友達だぴえん
その夜鈴花は買ってきた靴下を切ってスリープのレッグウォーマーを作った。
長さも丁度よく、雪が降った時など、暖かいだろう。
買ってきた厚めの布でスリープのポーチを作り、スリープにかけさせ、紐を調整する。
『ふんふん♪ ふんふん♪』
スリープはとても気に入ってクルクル回る。
ぬいぐるみの様でとても可愛らしい。
ズボンの裾を切った布でスリープ用の財布を作り幾ばくかの銀貨と銅貨を入れる。
それをスリープのポーチに入れ。
「屋台で欲しい物を買えばいいわ」
『串焼き♪ 串焼き♪ 串焼きだぴえん』
あの屋台の串焼きがとても気に入ったみたいだ。
うん。美味しかったもんね。
「そうね。また食べましょう」
鈴花はそう言うと今度は下着とエプロンを縫う。
エプロンはフリルのあるやつと、フリルなしのジャンバースカートタイプだ。
縫物は得意だが、何だか以前にも増してミシン並みに早く正確に縫える。
スキルでも得たのだろうか?
そう言えば、異世界に来た男の子は自分のスキルを最初にチェックするけど。
==== ○○○○のスキルを修得しました ===
何て声は聞こえてこなかった。
ただ手の甲が光っただけだ。
だからすっかり忘れていた。
鈴花は声に出して言ってみた。
「ステータ・スオープン」
そこでお湯を運んできたギルド嬢とバッチリ目が合ってしまった。
鈴花の頬が真っ赤になる。
は……恥ずかしい~~~~
「ノックしたんですけど、何やら夢中で……ここにお湯を置いときますね」
互いに目をそらし、マジョリーナはテーブルの上に洗面器と手拭いを置く。
「あら? これは……下着ですか?」
ベッドやらテーブルに塗ったものが散乱している。
「あの……なんか気に入ったのが無くて、自分で縫ったんです」
パンツはゴムが無いから紐で縛るけど。
「凄く上手ですね」
マジョリーナは下着やエプロンを手に取る。
同性とは言えあまりジロジロ見れてたくない。
スリープがマジョリーナのスカートをツンツンと引っ張る。
マジョリーナがスリープを見ると、もこもこ羊はドヤ顔でポーチを見せびらかした。
「まあ、それも作って貰ったの。凄いわね」
スリープは嬉し気に飛び跳ねる。
もこもこ羊を見ながら二人はほっこりする。
はっとマジョリーナは気付き鈴花に尋ねる。
「あ……所で明日のクエストを受けられますか?」
「そうですね。薬草詰みにでも行ってみようと思います。1ヶ月ぐらいはここに滞在するつもりです」
「そうですか。では近場で手ごろなのを探しておきますね」
マジョリーナはニコニコ顔でそう答える。
「あの……私が連れて帰った三人の葬儀に出てくれと誘われたんですが。葬儀は何処でやっているんですか?」
「葬儀は町の外れの共同墓地であります。青色ゴブリンの討伐と神官様が帰って来られるのが2・3日後なので葬儀が遅れてしまうんです。場所が分からないのならポーに案内させましょうか? 結構入り組んだところにあるんですよ」
「あ、はい。またポー君に頼めますか」
「手配しときますね」
「それから……何か持って行って方がいいかしら? お酒とかお花とか」
「そうですね。彼らは葬儀の後『金の鳥亭』で飲みます。お酒を飲んで騒いで、故人を忍ぶのが冒険者の習わしです」
「そうなんですか。それではそのお店でお酒を注文しましょう」
「それがよろしいでしょう。では私はこれで失礼します」
「はい。ありがとうございます」
マジョリーナはそう言うと部屋から出ていった。
『ここのギルドの受付嬢は優しいぴえん』
スリープはベッドに腰掛けて足をプラプラさせながら、そう言った。
「そうね。とても親切ね」
鈴花は裁縫箱やエプロンを【アイテムボックス】にしまった。
代わりに寝間着を出す。
「ねえスリープ、貴方は箱の中に200年間閉じ込められていたのよね~~」
『そうだよぴえん』
「でも、国が滅びたことを知っていたわね。誰から聞いたの?」
『おいらお友達がいるぴえん』
「お友達?」
ぼっちじゃないのか?
『100年ぐらいたった時、おいらもうこのまま死ぬんだと思ったぴえん。その時風の妖精が声をかけてくれたぴえん』
「風の妖精さんがお友達になってくれたんだ」
スリープは頷き、花のように笑い楽しげにその友人(妖精)の話を始める。
~~~*~~~~*~~~~
___ お前何しているんだ? 箱の中で。かくれんぼか? ___
不意に子供の声が聞こえた。
でもその声は頭の中に直接語りかけて来るようだった。
『おいらご主人様が来ないと、この箱の中から出られないんだ』
___ ご主人様? それって美味いのか? ___
『ご主人様は食べ物じゃないぴえん』
___ ならなんだ? ___
『ご主人様はおいらの大切な人だぴえん』
___ 人? 人間か? 下らない ___
『くだらなくないぴえん‼』
___ くだらないだろう。この間も戦をして大勢死んだ ___
『ご主人様はおいらと一緒に【魔王】を倒しに行くんだぴえん』
___ 魔王? お前は何を言っているんだ? 魔王はとうの昔に倒されたぞ ___
『え~~~? 倒された? うっ……噓だぴえん』
___ 噓なもんか。炎の妖精の俺が噓をつく必要が無いだろう ___
『なら、だれが倒したんだぴえん』
___ 12人の勇者と聖鎧だよ ___
『12人の勇者と聖鎧? う……噓だぴえん。おいら以外に聖鎧は存在しないぴえん』
___ 何言っているんだ聖鎧はネズミ・牛・トラ・うさぎ・龍・蛇・馬・猿・とり・いぬ・猪・猫だ。羊何ていない ___
___ それに100年も前の事で龍の聖鎧のエルフの賢者しか生きていないわ ___
炎の妖精とは違う別の声がする。
後で知ったのだが、水の妖精だった。
『そ……そんな……』
___ お前が吞気に箱の中で主を待っているうちに世の中は移ろう物よ ___
風の妖精もいつの間にか来ていた。
___ 君は僕と同じで、お寝坊さんだね ___
のんびりと欠伸をかみ殺して土の妖精が言う。
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2020/9/30 『小説家になろう』 どんC
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