ツェルトの物語
あるところに、ツェルトという名前の少年がいた。
その少年は、精霊を使役できるという珍しい力を持っていた。
そんなツェルトはしかし、その力を誇ったり、言いふらしたりはしなかった。
なぜなら、ツェルトには目的があったからだ。
身近にいる、大切な女の子を守りたいという目的が。
そのために、自分が目立つことで、やっかいごとを増やすのは避けたかった。
だからツェルトは、誰にも言わずに、自分の力を伸ばそうと頑張った。
しかし、それではうまくいかない。
誰かに教えてもらう事ができないため、上手な方法も効率の良い方法も分からなかったのだ。
だから、ツェルトの修行はすぐに行き詰まった。
そんなツェルトを叱ったのは、友達の男の子だった。
その男の子の名前はヨルン。
ヨルンはずっとずっと前からツェルトの友達で、ツェルトが無茶したり、おかしなところで頑固になったりするのをよく知っていた。
だから、今回の事もツェルトが悩んでいるのを知って、叱りつけたのだ。
何かに困った時、誰かに相談するのが、一番の近道。
それをする相手が友達でないのなら、友達とは何なのか。
ヨルンの言葉を聞いたツェルトは、目をさまして、精霊の事についてたくさん相談した。
他の友達にも、強くなる方法をたくさん聞いたのだった。
そのおかげで、ツェルトはぐんぐん成長していった。
どんな時でも大切な女の子を守れるようになったのだ。
それからたくさんの時間が流れて、ツェルトは自分が住んでいる国で一番強い人間になった。
知らない人なんていないくらいだった。
ある日、どうしたらそんなに強くなるの?
とツェルトに質問する子供がいた。
その子供は、たくさんいる弟や妹を守るために、しっかり者の強くてかしこいお兄さんになりたかった。
質問されたツェルトは、色々な方法を教えたが、一番大切な事はしっかり伝わるように何度も言った。
強くなりたかったら、人の力を借りる事と、一人で悩まない事。
これが大切なのだと。
それを聞いた子供は、分かったと頷いて、ツェルトにお礼を言った。
ツェルトは、それからも大切な女の子を守りながら、強くなる修行をかかさず行った。
そのおかげで、大切な女の子はいつも笑顔を絶やさない、世界で一番幸せな女の子になったのだった。