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羊は甘いお菓子に酔うぴえん

今回の作品はページ数が短いです。

 そいつは白いもこもこの毛に包まれて金の角を持っていた。

 そして潤んだつぶらな瞳。

 二本足で立っている。


「へっ?」


 パチパチと爆ぜる焚き火の火に照らされて現れたのは……


 羊だった。

 そいつはゆっくり歩いてくる。

 私を見ていない。

 地面に転がったお菓子を見ていた。


「ぴえん……」


 涎を垂らしてそいつは泣いた。


「えっと……お菓子食べたいの?」


 私は羊に尋ねた。

 こくりと羊は頷く。

 鈴花は袋を拾い、クッキーを羊に差し出した。

 羊はクッキーを嬉しそうに見ていたが、おずおずと口に運ぶ。


 ポリポリ


 羊はクッキーを美味しそうに食べた。


「もう一枚食べる?」


 羊は嬉しそうに差し出されたクッキーに手を伸ばす。


 ポリポリ


 ああ……可愛い~~~~❤

 なんて美味しそうにクッキーを食べるんだろう。

 ああ……口のはたにクッキーのカスが付いてる。

 もう一枚、もう一枚、もう一枚。

 鈴花は羊にクッキーを与え続けた。


 はっ‼ しまった‼ 


 クッキーがもうない‼


「ごめんね。クッキーもう無いんだ」


 鈴花は空になった袋を逆さに振りクッキーがもう無いことを教える。

 羊はつぶらな瞳で鈴花を見つめる。


「あなたは魔獣なの?」


 羊は首を振る。

 確かに羊は魔獣と言うより……

 ぬいぐるみと言う感じだ。

 潤んだ瞳。

 もこもこの白い毛腕と足には毛が生えていない。

 角と蹄は金色だ。


「あれ? あなた尻尾が取れかかっている?」


 羊の尻尾は取れかかっていた。

 鈴花は裁縫箱を拾い中を開けて、針と糸を取り出す。

 異世界には魔道具と言うものがあって、この羊も魔道具なのかしらと鈴花は思った。

 ロボットのような物?

 でもクッキーを食べていたから人工生命体?

 ホムンクルスみたいなものかな?

 黄色いぬいぐるみのクマみたいなものかな?

 謎原理で動いている?


「縫ってあげる。痛かったら言ってね。止めるから」


 鈴花は羊の尻尾を繕った。

 さすが手芸箱‼ 綺麗に縫えたと鈴花は心の中で自画自賛する。


「はい。出来た」


 鈴花がそう言った瞬間、羊の胸が光り輝き紋章が現れた。

 その紋章は鈴鹿の左手に移るとスッと消えてる。


「えっ? なになに? どうなったの?」


 鈴花は自分の左手のこうをまじまじと見たりごしごしと摩ったりする。

 左手は何事も無かったように、赤く爛れても腫れていなかった。


聖鎧セイント・アーマーとの契約はここに成れり】


 鈴鹿の頭の中に女の声が響いた。


「えっ? 聖鎧セイント・アーマー? はあぁぁ? 契約?」


 鈴花はもこもこ羊を見る。

 羊はニッパ~~と笑いながら鈴鹿の肩をポンポンと叩く。


『おいら聖鎧セイント・アーマー名前はご主人様が付けてくれぴえん』


「契約って……私はあなたの尻尾を縫っただけよ……」


『それが契約の儀式だぴえん』


 鈴花は頭を抱えた。

 ただ尻尾を縫っただけなのに。

 鈴花はこの羊と契約してしまったらしい。


「えっ? あなた喋っているの?」


 はっと気が付くと羊は普通に喋っている。


『契約すると喋れるようになるぴえん』


「へ~~そうなんだ~~凄いね~~」


 鈴花は現実逃避に入った。


『ご主人様おいらに名前を付けてくれぴえん』


「えっと……名前?」


『そうおいらにピッタリの強くてカッコイイ名前だぴえん』


「じゃ……ぴえんで……」


『それはカッコ良くない‼ 別の名を要求するぴえん』


 あ……なんか面倒くさい性格なんだ。


「じゃ……スリープで」


『スリープ‼ スリープか‼ ご主人様の国の言葉か‼ 意味は分からんが何かカッコイイ名前だなぴえん』


 スリープと名付けられたもこもこ羊はぴよんぴょんと跳ね回る。

 鈴花の頭には【ラム肉】や【ジンギスカン】と言う名前も浮かんだが言わないでおいた。

 鈴花は地面に転がっている物をリュクに入れた。

 ハサミは護身用に出しておいた。

 カバーが付いているからスカートに挟んでおけば大丈夫かな?


『今日の所は疲れているだろ。おいらが見張りをしてやるからご主人様は寝ると良いぴえん』


 スリープが元気にそう言った。


「え~~スリープばかり寝ずの番をさせるのは悪いよ~~順番に寝よう」


『大丈夫。おいらにまかしておけ』


 スリープはドンと胸を叩いた。


「そ……そう、じゃお言葉に甘えて寝ようかな……」


 正直鈴花は疲れていた。

 よく分からない世界に飛ばされて、良く分からない生き物と出会って。

 鈴花は直ぐに寝息をたてた。

 自分でもよく地面の上で寝れたと後で驚いた。

 スリープは鈴花の顔を覗き込んでいたが、焚き火に木をほり込むとその側に座る。

 そして夜空を見上げた。

 その瞳は何処か悲し気で切なげだった。




 ~~~~~*~~~~~*~~~~~



 何処かで小鳥が鳴いている。

 鈴花はゆっくりと瞼を開けた。

 自分の部屋でも自分のベッドの中でもなかった。

 鈴花はため息をつく。

 昨日の事は夢では無いらしい。

 起き上がり、辺りを見渡す。

 焚き火の火は消えていた。

 スリープは焚き火の側にいた。

 その名の通りスリープしている。

 鈴花は笑う。

 まあ、この羊に期待していた理由わけでは無いが。

 スリープ自体お腹を空かせて疲れていたようだし怒れないと思った。

 鈴花は羊の肩を揺らす。


「起きて、スリープ朝だよ」


『うおぉぉぉぉ‼』


 スリープはびっくりして飛び起きる。

 そして慌てて辺りを見渡し、鈴花と目が合った。


『おいら寝ていた理由わけじゃないぞぴえん‼』


「うん。そうだねスリープはちゃんと起きていて、私を守ってくれていたんだよね」


 鈴花はにっこりと微笑む。


『ごめんなさい。寝てましたぴえん』


 スリープは土下座をして謝る。


「いいのよ。スリープだって疲れていたんでしょう」


『お……おいらは鍛えているから大丈夫だぴえん』


「鍛えているの? 本当かな?」


『おいらの上腕二頭筋を見てくれぴえん』


「ほ~~どれどれ~~~」


 鈴花はスリープの腕を触ると見せかけて腹に触った。


『うひゃひや~~~‼ やめれ~~‼ おいらの腹に触るな~~ぴえん~~~‼』


「うへへへへ~~このぷにぷに感がたまんね~~~よいではないか~~よいではないか~~減るもんじゃないし~~~」


 完全に中年のおっさんのセクハラである。

 辺り一面に羊の鳴き声と鈴花の下品な笑い声が木霊する。








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  2020/8/29 『小説家になろう』 どんC

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