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漂流から始まる異世界暮らし  作者: 今井孔子
シークレットトリプル
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王国潜入12日目

スピカとの作戦会議をした翌日、時刻は10時半、場所は食堂、いつもは11時にアスティーと待ち合わせをして、昼食を一緒に食べるのだが、俺は清掃を普段より早く始めて食堂に普段より30分程早く来ていた。

やはり食堂には殆ど人がいない。

当然、どの部署もこの時間は仕事中だ。

俺を見るなり食堂のおばちゃんに声をかけられる。


「早いね、ひょっとしてさぼりかい?」


「違うよ。今日は早く目が覚めたから、仕事を普段より早く始めたんだ」


「早く目が覚めたって、あんたは年寄りかい」


「そうかも知れない。なんかこの世界に来て寿命が縮んだ気がするよ」


何度死にかけたことか。心臓に悪い。

異世界に来てからというものの平和な暮らしが殆ど出来ていない。

いや、清掃員として充実した生活を送る今こそ平和なのではないだろうか。

このまま清掃員としてここで働くのもアリだなと思ってしまう。

食堂のおばちゃんは俺に呆れながら言う。


「若いのが何バカな事言ってんのさ。若いうちにしか出来ないことはたくさんあるだから、未練の無いようにするんだよ」


俺、未練残して溺死するところだったんだけどな。

そんな他愛もない話をする。

しかしあまり長時間話していては本題に入る前に昼食時となりおばちゃんも話している余裕が無くなるし、アスティーも来てしまうので俺はなるべく自然に効く。


「ここってお持ち帰りとかってやってるの?」


「原則お持ち帰り不可ってここに書いてあるじゃないの」


「そうだよね〜。でも原則って事は例外ってあったりするの?」


「2時と10時頃にな、残り物をまとめて持ってく人ならおるけどな〜そんな事知ってどうするん?」


「ただの興味本位だよ。ありがとなおばちゃん。B定食頼むわ」


程なくしてアスティーが来たので俺たちは同じ机に座って昼食を一緒に食べる。


「 そう言えばアスティーはなんで清掃員に?王国の仕事なら料理人とか倉庫の整理とか色々あっただろうに」


王国の清掃員はノルマさえ達成すれば、残り時間を自由に使えるので、労働時間は比較的短いものの清掃員は男性ばかりで、俺の知る限り女性はアスティーのみだ。

周りが男性ばかりだと幾ら個人作業とは言えやりづらいだろうに。


「自由時間が多いのが理由かな」


「言いにくいことなら言わなくていいけど、自由時間は何をしてるんだ?」


「その〜……内職を」


「アスティーってそんなに金に困ってるの?」


「お恥ずかしながら借金が有りまして、それの返済に」


借金とはかなり以外だ。

あのアスティーが返済に苦しむ程の借金を抱えるなんて……一体何をしたんだろうか。


それから午後はいつもどおり清掃をし、夕食も食堂でアスティーと食べた。

夕食を終え部屋に戻って来た俺は、早速スピカに頼む。


「10時頃食堂にお持ち帰りをする奴が現れるはずなんだ。化けて尾行してくれないか?」


「そう言うだろうと思ったよ〜。私も食堂で話、聞いてたからね〜。分かったよ〜」


そう言うとスピカは鳥から蚊になった。

小さくて素早い生物ということからの選択だろう。


「スピカのそれ便利だよな」


「でしょ〜この姿なら翔也の体を隅々まで調べる事だってできるね〜」


「スピカなら別に構わないぞ」


「返答が翔也らしい〜普通そこは顔を赤くして『やめろ!』とか言うんじゃないの〜」


「いや、男なんてこんなもんだと思うぞ」


そしてスピカは部屋を出て食堂に向かった。

蚊となると潰されるリスクがあるので、スピカが帰ってくるまで気が気でなかった。

11時頃、スピカが尾行から帰って来た。


「で、成果は?」


「尾行した男なんだけどね〜見事大当たり〜持っていった食料は囚人の物だったよ〜そして場所も分かったよ〜」


「じゃあ隙をついて、牢屋を俺の魔法で壊せば」


「囚人は逃げられるね〜でもね私が見た牢屋にはね〜裏ギルドのメンバーはいなかったんだよ〜」


「別の場所に囚われてるって事か!?」


「そうなるね〜または殺されちゃったか〜」


「……まじかよ」


その可能性は俺も薄々考えてはいた。

でも考えたくなかったからその可能性に俺は蓋をしていたのだ。

しかしスピカに改めて言われ俺はその可能性にしっかりと向き合わなければならなくなった。

そして俺は覚悟を決めて言う。


「王国での処刑記録を調べよう」


「驚いたよ〜翔也からそれを提案するとはね〜まぁ分かったよ〜明日も蚊になって私は牢屋の付近にあると思う処刑場を探して見るから〜翔也は処刑者に関する聞き込み調査をお願いね〜」


「分かった。でも聞き込み調査って誰に効くんだ?」


「そんなの王国の兵士の階級の高い人に〜決まってるじゃ〜ん。スパイだって怪しまれないように訊くのね〜」


「それって胸元にバッジのある奴とかか……なんか階級の高いやつらって怖そうだからいやだな」


そしてこの日はスピカが夜遅くまで尾行をしてくれたこともあり普段より少し遅い2時に就寝となった。





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