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ザクを赤く塗っただけなのにあのシャアザクのカッコよさは異常

前回のあらすじ。

ヤンデレとメンへラを何とか帰らせて一時は平和を取り戻したかと思った悠だが、次の日に目覚めると布団の中に知らない女の子がいた。

悠は急いで周囲を確認する。当たり前ではあるが人影は無く悠は胸をなでおろす。まあ居たら居たでそいつが逮捕されるのだが咄嗟のことに焦ってしまった。

さて少なくとも状況証拠による他者からの通報は避けられた。となると後はこの幼女の始末だ。

自分はロリコンでもペドでも無いので無意識でさらってくるなんてことは無いはずだ、多分。

そうなるとこの子は一体…。

「んんっ…ん…」

悠が慌ててバタバタしている音に気が付いたのか幼女は可愛らしい唸り声と共に目を覚ました。

「ん…あぁ、おはよう、悠」

眠たそうに幼女は朝の挨拶をする。

「あっ、おはよう。じゃなくって!お前は誰だ!何でここに居るんだ‼」

純真無垢な瞳に惑わされてつい挨拶を返すが我に返り大声をあげる。

「何でって…前からずっといたじゃんか…んんっ…やっぱり朝は辛いな…」

幼女はそう言って伸びをする。

「ここは俺の一人暮らしだ。お前みたいな幼女が入る隙間なんかない」

「隙間なんて探せばいろいろあるよ…よいしょ」

幼女は立ち上がり屈伸をしたり腰をひねったりなど準備運動をする。

そして

「よいしょ!」

まるで水泳の飛び込みのように悠に突撃する。

悠は危ないと感じて幼女を受け止める態勢を取る。

しかし少女の身体はゆうにぶつかることは無く指先は地面にぶつかり、そのまま水の中に入るように悠の影に消えた。

「ほらこんな風にお前の影に入ってずっと見ていたんだ。ん?どうした、ボーっとして」

もう訳が分からない。昨日はやばい奴二人が来て今日は布団に幼女が潜り込んでいて、それも何故か影の中に入り込めるやばい奴で…

「……おやすみ」

この状況を理解できない、いや理解したくない悠は再び眠りに就く。今日のこと、そして昨日のことが夢であることを願いながら悠はゆっくりと目を閉じ……

「起きろ、夢じゃない」

幼女はそう言って腕だけを影から出して悠のほっぺたをつねる。

…痛い。つまりは夢じゃない。

「はぁ……」

つねられた悠は大きなため息をつく。

「ため息をつくと幸せが逃げるぞ」

幼女はそれを聞いて胴まで身体を出してそう言う。

「大丈夫だ、もう逃げてる」

悠はそう言って幼女の手をほっぺから取り、目を閉じる。

「何で眠る?学校はどうしたんだ」

「今日は休む、いろいろと限界だ」

「仮病は駄目だぞ。早く準備をしろ」

「精神的に病んでるから仮病じゃない。安心しろ」

「でもお前よりも病んでる公子は学校に行ってるぞ」

「あいつはあれが平常なんだ。俺は違う」

「そう言われるとそうだとしか言えないがいいのか?お前が休みなんかしたらあの二人がまたこの家に襲来するぞ?」

「……居留守を使えば…」

「ちなみに昨日、お前がお茶を入れてる隙に公子がお前の家のスペアキー取ってたぞ」

「⁉」

悠は跳び起きてすぐに貴重品を入れている箱を開ける。

一応すると中には通帳だったり、いろんなものの暗証番号を書いた紙だったりは入っているがスペアキーだけは中には無い。

「嘘だろ…」

この貴重品箱は普段は戸棚の中に入れてあり、暗証番号、もしくは鍵で開く設定になっている。その鍵も携帯のキーホルダーにしているので暗証番号でしか開かない。暗証番号は六桁であるので合計で百万通りあるため簡単には開くことが出来ないはずだ。それをあの間にとは…。

「それでどうするんだ。学校に行くのか?」

「いや、とりあえず大家さんに相談して鍵を変えてもらう」

「それも無駄だぞ。あいつピッキングであの箱開けてたし」

うん。終わった。

「もう一度聞くけどどうするんだ?」

幼女は握りこぶしほどの距離まで顔を近づけてそう聞く。

「……行く…」

逃げても無駄だ、というより逃げた方がとんでもないことになる気がする。

悠は夏休み明け登校初日が比較にならないほどのテンションで支度を開始した。

「ところでお前、名前はなんて言うんだ?」

悠は朝食を作りながら幼女について聞いてみる。

「名前……無いから適当につけても良いぞ。その代わりかっこよくて可愛くてゴージャスな奴な」

幼女はあほがばれる返答をする。

「クロとかでいいだろ。服も髪も黒いし、ついでに影も」

「クロ……かっこいいような気はするが可愛くてゴージャスな感じはしないぞ」

「じゃあクロノワール。略してクロ」

「おお!それならかっこよさもゴージャスさも美しさも感じる!今日から私はクロノワールだ!よろしく頼むぞ悠!」

「おう!」

可愛らしさが美しさに変わっていることにつっこみを入れたかったが面倒なのでそのまま流した。正直クロノワールという言葉もどこかのゲームだか商品名とかで聞いたことが無く意味も知らないので適当なのはお互いさまだ。

