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14 『報告とひと時の安寧』

序章で一旦フィナーレとなります。

ありがとうございました!

「……という形で、無事皆でダンジョンをクリアしてきました」


 レイはノアが市井で買ってきた食べ物を夜食に食べつつ、一連の出来事を聞いていた。


 面白そうにニヤニヤと笑いながら串焼きを平らげたレイは、ノアに串焼きの串を向けて尋ねた。


「で、その僧侶の子が気に入ったの? だから忠告した?」


「レイ……、分かっていて聞いているでしょう。私が忠誠を誓うのも、……貴方相手に不遜だとは思いますが、気に入っているのも、貴方だけと」


「あはは、ごめんごめん。まぁ、しなくていい殺しはしないのが一番だよ。せっかく皆を助けに行ったのに、殺さなきゃいけないなんてね。よくないよ」


 どこまで本気で言っているかわからないが、合同でのダンジョン攻略となれば魔法使いがいる事くらいは分かっていただろうに、とノアはため息を吐く。


 夜食を食べ終わって満足そうに手を拭くレイに近づいたノアは、長椅子の背凭れに手をついてレイに顔を近づけた。


「いつもの……お願いします」


「ふっふ……、いやぁ、もうこんなに大きくなったのにね」


 至極真面目な声でノアが強請ったのは、レイからの抱擁だった。


「今日もよく頑張ったね。無事に帰ってきてくれてよかった、私のノア」


「はい。……いつか、一緒に外に行きましょうね、レイ」


 褒めてもらうという名目で身体を寄せる。触れ合った体から、ノアはレイに『星の力』をある程度送り込めないかと画策していた。


 今のところ成功していない。ノアは、レイが本当は自分でやりたい事を、代わりにやっているだけだと知っている。


 『泥の血』として農奴に落とされる所を救ってくれた、レイの願いを叶えたい。


 だが、レイは龍穴の上でなければ老いるという。ここまで引き伸ばしてきたから、一気に老いるらしい。それでは意味がない。


 レイをこの場に縛り付けている身分と、身分があるからこそ出来てしまう荒技による若さと長生き。レイを、この姿のまま、外に連れ出したい。


 レイの望みは、いつしかノアの望みにもなっていた。


 その方法をいつも探っている。地脈に語りかけたこともある、あの人にも力を貸してくれないかと。


 地脈は応えない。ノアがレイにのみ忠誠を誓うように、地脈はノアにのみ力を貸してくれている。


 しばらく抱き締めて、やはり無理だったとほろ苦く笑って身体を離す。


 まだ暫くは彼の言う通りに動こう。レイをいつか連れ出す方法をさがしながら、ノアはこの先も王の影として各地で問題を解決していく。


「レイブンって鴉って意味ですよね」


「そうだよ?」


「しぶとく生きてください。私は貴方のそばに、まだまだいたい。仕えたい」


「あはは! いいよ、頑張るから……また、外の事を教えて」


「はい」


 おやすみなさい、と告げてノアはレイの部屋を後にした。


 自分がレイに依存していることは分かっている。『泥の血』である事も、まだどこかで恥じている。


 レイを外に連れだせたら、少しは自立できるだろうかと、ノアは自問自答しながら、自室に戻った。


 次はどこを見てくればいいだろう。


 そんな事を考えながら、着替えて寝台で目を閉じる。


 夢は見なかった。

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