1 恩を仇で返されたけど、冤罪にもなりませんでした。私の正義は正しかったようです。
逆ハーレムを目指すヒロイン擬きは嫌いです。誠実なのが良いのさぁ〜 魅了なんてのに引っ掛かる奴が悪いのさぁ〜 で、書き始めました。
お昼に何時もの様に食堂に行き、今日はミサキが遅いなぁと思っていた時の事です。ミサキのクラスの子達に囲まれました。いきなり、彼らは口々に私を罵り始めたのです。ミサキを友人だと思って、毎回お昼ご飯を集られるのだって我慢して庇っていたのに、その私が何で虐めをしていた事になってるの?
「マルガリータ様、私、持ち物を壊されたり、嫌いな物を無理矢理食べさせられても、ズッと我慢していたのです。でも、大切な髪飾りまで壊すなんて……」
集団に庇われるように出て来たミサキは、壊れた髪飾りを私に突きつけました。
「ミサキが壊されたと言って見せている髪飾りは、私が自分で作った、私の髪飾りですが? それも、先月から見つからなくて、ずっと探していた物です。寮の同室のカナリアさんに聞いてもらえば分かります。
それとも、私の同室の方では信用出来ないと言うなら、材料を購入して、一緒に作ってくれたお店の方に聞きますか?
ミサキ。私は貴女がクラスの方に虐めを受けていて、文房具などを壊されたと、散々おねだりされたり、お小遣いをもらえないからと言って、毎回のお昼代を払わされていましたが、その私を虐めの加害者として罵るなんて……
此処に集まったあなた達も、私がミサキを虐めていると責めるのですから、その現場を見て判断されているのですよね! もし、本当にそんな事があったのなら、逆に教えて頂きたいのですが?」
大勢に囲まれた上に、一方的に罵られて怒髪天を突いた私は、普段では出さないくらいの大声で言い返しました。私の声が聞こえて此方に来てくれたカナリアさんが、ミサキの持っている髪飾りを見て、
「それはマルガリータさんの作った髪飾り……誰が壊したの? 酷いわ、私が色違いのお揃いで作ってもらったのに、これじゃ二人で付けられないじゃない!」
と、振り返って自分の髪に刺さっている髪飾りを見せてくれました。魔力を纏わせないと作れないので材料費も少しお高めで、しかも簡単には直せないのです。…まぁ、私は自分の魔力で作っていますから直せますけどね。他の人では魔力が違うので難しいのですよ。
食堂で人目を引く騒ぎを起こしましたからね〜 私を罵っていた人達以上に野次馬が周りを取り囲み、ミサキの手にしている壊れた髪飾りと、カナリアさんの使っている髪飾りを見比べて、
「あの二つって見た感じ同じだよね。って事は売ってる物じゃ無いんじゃない?」
「言い掛かりを付けられて、貶められているあの子って、毎回、二人分食券を買っている子だよね?何時も食券選んでるのって、壊れた髪飾り持ってる子だよね。結構図々しいなぁって見てたけど。」
「ドゴール嬢は伯爵家だけど、裕福だからね。壊れた髪飾り持ってる子は単なる友人らしいけど、ドゴール嬢は何時も言われるままに食券を買って上げていたよね。」
「あの、壊れた髪飾り持ってる子、ウエイツ子爵家で引き取られた子だよね。可愛いから引き取られたって聞いたけど、見目の良い男性にばかり擦り寄るので話題になっていた子だよね〜」
私達を取り囲んでいる、外側の集団からいろんな話し声が聞こえて来ました。意外と私達を見ていた人の多い事に驚きましたけど、身分が下なのに一方的に奢らせるから目立っていたのですね。
ミサキは、『私、クラスの女の子に話し掛けても相手にされなくて。』と一人で泣いている所を見掛けて友人になったのですが、そんな裏があったなんて知りませんでした。そして、私を貶めようと声高に叫んでいたミサキを取り巻いている人達の中に、私の婚約者を見つけてしまいました。
「ケント様、貴方は何時からミサキと仲良くしていたのですか? 何故、その事を私に内緒にしていたのですか? そして、貴方も私を罵っていましたね。」
母親同士が親友のため私達も幼馴染みで仲良くしていたので婚約していたのですが、私がミサキと知り合って暫くした頃から、何故か距離が取られていたのです。それでなくても、ケント様が学院に入ってから文通も途絶えがちでしたのに、最近は本当に会う事すら避けられていました。
「マルガリータはミサキを虐めていたのだろう! ミサキの持ち物を壊して脅しては、新しい物を買い与えて誤魔化していると、ミサキが折に触れ教えてくれていたのだ。昼食も好きな物を食べられないと……
ミサキと私が仲良くなったから嫉妬したのとは違ったのか?」
今更の様に言って来ますが、何故、ミサキに訴えられた時に、私に聞いて来なかったのでしょうか? 幼い頃から親しんできた私の事より、学院で初めて知り合っただけのミサキの言葉だけを信じるなんて。穿った考えですが、ケント様も子爵家ですから、伯爵家に何か僻みを持っていらしたのでしょうか? 私はミサキの肩を抱き続けているケントの態度に、冷めた表情で、
「この半年近く、私を避けていたくせに、今更、私の真実なんて必要ですか?
