星々の子守唄 一
ネビュラ・ドリームの体内では、常に新しい星が生まれようとしていた。
それは星雲意識体である彼女の宿命だった。体の中で、水素が凝縮し、重力が働き、核融合の火が灯る。時には、その小さな星が一生を終え、超新星となって彼女の意識を揺るがす。
「また、新しい子が生まれそうなの?」
シャイアの青白い光が、好奇心に満ちた波動を放っている。
「ええ」ネビュラ・ドリームは、体内の星形成を意識しながら答えた。「でも、この子は少し変わっているわ」
普段なら、彼女の中で生まれる星は数分で一生を終える。それは彼女の存在規模が、通常の星雲と比べて遥かに小さいからだ。しかし今回は違った。
この星は、なかなか死のうとしない。
「どのくらい持ちそう?」バーテンダーのラギが、いつもの落ち着いた声で尋ねる。
「分からないわ」ネビュラ・ドリームは、自分の姿がテーブルの上で渦を巻くのを見つめながら答えた。「でも、この子には意志があるみたい」
その言葉に、六人掛けテーブルの他の客たちが興味を示す。光帆種のヴェイラ・ナイトシャドウが、虹色の体を僅かに傾ける。重力零存在のドリフター・ゼロは、完全な無重力状態で宙に浮きながら、彼女の方に注目していた。
「意志?」ホログラム実体化種のレイ・ミラージュが、半透明の姿を実体化させながら問いかける。「星に意志があるっていうの?」
「そう言えるのかしら」ネビュラ・ドリームは、自分の存在の本質について考える。「私たち星雲意識体は、星々の集合的な意識とも言えるわ。でも、個々の星に意志があるなんて...」
その時、彼女の体内で異変が起きた。
新しく生まれた星が、突然強い光を放ち始めたのだ。その輝きは、「量子の残響」の照明をも凌駕するほどだった。
「これは...」量子シールド室から、因果律存在のカルマ・ループの声が響く。「面白い因果の絡み合いね」
ネビュラ・ドリームは、自分の中の小さな星が何を求めているのか、理解しようと試みた。すると、思いがけない映像が彼女の意識に流れ込んできた。
それは、遥か彼方の、ある星系の記憶だった。
(続く)