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ギャルゲの主人公の名前と自分の名前が一緒だと何だか変な感じがする。

一尺は約38cm、一寸は約3.8cmみたいです

「とりあえず落ち着いたな」

悠は公子を自分の右側、香純を左側に置いて机を囲んで二人の様子を確認する。

この二人をこの配置にしたのは何かあった時に自分が止めることができるのと、少しでも二人の距離を遠くして事故を防ぐためだ。

「最初に確認する。お前たちは俺に好意を持っている、これは合っているか?」

悠はそう質問する。

我ながらとんでもない質問をしている。

「えっと…それはその……」

「あの…その……」

改めてそう聞くと何故か二人は恥ずかしがる。

いや、急に乙女を出すなよ。もう恋心どころか本性もはっきり確認できているのに。

「……タシカニ……」

後ろから謎の声が聞こえ、振り向くが誰もいない。

自分の影の中に沈んでいく何かが見えた気がしたが気のせいだろう。

いや本題に戻ろう。

「いや、自分で言うのもあれだけど好意を持たれてないとさっきの行動が説明できないからさ。教えてくれない?」

「うっ、うん。実は…」

先に口を開いたのは公子の方だった。

「うん……私もそうなんだ…」

それにつられるように香純も口を開く。

普通ならば何か反応をするべき場面なのだろうがもう知っているし恐らくこの後に来るであろう別の衝撃に備えるためにも軽く流そう。

「それでどうして二人は俺の家に凸してきたんだ?いや、そもそもどうやって俺の家を知った?公子はともかく香純は引きこもりで俺の住所を知るすべは持っていないはずだろ?」

「そ…それは……お母さんが…教えてくれたから…」

香純はそう恥ずかしそうに言う。

お母さん、とんでもないことをしてくれましたね。おおかたお礼をしたいだとか言われたから調べて教えたんでしょうけどその結果こんな修羅場が生まれましたよ。

「私は自分の手でしっかりと下調べして来たわよ」

公子はそう胸を張って言う。

いや威張るところじゃないだろ。ただのストーカー宣言だぞ。

まあ知ってはいたが。

「それでどうして凸してきたんだ?」

「それはこの女が悠の家に入っていくのが見えたから!!誰よこの女!!」

公子は先ほどまでの雰囲気から一転、逆上する。

このまま何かあってはいけないと思った悠は公子の服の裾を引っ張る。

すると公子はまんざらでもないのか先ほどまでの怖い表情から柔らかい優しさを感じさせる表情になる。

女って怖い。

「香純どうして俺の家に?」

悠がそう聞くと何かを思い出したのか手提げ袋の中から紙袋を取り出してそのまま悠に手渡す。

「これ……良かったら……」

そう言われ、悠は中身を改める。

まず出てきたのはクッキーの入った小さな袋。ややいびつな形や色を見るに恐らくは手作りなのだろう。いったんこれを机に置いて別のものを取り出す。

今度は透明なファイルで中に紙が入っている。なぜだか分からないが嫌な予感がする。

恐る恐る中身を確かめると自分の第六感は正しかったと思わされた。

「……これは?」

「あの……婚姻届けです……」

その一言に悠はため息をそして公子は声にならない何かを口から吐き出す。

「いや……その……私はまだ早いって言ったんですけど…お母さんが……」

香純はそう弁明する。

お母さん、またあんたか。

というよりこの1件全部あんたの計画かよ。

気持ちは分かるよ、あなたから見れば俺は引きこもりの我が子を救った男だもの。このまま距離を縮めてゴールインさせて楽したいよね。

でもそういうのにはしっかりと順序があるんだよ。原付の免許で飛行機運転しようとするくらい無謀なことをあなたは娘にさせているんだよ。

そう思っていると公子も何やらカバンから取り出す。この流れからして何となく分かっているが一応確認する。

「私だってずっと前から持ってるんだから!!」

「……お前もか…」

やはり婚姻届。

そしてたちが悪いことに彼女自身の欄は埋まっているのはもちろんのこと、証人の欄も埋まっている。

そしてその中で特筆して気になるのは彼女の字の稚拙さである。公子とは数年ぶりではあるものの、小学生のときに嫌というほど贈り物や手紙を受け取っているのでその字の上手い下手は分かっている。

この字は何と言うか小さい子が頑張って書いた字のようで彼女らしさというのを感じさせない。

ん?

……!?