しかも、ミサキと仲良くしていたなんて、今、初めて知りました。
ケント様は幼い頃から婚約を結んでいる私の事より、ミサキの言葉を信じているのでしょう? それなら、私にも考えが有ります。
ミサキを庇って私を悪し様に罵った皆様。私はあなた方の主張された行為は何一つしておりません。少なくともこの数ヶ月、学院に於けるミサキの庇護をして来たのは私です。
ミサキ。恩を仇で返して来たのはあなたです。責任はキチンと取って頂きます!」
とだけ言い切りました。家に帰って、両親にケントとの婚約破棄をお願いしましょう。この様な人目のある所で『嫉妬に駆られて虐めをした』などと醜聞を撒き散らされたのですから、婚約破棄の理由として『冤罪を掛けられた』と私が主張しても、双方の親に納得して頂けると思います。
食欲も無くなりましたし、この茶番に時間を取られ過ぎました。午後の授業の始まるチャイムが鳴り、青褪めた表情の私は、カナリアさんに肩を抱かれて食堂を後にしました。
授業が終わり、空っぽのお腹を抱えて寮に戻ると、外泊願いを出して馬車を呼んでもらい、タウンハウスに向かいました。母は領地に居ますが、父は王都で仕事をしているのです。執事のセバスに出迎えてもらい、一旦私室で着替えます。
父に『話しが有るので時間をもらいたい。』と、セバスに面会の予約を頼みました。父の仕事の都合が有るので、いきなり押し掛けても話しを聞いてもらえない事が有るのです。幸い、今日中に時間を取ってもらえそうです。
流石にお腹が空いたので、紅茶とクッキーを部屋に頼み、持ち帰った課題に取り組んでいると、夕飯のお迎えが来ました。父の時間が無いので、夕飯を食べながらの相談になったそうです。
「お忙しい処、済みません。実はケント様との婚約を破棄。若しくは解消して頂きたいのです。」
時間を有効に使う為に、本題だけを告げました。父は流石に驚いた様で、
「ケントとは数年会っていないが、学院で何があったのかな?」
と聞いてくれました。
「ケント様とは学院に入学したので関係が深まるかと思っていましたが、逆に距離が開きましたわ。
今日、食堂で冤罪を掛けられましたの。私が庇護していた子爵令嬢が、恩を仇で返したのです。…私に友人のように擦り寄って来たミサキの外見が庇護欲を唆るので、私もやられてしまいました。散々集られた挙げ句、悪人に貶められてしまいました。
幸い、私の本当の友人達には通じなかった様ですし、私がミサキを庇護していた事は有名だったので、大多数の誤解は解けていますが、面白がって騒ぎたい輩にネタを与えてしまいました。
ミサキの取り巻きの中に、ケント様の存在が有りましたの。
今日初めて知りましたが、ケント様は私がミサキに嫉妬して虐めていたと信じているそうです。私はケント様とミサキが知り合っていた事すら知らなかったのに。」
「つまり、その子爵令嬢のミサキとやらにケントも寄生されていたのか。」
「寄生というか、魅了されていた様ですね。ミサキが私を貶めようと発言した内容を聞いても、私を庇う事なく、ミサキと一緒になって、私を嫉妬に駆られた悪人のように貶めてくれましたから。」
「ケントはマルガリータではなく、ミサキを選んだ。という事だな。」
「はい。取り巻きの中でも、ミサキの肩を抱いて私を罵っている姿を見て、私はそう感じました。
ケント様のこれまでの態度を鑑みても、私は婚約を続けたいとは思えませんし、仮に謝罪をされたとしても、婚姻したいとは思えません。ミサキを庇った手で触られたく無いのですもの。」
父に訴えた結果、学院での生活状況も調べた上で私に何らの否が無かったのもあって、領地にいる母を通さずに婚約は解消されました。私からの破棄で良かったのですが、父親同士で相談した結果、これ以上冤罪まで懸けられた私の評判を落とすのは得策では無い。という事になったのだそうです。私としても婚約自体が無かった事になって、ホッとしました。
私にかけられた冤罪についてはお金で解決されたようです。我が家の方が力も有りますから、子爵としてはお金で赦されるなら有難いと頭を下げて来たそうです。解消と破棄では取られ方が変わりますから、お互いに傷を小さくする事も考慮されたのでしょう。
