やっぱユリちゃんはガードが固いわ。
ユキシロ視点です。
姫津百合也の周囲からの評価は、ちょっと残念な美形言う感じやろか?
サラサラの黒髪。スラリとした体型。漆黒の深い瞳。シュッとした顔立の美形。
成績優秀。スポーツもそこそこ。
護身術として古武術と合気道、そしてキックボクシングまで嗜んどるらしい。
所謂、文武両道言うやつやろか?
女の子にはにこやかで親切。とても優しゅうて、かなり人気がある王子サマ的な存在。
その反面、男には割と手厳しい。特に、イキったような連中には。まぁ、大人しい男子達には、割と人気あるらしいけど。
せやのに、部活には入っとらん上、入る気ぃも無いクセに、体育が無い日でも、なぜかいつも年中ジャージ着とる変わりもん。曰く、「ジャージなら汚しても叱られないからな」らしい。
更には、かなりエエ性格をしとって・・・
妹ンことなると人格が変わる言うんか、途端に心が狭くなるらしく、妹にちょっかい掛けようする男には先輩だろうが後輩だろうが、威嚇して・・・特に、不良連中などには威嚇だけでは済まないようなことになる、だとか。服汚すようなことしたりしとるんやろなぁ・・・
現に、空手の赤帯持っとる俺に、それを知っとって、「決闘も辞さない覚悟だ」と宣言するし・・・妹ちゃんに妙な絡み方しとったあの後輩君にも、躊躇い無く飛び蹴りかましとったしな。ユリちゃんが大分喧嘩慣れしとるんがよう判ったわ。
通称、『姫百合の騎士』で・・・名前からのもじりやろけど、女子にめっちゃ人気がある。まぁ、ユリちゃんは女子に優しいけど、あんまり興味は無さそうやね。めっちゃシスコンやし。妹ちゃんだけ、な感じやろか?
昨日や今朝のやり取り見とったら、ほんにユリちゃんが、妹のウイちゃんを大事にしとるんがよう判るわ。
まぁ、あない美人で可愛らし妹が居ったら、そりゃあ気が気で無いやろうけど・・・
休み時間なっても、さっきユリちゃんと俺にへこまされた高輝が呆けたままなん放置して、ユリちゃんの席へ向かう。と、ユリちゃんが嬉しそうな顔でスマホを弄っとった。
去年までは見られんかった顔やね。
あの、俺とはタイプの違う可愛らし幼馴染の子ぉにも優しい顔しとったけど・・・
「妹ちゃんから連絡ですかぁ? 百合也様」
にっこりと笑顔で尋ねると、ユリちゃんの眉が嫌そうに寄った。
「いいなぁ♪ものすっごく羨ましいです! 百合也様っ、いい加減ユキにも百合也様のアドレスや電話番号、その他諸々教えてくださいよぉ♥」
俺の猫被り言動プラスおねだりに、ユリちゃんがその表情を更に嫌そうに歪める。
なにを隠そう、ユリちゃんは知り合ってから一年以上、何度頼んでも頑なに、俺と高輝にアドレスを教えてくれへん。
つか、ユリちゃんのアドレス知っとる奴がクラスメイトにも居らんらしいから、誰にも教えとらんのかもしれんけど。
「断る」
そして、相変わらずのつれないお答え。
「いいじゃないですかぁ? 教えたって別に減るものじゃないですしぃ」
「減るから嫌だ」
「・・・」
減るものじゃないから教えて言うたら、即座に減るから嫌だという返答。なかなかやるわ。
「なにが減るんですかぁ? 教えてくださいよ、百合也様!」
ぷぅと頬を膨らませてユリちゃんを見やる。
「時間とかだな」
「時間?」
「ああ。わたしはな、学校以外で君らに係らっていたくなどない。そんなことをしたら、羽唯と過ごす時間が減ってしまうではないか」
なんともユリちゃんらしいお答え。手厳しいわ。でも、君らと、俺と高輝を一括り扱いされンのは、かなり嫌やわ。
「高輝サマとユキを一括りにしないでくださいよ! なんなら、百合也様の連絡先は高輝サマには内緒にしますから。ユキにだけ、こっそり教えてくれませんかぁ? お願いしますっ、百合也様♥」
「断る」
「高輝サマには、絶対教えませんから!」
胸を張って言う。これはホンマ。高輝にユリちゃんのアドレスを教えるつもりは端っから無い。多分、自慢はするやろうけど・・・いや、それはそれで高輝がめんどいか。
「しつこいぞ。影井」
「相変わらず手強いですね、百合也様は!」
「くどい」
「ユキは百合也様と、もっとも~っと仲良しさんになりたいだけなのにぃ・・・」
しょんぼりとユリちゃんを伺う。が、ユリちゃんは面倒そうな表情を変えない。ホンマ手強いわ。
「どうしたらユキに教えてくれるんですか?」
「・・・そうだな。では、着信拒否。連絡無視。既読スルー。または、既読すら付かなくても文句を言わないと約束するならば、一考しなくもない」
「思うたより扱い酷ない?」
しかも、そこまでの約束をしとって、一考するだけ。なんやろうなユリちゃんは。
「素が出ているぞ? 影井」
あかん。猫を装着し直す。
「酷いですよ! なんでユキにそんなイジワル言うんですか? 百合也様は」
「羽唯に近寄るなと言っているだろうが」
ギロリと鈍く光る漆黒の瞳。
まぁ、ウイちゃんと仲良うしたい思とんのは本当なんやけど・・・
「ユキは百合也様とも仲良くしたいのに・・・」
「わたしとも、なのだろう?」
ふっ、とユリちゃんは鼻で笑う。
これは、全く信じてない顔やね。
「わたしはな、影井。土御門の女子避けに利用されるのは然程構わんが、羽唯に近付く為の出汁には、絶対使われてやらん」
やっぱユリちゃんはガード固いわ。
なんてやり取りをしとるうちに、授業開始のベルが鳴ってもうた。
まぁ、ユリちゃんがウイちゃんのことであそこまで警戒するんはしゃあないことやけど・・・
読んでくださり、ありがとうございました。
ユリヤの塩対応にもめげない倖白でした。
関西弁、おかしくないですかね?




