プロローグ
主 文
被告人を死刑に処する。
理 由
被告人はラグナス公爵家の令嬢であり義理姉であるオリエンスの暗殺を企てる為、闇ギルドと提携し、被害者を殺害しようとした。
オリエンスは、第一王子リオス様の婚約者であり、我が国の未来を担う重要人物である。よって本件の犯行は極めて悪質であり、殺意を持った計画的犯行と思慮されることから、死刑をもって臨むのが相当である。
……ああ、失敗してしまった。
流石、オリエンスお姉様。
やっぱり一筋縄ではいかなかった。
後少しで復讐が達成できそうだったのに、いつの間にか先回りをされ、背後を取られてしまった。
それに……。
「非常に残念だよクレス。まさか、君がそんなことをするなんて……」
死刑執行直前に見た、リオス様の悲しい顔がふと脳裏に浮かぶ。
幼い頃から知っていた仲だったのに。
これまで培ってきた私達の信頼は、お姉様の毒牙によって呆気なく崩れ落ち、今では私の言葉なんて一切信じてもらえない。
それもこれも、私の詰めが甘かったから。
お姉様のずる賢さを侮ってしまったから。
でも、これでよく分かった。
今の私じゃ到底太刀打ちなんて出来ないことを。
だから、次こそは絶対に成功してみせる。
あの悪夢を二度と味合わないためにも。
そのためなら、このまま悪人として堕ちてもいい。
例え最愛の人に見捨てられても構わない。
どんな手段を使ってでも、この命が尽きるまで私は絶対に諦めない。
そう強く心の中で誓い、再び訪れる奇跡を信じて私は空を仰いだ。