ミサキを引き取った子爵家ともお金で解決したそうです。私が立て替えた分は私の手に戻されました。『半年近く貸していた。という事にしてもらえませんか?』と頭を下げて来たそうです。『お金を返す事で誠意を見せました。コレで寄生された事実を忘れて下さい。』という事なのでしょう。どうでも良いです。
学院に入ってから接触が減っていた上に今回の件があって、結婚してケントを支えて家を守るという楽しみを思い描けなくなりました。婚約が解消されたので、足枷が取れてスッキリした。とすら感じていた私とは違ったのでしょうか? 何故かケントが付き纏って来る事が増えて、学院生活が鬱陶しくなってます。
領地の母から来る、ケントと復縁を促す様な手紙にも苛々しています。親友の ケントの母親の味方をしてケントを庇うなんて、娘の傷付いている心はどうでも良いのでしょうか? 必然的に寮に篭る時間が増えて、部屋には私の作った物が溢れる様になってます。
アクセサリーは大きさが小さいので、数が多くても、場所は取らないと思っていたのですが、限度はあるようですね。まとめて箱に入れてはあるのですが、積み重ねると、それなりに場所を取ります。
「カナリア、何時も迷惑掛けてごめんね。また、買い物に付き合ってもらっても大丈夫?」
「手芸屋さんと文具店、それに魔石工房よね。大丈夫よ。マルガリータとのデートを私が断るなんて有り得ないから!
ただね、メイスン兄様が付いて行くって張り切っているんだけど、邪魔じゃ無いかしら?」
カナリアの家はノチウ侯爵家と言い、メイスン様は次男で近衛騎士をされています。ケント対策にカナリアが頼んでくれてから、毎回?お買い物に付き添って下さいます。カナリアが私のような傷物にされない様に警護されるのです。本当に優しい方で、一人っ子の私は羨ましい限りです。
「まぁ! 本当に有難いお話ですね。それなら、カナリアを連れ出しても安心出来ますね。」
私が心から感謝の意を伝えると、ちょっとだけ、カナリアが変な顔をしましたが、気の所為でしょうか?
髪飾りを含めたアクセサリーを作るのも好きですが、実用的な物を作るのも好きです。今日は手芸屋で刺繍糸や布や革を買いました。以前に比べて、気ままに買い物に出掛けられない状態なので、少し多めに買い込んでいます。ふふふ。此処で登場するのがマジックバッグです!
ナント、錬金術の時間に付与魔石の特別講座の話を知り、受講しました。半年の成果が空間の付与です。最終目的は時空間の付与ですが、これには努力の他に才能も必要だそうで、まだ、到達?していません。
先生がおっしゃるには、『空間の付与は想像力の才能?が有ればなんとかなる!…かもしれない(笑)』との事で、半年頑張って想像力を羽ばたかせた結果、出来ちゃいました! 最初に成功した魔石は学院の備品なので泣く泣く提出しました。
その後で魔石工房を紹介してもらい、魔石を自分で購入して出来た空間の付与魔石は私の私物です。好みの布と革で作ったポシェットに空間の付与魔石を加工して、初めて自分用のマジックバッグを作りました。
見掛けはノートサイズですが、中は5M立方程の空間なので、余裕でいろいろ詰め込んでます。手芸屋さんでは、カナリアとメイスン様にもお好みの布と革を選んでもらいました。多少時間を頂きますが、何回も時間を頂いているお二人にも作る予定です。成功したら贈る予定なので、今はまだ秘密です。
流石にメイスン様がいらっしゃる所にケントは来られない様で、3人で街歩きを楽しんで過ごせました。
あの事件から半年が過ぎ、学年が上がり3年生になりました。ケントは卒業して学院を去りました。騎士を目指していたそうですが、メイスン様のいらっしゃる近衛騎士団には見掛けないそうです。王家の守護を勤めるのが近衛ですから、子爵家ではなれない方が当然かもしれません。私と結婚すれば伯爵家扱いになるので、可能性は有ったのですよ。たぶん、その為に私に付き纏っていたのでしょう。
風の噂?では、ミサキは本当に魅了の付与魔石を手に入れていたのだそうです。ケントを始めとしたあの取り巻きの方は、皆、操られていたらしいです。魔石は取り上げられたので、魔石の効果が切れて、取り巻きをしていた方々は、婚約者に平謝りに謝ったそうです。でも誠意を見せられず、婚約者候補に落とされたり、ケントのように解消されたり。結果はそれぞれでした。
