第4話 集合柊兄弟!
◇◇◇翌日◇◇◇
なにこれ……気持ちいい布団……。もしかして寿が私を抱いてるの……。そんなの尊すぎて目も開けられないよ……。
うだうだと布団の中で時間を潰しながら、夢の中。ふと目を開けると、私にジャケットがかけられていた。
匂いからして寿のものだ。キッチンではガチャガチャと音が鳴っていて、彼が仕事をしていることが分かる。
ゆっくり起き上がり階段を降り始めた頃。玄関に人影を感じ取るや、ピンポンというインターフォンの音。
バタバタと割り込んでくる寿が玄関のドアを開けると、2人の男が立っている。目がぼやけていて見えにくいが、声で気づいた。
「寿お兄ちゃん。来たよー!」
「チャットで連絡した通り。兄上の援護として、母上から逃げて参りました。こちらで過ごしてもよろしいでしょうか?」
アイラグのマスコット担当、柊功王子。次に話したのは、同じくアイラグの理系担当、柊幸王子。つまりは寿の弟だった。
たしか、功王子は私と同い年だったよね? それで、幸王子は私より2歳歳上……。じゃあ、年齢不詳の寿は何歳?
そればかりが脳内でグルグル。そうしているうちに、幸王子と功王子は部屋に入っていった。いやちょっと待ったー!
「寿。なんで弟を中に入れてるの!」
「いや、こいつら居場所失ったんだってよ。実家から逃げて来たって言うから、ここでいいんじゃないかって」
「は? いいわけないじゃん。って! 幸王子と功王子消えてるし!」
私が急いで階段を降りようとすると、案の定足を滑らせて落下。直後リビングから笑い声が聞こえてきた。
私の不幸を笑うな! いや、絶対に笑わないで欲しい。なんかいい気分になれない。って嫌ー!!!!
「死音嬢。怪我はないか?」
「へ?」
手を差し伸べて来たのは幸王子だった。その手はとても冷たく、まるで生きていないんじゃないかというほどだ。
遅れて功王子が救急バッグを持ってくる。ってかどこから持ってきた! この家にはないくらい本格的なバッグなんだけど!
「それはね。ボクの魔法でこっちに取り寄せてきた。スーパーで揃えた」
「は?」
「セルフレジで支払ったし、万引きはしてないよ?」
いや、無人状態購入ありえないんですけど! それができるなら苦労しないわ! それよりも寿は――。
普通に料理をしていた。今日の朝食は幸王子と功王子も一緒に食べるらしい。いやいやいや許可した覚えないんですけど……。
「功。料理できたから運んでくれ」
「了解。寿お兄ちゃん!」
すると、ポンポン音を鳴らしながら、テーブルの上に料理が出現した。ふむ。これが功王子が持つ特殊能力か。
アイラグのライブ演出は不可思議なことが多くあるけど、これで合点がいった。
ライブ演出の一つに功の分身術がある。それは転移を繰り返してたくさんいるように見せているだけということに。
「死音お姉ちゃん。今日はこれから何するの?」
「お、お姉ちゃん? でも功王子は私と同い年じゃ……」
「うん。そうだよ。だけど、ボクは早生まれだから、実質的には死音お姉ちゃんはお姉ちゃんだよ」
「そ、そう……。とりあえず今日は、寿と一緒にスーパーへ……」
そう伝えると、功王子は『ボクも行っていい?』と問いかけてきた。私はどうすればいいのかわからず頷く。
なぜならば、功王子がキュート感全開のおねだり顔をしてきたから。こんなの避けられるわけないじゃん。
可愛い過ぎるんだよ! 私の推しランキング第2位の金色髪の柊功王子! そのキュートスマイルは身体に猛毒です尊すぎます!
すると、寿が私に対して『キョドりタコ中』とからかってくる。どこがタコ中じゃーい! 顔が余計熱くなるわ!
「ならオレも同行する。護衛は多い方がいい」
「ご、護衛!?」
「幸。それは言わないって言っただろ?」
「兄上にはなにも言われてないがどうした。情報共有は義務と母上が言っていた。それを守っただけだ」
なんやかんや言って兄弟喧嘩に発展しそうになったので、功王子に頼んで2人を離れた場所へ移動してもらった。
まあ、すぐに喧嘩は収まったようで、無言の謝罪を私にしてくる2人。私巻き込まないで、それだけはやめて。
「じゃあ本題いこうか……。ほい、死音」
「この紙……。寿が書いたの?」
「そうだが……。とりあえず、冷蔵庫チェックして不足してるものを書き出しといた」
勝手に冷蔵庫覗かないでー!! 整理下手なのバレる。いや、昨日の時点でバレてる。生活感丸見えの汚れた自宅を勝手に掃除したの誰よ!
