、現在地にいる人物の状況そのままに作業前時間へと移動開始」
幸が唱えると、寿の皮膚が戻ってきた。時間移動が終わると、寿は普通に立ち上がる。
「なんか巡りが良くなったな……」
「よかった。もう一度聴診器で確認するねー」
「頼む」
功王子が寿の左胸を見る。しばらくするとうんうん頷いて、聴診器を消した。
「心臓の鼓動も正常に戻ってる。また肥大化してたら、美味しくいただくよ」
「あんま食べすぎると、魔力中毒なるぞー?」
「それは冗談か?」
この兄弟異常すぎるんだけど! 寿。もっと怒って……。2人を叱って……。承諾しないで……!
「じゃ、料理配信に戻るか! 功もガスバーナーの位置を考えてくれてありがとな」
「大丈夫。炎嫌いのお兄ちゃん!」
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次回。『配信中にそれはダメー!』
配信中に放送事故。どうする!?




