おばけちゃんがくれたえんぴつ
あるところにおばけがいました。
おばけは子供が大好きでした。
きょうもカワイイ子を探して旅をしています。
あるところに女の子がいました。
その子はとてもびんぼうで、文房具を買うこともできません。
だからおばけはえんぴつをプレゼントすることにしました。
「ねぇねぇ、これをあげるよ」
「わぁ! ありがとう!」
女の子はとてもよろこんでくれました。
おばけはとってもうれしくなりました。
女の子はおばけがあげたえんぴつで、ノートに文を書きしるします。
かりかり、かりかり。
一生けんめい勉強する女の子を、おばけはやさしくみまもります。
「おばけちゃんのおかげで、100てんがとれたよ!」
「やったね!」
女の子はうれしそうにテストを見せてくれました。
〇がいっぱい!
おばけはとってもうれしくなりました。
女の子はお手紙を書きます。
大好きな男の子にこくはく! するのです。
「受けとってくれるといいね」
「うん!」
女の子は一生けんめい手紙を書きました。
でも受け取ってもらえませんでした。
「おばけちゃん、かなしいよぅ」
「だいじょうぶ、いつかきっと大切な人が見つかるよ」
おばけがはげますと、女の子は元気になりました。
それから月日がたち、女の子は大きくなりました。
大人になるにつれておばけが見えづらくなります。
「おばけちゃん、もうお別れなのかな?」
「だいじょうぶ、ずっと一緒にいるよ」
おばけがそう言っても、女の子は不安そうにしています。
やがて女の子はすっかりおばけの姿を見ることができなくなりました。
それでもおばけはずっと、女の子のそばによりそいます。
女の子が大人になって結婚をして、子どもができて、年を取って、老人になっても。
おばけはずっとそばで見まもっていました。
老人になった彼女は家族に見まもられながら、最後の時をむかえます。
「ああ……幸せな人生だった、みんなありがとう」
彼女はそう言い残して息を引き取りました。
別れの時。
棺の中にはおばけがプレゼントしたえんぴつが入れられました。
「おつかれさま」
「ああ、おばけちゃん、そこにいたのね」
おばけになった女性は、ついに再会をはたします。
「うん、ずっと一緒にいたんだよ」
「ありがとう。これからどうしようかしら?」
「一緒に天国へ行こうか」
「私を待っていてくれたのね。
ありがとう」
女性とおばけは一緒に手をつないで天国へと向かいます。
大切にしていたえんぴつとともに。
バナーイラストは楠木結衣さまから頂きました