「ん? 綺麗な方が場所に混乱しないだろ?」
「それはそうだけど、あなたの優しさに脳内大混乱のお花畑なんですけど!」
「まあまあまあ……」
エスカレートし始めた私と寿の言い合いに、功王子が割り込む。ここは天国すぎる。どこを見てもイケメン揃いで夢のよう。
「兄上も死音嬢も水を飲め。功準備しろ」
「了解!」
すると、功王子はその場に留まったまま水の入ったコップを2つ召喚した。恐る恐る立ち上がり、コップのある棚を確認すると、2つ消えている。
功王子の能力理解度は凄かった。しかも、場所を説明していないのに、場所を理解している時点でとんでもない。
「死音嬢、兄上。少しは落ち着いたか?」
「俺は大丈夫だ。だが……。死音が泡を吹きかけてるな……」
そりゃ吹きますよ。赤髪王子の柊幸様! 我が家はどこそこのホストクラブかってくらいカオスなんですけど!
やばいやばいやばいやばい。みんなかっこよすぎて逃げ場失ってる。私が家中逃げ回れば、功王子に鬼ごっこと勘違いされるだろうし。
幸王子からは辛口で痛烈な論破をされかねないくらい頭がいい。寿に関しては存在自体が神様でヘコヘコするしかできない。
こんな状況で私の家は天国か! そんなことしたら日本中のファンが泣く。泣かせてしまう。
とにかく幸王子の手のひらで頭を冷やして貰ったので、地獄からは這い上がれた。ここはオアシスかって……。
「じゃ、作戦会議するぞー」
寿がそう言うと、功王子が大きな紙を召喚した。よく見ると店内マップの案内の紙だ。だけど、これ普通使わないよね?
幸王子はというと、寿が書いたリストを確認して紙に線を引いている。寿たちは何をしているのだろうか……。
「とりあえず。これが最短ルートだろう。二手に分かれる必要がある。スナック類はオレと功で行く」
「ってことは私と寿で一緒に行動するってこと?」
「その通り。スナック類はコンソメパンチのビッグサイズで合ってるか? リストにはそう書いてあるが……」
「頼む。こいつ俺よりコンソメパンチが好きみたいでさ」
「ふむ。新婚というのはそういうものか……。理解し難いな……」
「いや理解しようとしなくていいから!」
幸は『ふむふむ』というような顔をして、空中になにかを書いた。その後手のひらを握って広げると、紙屑が入っていた。
まるでマジックだ、これが幸の特殊能力? なんか――しょぼい。非常にしょぼい。
それを開くと、『新婚生活において、好きという恋愛感情は非常に難しい問題』と書かれていた。
いや、私から学ばないでよ。あくまでも私は推しとして寿が好きなだけなの。推しとして!
「キョドりタコ中。また顔が赤くなってるぞ」
「ご、ごめんなさい……ごめんなさい……!」
「謝んなって……。んじゃ、功。スーパーまで頼む」
「了解! 寿お兄ちゃん。みんな円形になって隣の人の手を握って。一回で飛ぶよ!」
言われた通り私は寿と幸王子の手を握った。寿と幸王子は功王子の手を握る。すると、ポッと身体が熱くなった。
「みんな目を瞑って。10秒後に目を開ける――」
功王子が言い切って目を開けると、そこはスーパーの搬入口手前の駐車場。功王子……凄すぎる……。
直後。幸が買い物リストを半分に破った。せっかく寿が書いてくれたのに、もったいない――と思ったが……。
「文書圧縮。情報分離。解除」
「ありがとな。幸」
「お安い御用。この程度なら簡単だ。兄上を圧縮するよりも……楽だ」
こ、寿を圧縮!?
「問題ないさ。いつものイタズラだ。俺は余裕で耐えられるけどな」
「そ、そういうものじゃない……です……」
「ま、今は買い物に集中しよう。功と幸の方も店内の監視を頼む」
「承知した」「任せて!」
読んでくださりありがとうございます。
ぜひブクマしていってください。
いいねは賽銭箱に大事にしまっておきます。
リアクションも別の賽銭箱に入れておきます。
次回。『スーパーでの追っ手』
主人公ピンチかと思いきや?スパダリ覚醒!!




