布団王国への転生
俺はシュン。
弟に、中学二年生のタイチがいる。
朝のHRで、同級生の隣田に、早速冷やかされたのが原因だった。
だから今は、とぼとぼと俯きながら、下校路を歩いていた。
『どんなふうに、冷やかされたの?』
数日前に読んで、自室にほったらかしたままの少女漫画に、クールな青い瞳の国王(背丈は、おそらく弟程度)が登場していた。それが、俺の脳内に、気ままな妖精みたいにふうわりと飛んできて、そう聞いた。
俺は隣田の言葉を一つひとつ丁寧に思い出しながら答えた。本当は思い出したくなかったけれど、わざと一言一句合うようにして。
「『やーい、山田ー。あれえー? いつものグレーの上着、今日は着てないなあー? 何があったのかなー?』」
何があったのか、大体の見当は、隣田にはもうついているのだろう。それが余計に悔しかった。
うちの学校は私服制である。
冬だし寒いしグレーの上着を着て授業に参加していた。もちろん上着とは思えないほど薄いので上着だということはバレなかった。そのお気に入りのグレーの上着を、きのう、高校の手帳と一緒に選択してしまい、高校の手帳の1ページ目の金色の彫刻の成分が、上着に付着してしまったのだ。『グレーに金はよく目立つぞ』昨日の浅はかな俺に伝えたかった。
国王は、俺の話を聞き終わると、「へえー」と空返事だけ返して、また誰かの少女漫画の中に入っていってしまった。