魅了の魔石は基本的に同性には効かないのですが、もしかしたら、私には効いていたのでしょうか? 今は取り上げられて、ミサキは監視対象として改心させる目的で学院に通っています。犯罪者扱いに近いので、多分、針の筵状態? 本当にボッチ状態らしいです。自業自得ですね。
何にせよ、ミサキは私には関われなくなっているのでホッとしています。魅了された方々の婚約者の方々から感謝された結果、物理的にも、私には近寄れないように管理されているそうです。
クラスは期末試験の結果で入れ替わりがありました。私はカナリアと同じSクラスです。私は空間の付与が出来たので、Aクラスから上がれました。Sクラスは公爵家や侯爵家が多く、伯爵家の私は大人しく猫を被ってますけど、仲良しのカナリアがいるので直ぐに剥がれそうです。
寮の部屋は、今ではスッキリと、広々と使っています。クローゼットと机に空間を付与したマジックボックスを仕込んだので、外には何も出ていない状態なのです。
事の起こりは空間付与に成功して、カナリア達にお礼のマジックバッグを贈った時の話です。流石、侯爵家。お家にマジックボックスがあるそうで、参考に見せて頂ける事になりました。観察させて頂いた結果、布や革に加工するのと同じようにすれば作れると思い、父に箱をお願いして付与魔石を加工してみたら……出来ちゃいました。空間が10M立方の大きさのマジックボックスが!
寮の机は持ち込み品なので、迷わず引き出しをマジックボックス化しました。クローゼットに入れる箱は父に寸法を伝えて作ってもらいました。大きくなくて良い反面、持ち運び出来てしまうので、床に固定具で固定しました。これに溢れかえった品物を収納、解決!……と綺麗さっぱり収納して振り返った所に、カナリアの可愛い笑顔が。
魔石はまだ有りますから、カナリアの机にも加工しましたよ。ついでにカナリアの用意した箱にもね。で、箱を用意した事でバレたメイスン様にもマジックボックスを作りました。騎士団の寮も、個室は大きくなくて、鎧?とかの嵩張る装備の置き場所に困っていたのだそうです。メイスン様様には頑張って20M立方のサイズに拡張しました。魔力が足りて良かったです…
此処らへんで私にも分かったのですが、空間付与の出来る職人は少ないようです。父と、ノチウ侯爵家から『お手紙』が届きました。幸い、カナリアとメイスン様以外には贈っていないので、私の空間付与はバレていません。付与魔石の特別講座は受講者が少なく、個人受講が基本なので、先生しか私の成功を知りませんし、貴族の中には、付与講座を貴族が受けるなんて。と、奇人変人のような価値しか持っていない方もいて、話題に上がる方が珍しいのです。
あー、ノチウ侯爵家からのお手紙には、多額の礼金の書かれた一文が入ってまして驚かされました。直接父の方に預けたと有りましたので、父も驚いたと思います。私はカナリアに、
「こんなに沢山頂けないよ! 魔石がどれだけ買えると思うの? 侯爵様って、魔石の値段をご存知ないの?」
って詰め寄ってしまいましたよ! そしたら、カナリアがね、
「魔石代では無いわ。マジックバッグを2個。マジックボックスを3個。合計5個分なのですから、妥当な金額なのでは? 少なくとも、父が知っている値段だと思いますわ。くれると言うのだから、もらっておきなさいよ。」
と、クスクス笑ってます。
「少なくとも、お二人に贈ったマジックバッグは私の感謝の気持ちなのだから、それを含まれるのは心外です! 」
と、憤って見せると、クスクス笑いで誤魔化されてしまいましたよ。お小遣いで済ますには大きな金額なので、父と相談しなくては。取り敢えず、お化粧した箱を用意してもらって、残っている付与魔石で加工して、侯爵様に贈らせて頂かなくては! それにしても、カナリア達の人の良さはお父上譲りなのでしょうね。
軽い気持ちで書いてみました。数話で終わる予定です。勧善懲悪に因るざまぁは好物です。
因みに、空間魔法は私の最大の憧れです。