ここで悠、そして影の存在のもう1匹は気づく。

「…お前、これいつ書いた」

「いつって、小学生のときよ。確か学年は……2年生だったかしら」

わーお、こりゃたまげた。

気が早いなんてもんじゃないだろこれ。

結婚するんだという考えを持つ人はいるだろうが婚姻届けを相手の欄以外を記入した状態にするというのはぶっ飛んでいる。というか証人の欄に公子と同じ苗字があるという事はもしかすると家族ぐるみだなこれ。

公子の場合は恐らく子供の遊びと思って書いたかもしれないし寧ろそうであって欲しいが香純に関してはもう確信犯であるだけに恐ろしい。

「とりあえずしまってくれ、話はそこからだ」

そう言って二人の婚姻届けをしまわせて話を再開する。

と言ってももうこの事件の真相はもう聞いたので今後の話となった。

「とりあえずあれだ、武器を持って来るのだけは無しだ。これに関してはそもそも法律が認めていない」

「法律なんて愛の力で…」

「愛は地球を救うが無法者は救わないんだ」

訳の分からないことを言う公子をそう一瞥する。

「それとストーキング行為もやめてくれ。いろいろと怖いから」

「それも禁止されたらこれから私はどうすればいいのよ‼」

「お前は法律と倫理観を学べ‼後は人の気持ちをおもんばかるということも‼」

「男の子は可愛い女の子にならストーキングされてもいいってこの前雑誌に載ってたんだけど…駄目?」

「駄目だ、大駄目だ」

それが仮にフィクションの世界ならばいいのだろうが実害が出る現実では話が別になる。というよりどんな雑誌にそんな謎情報が書いているのだろうか。

そして可愛い女の子というのには何の違和感も持たないのかと思ったそこの君、そんなことまで考えていたら多分5話辺りからついて来れなくなるぜ。

「とりあえずまとめだ。ストーキングは無し、危ないダメゼッタイ、みんな仲良く、報連相以上だ。解散‼」

悠はそう言って二人を外へと送り出そうとする。

しかしそれを拒むかのように香純が悠の袖をぎゅっと掴む。そしてそれを見た公子が般若のような形相となった。

「いいんですか…?公子さんを野放しにして…。仮にも……ナイフを持ってた人なんですよ?」

香純はごもっともな意見を述べる。

「まあ確かにそうなんだが…知り合いにましてや自分関連に縄付きを出したくないからな」

それにここでは言わなかったが彼女はヤンデレ、自分の言ったことは素直に聞いてくれるはずだろう。

「悠君……」

この言葉を信頼や優しさと捉えたのか公子の表情は和らいでうっとりとした眼でこちらを見る。

「ほら、分かったら今日は帰ってくれ。なんかいろいろと疲れてたんだ」

そう言って悠は再び二人を押して家から追い出す。

今度は二人は納得したようで何を訴えるでもなく公子は元気に、香純は控えめに手を振って帰って行った。

本当なら二人が争う可能性を考慮して送っていくべきなのだろうがそれをしてしまうと駄目な気がする。なんか家に連れ込まれてそのまま監禁というバッドエンドが見える。念の為に公子のナイフは預かっておいたのでキャットファイトにならない限りは命には問題ないはずだし、この時間は帰宅途中の学生や社会人がいる時間なのでそれもないだろう。

とりあえずもうこのことは忘れたい。忘れられないにしても今日だけは遠くに置いておきたい。

その後、悠は適当に食事を済ませて課題を軽く済ませてすぐに床に就く。時計の針は10を過ぎたころだが今日のことがずっと頭の中で反芻されて何にも手が付けられない。無駄な時間を過ごすよりかはこうして睡眠時間を確保した方がずっといい。

そういう考えで床に就いたが頭の中ではあの修羅場が何度もフラッシュバックし、結局眠れたのは日を跨いでからだった。

そして修羅場の次の日。

悠が目を覚ますと昨日の疲れからなのかやけに身体がだるかった。

それに変な体勢で寝たのか上半身が若干しびれていて痛みもある。

とりあえず朝食…の前に軽く運動でもするとしよう。外から差し込んでくる光からするにいつもよりも早い時間のはずだ。

悠は重い身体をゆっくりと持ち上げる。すると物理的な重さが途中でストンと落ちて身体が軽くなる。

な~んだ、おもりがのっかかってただけか。悠の気持ちも少し軽くなる。

一体何が、悠は布団をめくる。

「んんっ……、もう朝?」

それを見れば4尺2寸ばかりなるひといと美しゅうていたり。


公判へ続く。



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