青豚
度々、俺ガイル、よう実の主人公と比較される。はっきり明暗を分けたが全く種類が違う。この作者の限界を感じる。おそらく前者2つは作者が客観的視点で作ってる。その点どこかこの作品は重なる部分があるのじゃないか?と思う部分がある。俺ガイルの作者は、八幡に批判的視点を持ってる。度々インタビューでそれが出てくる。よう実はみりゃすぐ分かる。
ようはキャラクターとして作り上げただけで自身の代弁者ではない。もちろんそれを是正するのが2期俺ガイルの流れになる。よう実は多分娯楽として割り切ってる。あれが代弁者なら犯罪者だ。典型的なサイコパス主人公、だが今までと一線を画するのが、ありきたりな裏の顔じゃない点。見ればスグデスノートに近いのが分かる。理屈っぽいだけならラスリーニコフの系譜だが、ラスリーニコフは裏の顔ほどの演技者じゃない。
ライトとどこが違うか?と言うと一言では言えない。ライトは自己中心的過ぎる裏の顔に合わせて表の顔がトラブルの火種を作ってしまう。それを創作上の嘘ですべて完璧にこなしてしまうのがよう実の主人公だと思えば良い。書けば書くほど虚構の人物。ただだからリアルさが無いか?なら多分本質的には全く無いだろう。
だがリアリティはある、その主人公の華麗なる表と裏のギャップが面白いからだ。
それ自体が重要じゃない。キャラクターとして作り上げるって点で弱い。一見似ているが根本の部分で作り方が全く違うのと、そもそもこの作者には無理なんじゃないか?と思ってしまう。根本的な設計図がこの作者の作品に共通した部分があり、その中でも珍しいタイプだったので、今の流行に乗ってる部分があると思わせた。
だが突き抜けるようなものは無かった。その正体が、根本的に刺激のあるキャラクターを創ろうという感じじゃない。ただだから面白くないとはならない。この部分が逆に良い部分もある。アニメには向いてる人だと思う。その証拠によう実はラノベでは売れてるがアニメじゃさほど評価が高くない。
その点キャラクター過ぎない俺ガイルは良い線言ってるんだと思う。彼らに似たキーは、他者との距離感にある。ただよう実は話方だけで、外面は人あたりが良い。そこは2面性をもってるからで、人と距離を作る方が本物で、話してみたら案外人当たりが良いって方が虚像という複雑な人間性を持っている。
彼らを陰キャとして括る人も多いが、それはちと違うと思う。ただたんに陰気クサイ主人公ではない。話し方がまず最大の特徴無感情。女性キャラなら綾波レイ、長門の系譜になる。だが彼女達は感情はそれなりにあるのがすぐ分かる。根本的にその起伏を出さない。冷静キャラってのがキーかと思う。
よう実はシンプル、サイコパスと根本的に違うのはサイコパスは自分については感情豊かだ。他者へのポジティブな感情が欠如してるだけで。自己中心的な感情が理性的な言動になるだけで、根本的によう実は目的ってやつに機械的過ぎる。おそらく意図的に創っている。AIに近いとしてイメージしてつくってて、その後の展開でそれを説明するのだろうと見ている。
俺ガイルは一言で言えばひねくれてる。だがそのひねくれてる部分を創作的に作って面白さにしたって点で2期はすごく上手いと思う。ひねくれかたが嫌な捻くれたじゃない。ひねくれた人じゃない人にも共感を誘うような作りにしてある。そこは作者が客観的に作り上げたキャラクターってのが良い方向に出ている。
そしてこの主人公は、普通すぎる。単に経験上いろいろあって人と距離をとるようになっただけで、今回のテーマ空気ってやつに惑わされない友人とはごく普通に付き合っている。彼の口調はなら何故?だが、あれは特に重要じゃないだろう。単にキャラ付けに過ぎないと見ている。そのキャラ付けが、ヒット作の共通点と一致したのが曲者なのだが…。
ようするにこれはボッチ系と言うものなのだが、この主人公だけは異質だと思う。内面から持ってるものじゃなくて、噂によって作られた空気で孤立してしまっただけで、自分から距離をとったわけじゃない。俺ガイルもきっかけはあったが、明らかに根本的にひねくれてる。俺ガイルは、部活動によってボッチ系馬鹿馬鹿しいとなってるが、それは違う。
東山さん演じるキャラはなんとも言えないが、ユキノンは孤立している部分がある。その2人が繋がったって点で、その流れも桜島先輩との流れに良く似ている。良く似てるが、芸能活動してて社交性もある桜島先輩とユキノンが同じわけが無い。構図だけはそっくりだが全くこの2作品は違うんだ。
おもしろいのは、よう実も裏の顔をもった女子生徒が出てくる。後で分かるが主人公と対比した関係があり、もう1人のヒロインはしっかり孤立している。こっちはユキノンとよく似ている。根本的に違うのは本人の性格上の問題じゃなくて、おかれた立場で櫻島先輩は孤立してるだけになる。主人公も同様。
主人公の場合キャラ付けと、周囲の状況に合わせた結果あの形の態度に落ち着いただけだと思われる。3話を見る限りとても普通の主人公。まさに似非ボッチ主人公だ。それが駄目だと書いてるわけじゃない。根本的に流行に乗れてないのじゃなくて、キャラクターとして尖がったものを創ろうとしてない。
さくら荘においてヒロインが尖がったキャラクターとして作って在るが、案外作者との性別の違いは大きい。書きにくいものだと一から突き放して書いてしまうものだ。ジャストビコーズは途中できってしまったが、そこでのヒロインの描き方を見ていると明らかにラノベ用にとんがったキャラクターを作り上げたのが分かる。
これを主人公で作ってない。それが間違いなくアニメの視聴者には良い面もあるが、尖がった強い刺激を求める層にはこれはこの人はおそらく限界を持ってると思う。俺ガイルの様にそれを凡庸さや普通さで逆に上手く後から取り込めた上手さもあるのか?も疑わしいし。そもそも俺ガイルはそれほど虚構してない。
その点よう実はさすがエロゲ作者だなと思わせる。虚構の尖がったキャラとして割り切ってる。ある意味ファンタジー。ただエロゲの限界はエロゲの作者は全般的にSFに基盤がある。よう実も所々でる伏線っぽい幼少期がそういう風に見える。要するにファンタジーを作るための世界観が古い。
限界と言う点では皆限界を感じる。俺ガイル以外さっぱりヒットし無いも分かる人だし。たださくら荘の限界は早すぎる限界と言う奴になる。ただ創っていれば当たる事もある運ゲーの業界なので才能の一言で片付けたくないけど。悪い作者じゃなくて、尖がったものじゃなくて、もっと普通のものを求める視聴者が増えた昨今では明らかに良質な実写じゃお目にかかれない非現実的な青春ドラマなのだが。