「それでお前はいつから俺の影にいるんだ」

悠はトーストにジャムを塗りながらそう聞く。

「いつからと言われてもなあ。少なくともお前と公子が初めて出会った時にはいたぞ」

クロもトーストにバターやらジャムやら、塗れるものをすべて塗りながらそう答えた。

「覚えてないのか?」

「覚えているも何も私自身どうしてお前の影の中にいるか分からない。気づいたらお前の影の中で公子にストーキングされる様子を見ていた」

「なぜ止めなかった」

「人前に姿を見せてはいけないということは覚えていたからな」

「じゃあなんで今になって出てきたんだ」

「ん~、なんとなくね。もしかしたら人肌が恋しくなったのかもしれない。それか今の君を慰めたくなったのかも」

「余計なお世話だ」

悠は口の中にトーストを突っ込んでそのままミルクで胃に流し込む。

「ちゃんと噛まなきゃ駄目だぞ」

「いいんだよ。どうせ胃に入ったら同じだ」

そう言って悠は歯磨きをしに洗面台に向かう。

「それでこれからお前はどうするんだ」

口をすすいでいるゆうにクロはそう聞く。

「とりあえずあの二人を真人間に戻す。それか嫌われて俺から距離を離す」

「最初のはまだしも嫌われたらどうなるか分かったもんじゃないぞ。過去の男を消すみたいなことが起こるかもしれないし…」

「嫌われるのはあくまで最終手段だ。それにその時は引っ越しでも海外移住でも何でもしてみせるさ」

そう言って悠は着替えに寝室に戻る。

追っかけてきそうだなという言葉をクロは口の中で押しとどめた。

「…それでお前ついてくる気なのか?」

「もちろんだよ。今までだってそうだったし」

「それは分かってる。俺が聞きたいのは地上に出た状態でついてくるのかということだ」

「別にいいんじゃないか?私も地上でお日様の光を浴びたいし、それに…」

「それに?」

「私と君が一緒にいる状態であの二人に鉢合わせたらどうなるのかを見てみたい」

「お前マジでぶっ飛ばすぞ」

結果は見えている。最悪の場合誰かの香典を用意、もしくは用意されることになる。

「冗談だよ。私は言葉通り陰ながら見守ってるからガンバ!」

そう言ってクロは影の中に潜っていった。親指を立てながら潜っていったのでI'll be back みたいになっていたのが何か腹立った。

いや、それはどうでもいい。こんなのは小さな問題だ。本題はこれから待っている。悠は一呼吸入れて扉を開けた。

「おはよ悠!!」

えがおのキミコがあらわれた!!

コマンド

たたかう

ぼうぎょ

まほう

どうぐ

にげる


…分かってる。こんな冗談でこの緊張がほどけるほどこの現実は優しくない。

「ところでさ悠。…さっきの幼女は誰」

先ほどまでの笑顔が一転、獲物を目にした蛇のような目つきになる。

「な…なんのことだ?」

「聞こえてきたのよ。女の子と話す悠の声が。それに姿も…いや何でもないわ」

公子は盗撮していることをギリギリで隠そうとしたが真実はほとんど明るみになった。

ここで悠の脳はこれまでの人生でいまだかつてないほどに回転する。この状況をどう解決するか。時間があればツイッターとかでアンケート形式で意見を求めるがそんな時間は無い。

ここは謝るか?いや何で?俺に何か非があるわけじゃないし。

ここで悠に稲妻が走る。

これしかない。

そう思った悠はすぐに行動に移る。

悠は公子に近づいて両腕を広げ、そのまま公子の背中に回す。

そして力強く、だけれども優しく公子を抱きしめた。

「ちょ…悠…それは……」

公子の驚きと恥ずかしさ、それと少しの喜びをミキサーで混ぜたような声が微かに聞こえる。

そして抱きしめてから数秒後。公子は膝から崩れ落ちた。

それを悠はしっかりと受け止めて家の中に運ぶ。

そして居間に横たわらせてそっと掛け布団を被せた。

「ご主人…プレイボーイだな…」

影の中から少し顔を出しクロが引き気味にそう茶化した。










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