異世界で値段交渉をする男
この中世ヨーロッパのような街並み、そして武装する人、もしかしてここってアニメとかラノベで見る
「異世界じゃね」
そう呟くと俺の隣を歩く文香は言った
「異世界転移キター!ヤバくない!これ夢じゃないよね!ひょっとして魔導師とかいるの?ギルドとかあるのかな!」
興奮し自我を見失っている彼女はとりあえず放っておこう。
でも凄いなまさか異世界転移をするとは。それに見る限りこの世界の人間は何故が日本語を話すという親切設計だし、貨幣も日本と同じ単位だ。
けど日本ではない。
一体ここは……
「翔也、異世界来たんだしまず、仕事探しよ」
唐突だなと思いつつもそれもそうだと思いとりあえず近くの店の店主にハローワークの場所を尋ねることにした。
「いらっしゃい」
「あの一つお尋ねしたいことがあるんですけど」
「いらっしゃい」
「あの……」
「いらっしゃい」
「物々交換でもいいですか」
「物によるけど」
すると店主は店の外にいる文香を見て
「外で待ってる女は知り合い?付けてる髪飾り譲ってくれないか、1万、いや3万出す」
俺は一旦店の外に出て文香に話しかける
「お前の髪飾りここの店主が3万で買うって言ってるんだが大丈夫か」
「これそんなに高いものじゃないし、こんなもので3万貰えるなら喜んであげるわよ。あ、でも私のものを売るんだから3万は勿論全部私のものよ」
こいつ店主に話しかけたのは俺なのに1円も俺には渡さないとか、鬼かよ。
俺は店に戻り店主に言う
「分かった、そこの女の髪飾り売るよ。
でもなー3万は安すぎる。10万でどうだ?」
「兄ちゃん、それは高過ぎる。常識を考えな。
まー4万までなら出せるかな」
「10万だ」
「無理だ、4万」
「10万」
「4万」
「帰るか」
「わ、分かった5万でどうだ」
「もう一声!」
「……6万」
「ん?」
「7万それが限界だ。頼む。」
「まあ聞きたいことあるし仕方ない。それで手を打ってやるよ。」
そしてハローワークの場所を教えてもらい7万を手にした俺は文香に全額と言って3万を渡した。
それから俺たちはハローワークで仕事を探す。
倉庫の整理。9時〜17時。昼休憩あり。日給7千円
「これが無難じゃないか?」
「はーふざけてんの?なんで異世界来たのにそんなつまらない仕事しなくちゃならないのよ。
せっかく異世界来たんだからこれに応募するの!」
そう言って文香が看板に指を指す。
【ギルメン募集。君も魔獣を討伐して英雄になろう!】
「アホか!魔獣討伐なんて命がいくつあっても足りないわ!異世界で最強になって無双するアニメとかあるけどな、実際今、俺たち戦闘力一般人じゃねーかよ。」
すると文香は不機嫌そうな顔で言った。
「分かったわよ。私一人でギルドに入る。あんたは異世界で労働者でもやってるのね。」
そしてギルメン募集のチラシを持って文香は出て行った。
俺はギルドに向かう文香を追いかけて言う。
「おい待てよ」
不機嫌そうに早歩きをしながら文香は言った。
「労働者やるんでしょ。ついてこないでよ。」
確かにギルドに入る気なんて全くない。
でも放っておけなかった。
文香に冒険者なんてできるわけがない。
なんとかギルドに入ろうとする文香を阻止しようと俺は必死だった。
そして説得しようと追いかける内にギルドについてしまった。躊躇ちゅうちょすることなく扉を開ける文香。
するとギルドの中が見える。
「「凄い」」
それが俺たちがギルドの様子を見て第1に出た言葉だった。
そこには武装した屈強な戦士や魔導師たちがいた。
そして目を輝かせながら文香は受付に向かう。
「本当にやるのかよ」
「しつこいわね。労働者はあっち行って。」
そして受付の女性に言う。
「ギルドに入りたいんですけど」