1-3 それぞれの期待
もともと携帯用のため、改行が非常に多いです。
ご了承ください。
「お・き・ろ~っ!」
軽い口調とは裏腹に、シンの頭は、思いっきり叩かれた。
「…………痛い。」
ちなみに、シンの寝起きは、お世辞にも良いとは言い難い。
「そろそろ晩飯だってさ。マスターが呼んでるよ?」
「…………あぁ。」
「その返事…………絶対に理解出来てないでしょ?」
「…………あぁ。」
さらに叩かれること四発。
ついに、シンの頭脳が活動を再開した。
「ぇっと……あんた、誰だ?」
シンの目の前にいるのは、茶髪のショートカット、すらりとした体型で、年齢はシンと同じくらいだろう。
「あ、やっとまともな言葉喋ったわね。」
「…………あんだけ叩かれりゃな。」
「あはは~。…………ウチはミシェル。あなたの隣人ってとこかしら?」
「そうか。……俺はシン。」
シンは、眠る前に整理していたと思われる荷物(どうやら、荷物を整理している途中に眠り込んでしまったようだ)から、護身用の短剣を取り出し、立ち上がった。
「晩飯ってのは、酒場でか?」
「そう。普段は各自バラバラに食べるんだけど、今日はあなたにみんなを紹介するって、マスターが全員集めたの。」
「そうか……。」
「あんまりみんなを待たせちゃ悪いから、そろそろ行こうか?」
そして、二人は酒場へと向かった。
ところかわって、こちらは酒場。
ここでは『何でも屋』の面々が、新入りの登場を、今や遅しと待ち構えていた。
そんな面々の中から、一部会話を抜粋。
~二十歳過ぎくらいの男三人の場合~
「おいクラッスル、聞いたか?新入りの話?」
「ん~、なんだいジャック?新入りがくるのかい?」
「あぁ。それも、噂によると、あの門番のじいさんの推薦らしい。」
「ん~、あのじいさんって凄いのかい?」
「おまえ知らないのか?あのじいさん、昔は周辺国から『赤い甲冑の騎士』って呼ばれて、恐れられてたみたいだぜ?」
「ん~、それは知らなかったのだ。君は知ってたかい、クオン?」
「…………まず、興味がない。」
「おぃおぃ、おまえも少しは魔導書以外にも興味を持たねぇと、時代に乗り遅れるぞ?」
「…………大丈夫。その程度の知識、すぐに覚えられる。」
「そういう問題じゃねぇって。」
「…………それに。」
「ん?それに、なんだい?」
「……『赤い甲冑の騎士』って名前。正直、ネーミングセンスないと思う。」
「それまたどうして?」
「……『白銀の騎士』や『赤薔薇の騎士』ならともかく、『赤い甲冑』ってのはどうかと。…………しかも、名前が長い。」
「厳しい評価だな。」
「ん~、二人とも。どうやら、新入りが来たみたいだよ?」
~シンと同年齢の女の子二人の場合~
「スー、塩とって?」
「はい。」
「スー、なんで今日はみんな集まってんの?」
「え~っと、なんだか新入りさんが来るみたいですよ?」
「ふ~ん、新入りねぇ~。あんま興味ないかな。ぁ、そのパンまわしてちょうだい?」
「レンちゃん、よく食べますね。」
「あたり前じゃない、今日は朝から出陣てたんだから。……あんたも、少しは食べて栄養つけないとダメよ、スー?」
「えぇっと、あのぉ……私、ダイエット中なので……遠慮させて頂きます……。」
「くっ!あんたみたいにルックスもスタイルもいい、可愛い女の子がダイエットって言うと、嫌味にしか聞こえないのよっ!!」
「ちょっ、ちょっと、レンちゃん!痛いですっ!!そんな、無理矢理っ!口にお肉を詰め込まないで下さいっ!!」
「天誅よ、天誅。あんたも少しは、この気持ちをわかりなさいよね。」
「ぅぅ……。レンちゃん酷い……。」
「あれ?ミシェルが誰か連れて来たみたいね?」
「ぁ、きっと新入りさんですね。」
「ふ~ん……。どうせ、ジャックみたいに、見るからに傭兵って感じのおじさんでしょう?」
「ぇっと……その……ジャックさんもまだ、二十歳ちょっと過ぎなんですけど……。」
「まぁ、いいわ。少しは仕事も減ってくれるといいんだけど……。」
こうして、それぞれが様々な想いの下、一堂に会した。
読んで下さってありがとうございます