タクシー男と失恋女
「何処でもいいのでどっか行って下さい」
「じゃあ俺ん所来いよ」
最悪…十年ちかく付き合ってたのに、私はアイツの浮気相手か…。
しかもアイツは結婚する。たしかできちゃった婚。私が子供できたときは、「金が無いから中絶してくれ。悪い、ちゃんとしてからにしようぜ」って言ってたじゃない…マジ最悪。アイツのためにいくら金使ったんだろう…。ブランドの財布、ブランドのベルト、ブランドの…アイツがねだるから、甘い私はついつい買ってしまって今思えば新品のブランド品は高く売れるんだろうな…。
私がアイツの呼び出しで、会社を早退してアイツの家に行ったらアイツの本命からはビンタされるし…。思い出すだけで右の頬が痛む。
どこでもいい、どこか身体も心も休まる場所に行きたい。
その思いで停めた一台のタクシーに私は乗り込んだ。
「何処でもいいのでどっか行って下さい」
そしてしばらくの間無言で走っていた。運転手はまだ若いと見た。だって加齢臭がしないもん。ちらっと見えた髪は茶色、アイツも茶色だったな…思い出したくなんかないのに思い出してしまう。
「はぁ〜」
つくづく私って男運ないんだなぁ。なんて考えていた時、運転手が、
「…で、何処行きたいんだっけ?」
「何処でもいいのでどっか行って下さい」
「…ふーん」
もしかしたらタクシーに乗った時から始まってたのかもしてない…。
「じゃあ俺ん所来いよ」
この恋は…――
原案ではもう少し短かったんですけど、なんか微妙になったかもしれません。
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