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黒い白百合  作者: 髙津 央
第四章 魔道犯罪
47/65

47.突入準備

 翌朝一番で、普家絵冬(ふけえふゆ)の上司・新月賛治(にいつきさんじ)の逮捕状が、発付された。

 張り込みの刑事に確認する。

 今朝は自宅を出ていない、と回答があった。

 念の為、橘警部が勤務先にも電話する。

 「古都府警です。お忙しいとこすんませんけど、普家絵冬さんの事件のことで、また上司の新月さんとお話しさしてもらいたいんですけど、今日、よろしいですか?」

 「お世話になっております。本日、新月はお休みさせていただいております。明日、ご用件をお伝え致しますが……お急ぎですか。では、お手数ですが、本人の携帯へお願いします」

 電話に出た事務員は、事件について特に質問しなかった。普家絵冬への心配を微塵も感じさせない、マニュアル通りの対応だ。


 打ち合わせでは、勤務先と自宅の二手に分かれる予定だったが、八人揃って新月賛治の自宅マンションへ向かうことになった。

 移動の車内で、三千院が【魔除け】の呪符を手にして、呪文を唱えた。

 「日月星(ひつきほし)蒼穹(そうきゅう)巡り、虚ろなる闇の(よど)みも(あまね)く照らす。日月星、生けるもの皆、天仰ぎ、現世(うつよ)(ことわり)(いまし)を守る」

 そのような意味合いの力ある言葉で、一枚ずつ呪符の効力を発動させる。

 見鬼の目には、真珠色に光って見える羊皮紙を各自の懐に入れた。

 手持ちの装備中では、最も効果時間の長い術で、三時間程度は、雑妖の類を寄せ付けない。

 【移魂の渦】のような邪法を行っている場なら、どれだけ雑妖が(ひし)めいているか、想像に(かた)くない。文字通りの意味で雑妖に「足を掬われる」と、思わぬ不運に見舞われることがある。

 呪符には気休め以上の効果がある。雑妖より強い魔物でも、多少は不快に感じるらしい。

 今は少しでも、リスクを減らしたかった。


 古都大安マンション手前の路地で、車を止めた。

 左手袋に【不可視(みえず)の盾】を貼り、降りてから発動させる。視えない盾が、一度だけ守ってくれる。

 刺股(さすまた)には、【退魔符】を貼るだけに留める。効果時間が短い為、ぎりぎりまで発動させない。


 魔道犯罪対策課の三人は、【消魔符】【退魔符】を三枚、【吸魔符】は一枚ずつ。

 呪符の他、嵐山は呪条(じゅじょう)送還布(そうかんふ)、鴨川は呪条、三千院はビー玉サイズの魔力の水晶を三個持っている。これ一個だけでも、三千院の月給一カ月分の手取りを軽く超える代物だ。血税を無駄に消費しないよう、三千院はポケットを押さえて決意を固めた。

 捜査一課の橘、神楽岡、中大路にも、呪文の詠唱を必要としない【吸魔符】を一枚ずつ持たせる。


 「裏のテープ剥がして貼るだけでえぇけど、無理して接触せんとって下さいね。相手は化けモンですから」

 嵐山課長が、捜査一課の三人に念を押す。橘警部が逮捕状を手に言った。

 「ほな、気合い入れて行こか」

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野茨の環シリーズ 設定資料
設定の説明とイラスト置場。
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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