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黒い白百合  作者: 髙津 央
第三章 誘拐事件
39/65

39.交友関係

 一方で、備東が登録しているSNSがみつかった。

 友人や元交際相手らも、借金の取り立てや復縁目的で、行方を捜していることが判明。事件のニュースをリンクで共有し、今後の対応をどうするか、相談しているグループもあった。


 ヤマ◇ビトー、マジしゃれんなんねー。

 セノ◇人殺しからカネ回収とか、ムリ。マジ無理

 イオ◇あきらめんの? だったら俺にも金くれ。

 セノ◇諦め切れねーけど、コロされちゃシャレんなんねーし

 ヤマ◇やっぱ、カネより命を大事にだよなー。

 セノ◇懲役何年だろ?

 ヤマ◇出てくる頃には確実に劣化してるよな。

 イオ◇もったいねー。ヤっとくなら、今の内?

 セノ◇今、ドコ逃げてんだろな?

 イオ◇逃げんの手伝ったら、ヤらしてくんねーかなー。

 イオ◇借金チャラでもイイ。

 ヤマ◇お前、殺人犯とヤんのかよ?

 セノ◇借金チャラ+お前をヤってカネ盗られるかもよ?

 ヤマ◇やべー、マジヤベー。ごーとーさつじんー。


 知人の一人が、一課の捜査員に遣り取りを提示し、任意でスクリーンショットを提供した。自身は報道を知って早々、グループとは少しずつ距離を置いている最中で、この会話には参加していない。

 「刑事さん、俺もカネ貸してたんっスけど、逮捕されたら返してもらえないんっスか?」

 「逮捕は関係ないで。金がなかったら、返すもんあらへんやろ」

 「マジっすか? 俺、トータルで七万くらい貸してんスけど?」

 「借用書(しゃくようしょ)は作ってへんのか?」

 「はぁ? 何スか? それ?」

 「あー……そらもうアカンゎ。金貸した証拠も何もあらへんねやったら、民事で裁判してもアカンゎ」

 「マジっすか? 何とかなんないんスか?」

 「兄ちゃん、人に金貸す時は、返って来んもん、あげたもん(おも)てすんのが、精神衛生上、えぇねんで。返してもらえんで困る金やったら、貸したアカン(かしてはいけない)

 「えー……ちょ、マジっすか?」

 「まぁ、高い勉強代やったなぁ」

 河原(かわら)刑事の説明に、青年は落胆したが、尚も食い下がる。

 「マジ、何とかなんないんっスか? 俺、マジ、カネ盗られてんじゃないっスか。詐欺とか泥棒とか、えーっと、マジでカネ、返って来ないんっスか?」

 「貸す時の話、録音とかしてへんの?」

 「いや、何スか、それ? そんなのいちいち録ってないっスよ……あ、でも、メッセは残ってるっス」

 青年は素早くケータイを操作し、該当のメッセージを表示した。河原刑事の返事も待たず、眼前に突き出す。


 ビトー◇ごめ~ん。次入った時、絶対返すから、1マン貸して~。

 ベツ ◇次っていつ? 給料日?

 ビトー◇なんと! 今回もぉすぐで~す♪ラッキー☆

 ベツ ◇もうすぐって、いつ?

 ビトー◇15日に入るから、その次ゎ返せるよ~♪

 ベツ ◇利子いらねーから、前のと足して返せよ

 ビトー◇え~? まだぃくらかゎかんなぃし~?

 ベツ ◇わかんねーってなんだよ

 ビトー◇1マン以上はカクジツだけど、まだゎかんなぃんだもん。

 ベツ ◇じゃあ、1万+千円でも2千円でもいいから、分割で返せ

 ビトー◇ぇ~っ? 返さなぃって言ってなぃじゃん。ケチ。

 ベツ ◇ケチじゃねーよ。借金増やしてねーでさっさと返せ

 ビトー◇せっかちクンは嫌われるんだよ~? ベッツンぃぃのwww

 ベツ ◇ケチじゃねーよ。貸さねーとは言ってねーだろ!

 ベツ ◇返してから借りろっつってんの!


 最近流行りのイラストがちりばめられた遣り取りで、河原刑事の眼にはふざけているようにしか見えない。本人達は大真面目だ。

 「で、こんなんで金、貸してもたんか(かしてしまったのか)

 「はい。でも、あいつ、十五日の夜、カネ入ったか連絡してもシカトして、ずーっとレスなし。コンビニ行ったら、店長が行方不明つってたし、それから、ニュースのアレもあって……刑事さん、こう言うの、詐欺じゃないんスか?」

 「これだけやったら、一万貸したか、確定せんしなぁ……いっつもこんなんなん?」

 「えぇまぁ、五千とか一万とか、ちょっとずつ。三回に一回くらいは給料日に返してくれるんスけどね」

 「で、返してもぉてへんのが、トータル七万?」

 「そうっス」

 河原刑事は、溜め息を(こら)えて聞いた。

 「貸したんと返してもぉたんの記録は?」

 「俺は、アプリで付けてるっスけど……」

 軽そうな青年だが、意外に堅実だ。

 「せやけど、弁護士付けたら足が出るしなぁ……弁護士なし、自力で少額訴訟やな。無料の法律相談で聞いてみ。で、この流れもスクショくれんか?」

 「いいっスよ。それやれば、七万、返って来るんスね?」

 「勝訴しても、無い(そで)は振れんからなぁ。まぁ、その辺も法律のプロに聞いてみ?」

 望みが出たからか、青年は表情を和らげ、快くスクリーンショットを提供した。

 「給料日前に入金て、何の金か聞いてへん?」

 「一日だけ、臨時のバイトがあるっつってましたけど」

 「どこで、なんの? 金額もわからんと受けたんか?」

 「えっ? いや、そこまではちょっと……」

 言葉を濁す青年に、河原刑事は無言で続きを促した。

 「俺は、カネ返してもらえれば、別にイイし……清楚系ビッチだし、金持ちのオヤジでもひっかけたんじゃないんスか?」

 「売春しとった言うんか?」

 「えっ? いや、それは……知らないっス。でも、あー言う奴だし、俺は、付き合ったことないんで……知らないっス。やり兼ねないな、とは思ってるっスけど、知らないっスよ。マジ」

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野茨の環シリーズ 設定資料
設定の説明とイラスト置場。
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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