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黒い白百合  作者: 髙津 央
第三章 誘拐事件
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38.誘拐方法

 報告書の同僚の談話によると、勤務態度は真面目。

 交際相手との先約がある場合は、会社の飲み会を欠席する。それを快く思わない者も、数名いるが、恨まれる程のことではない。

 七日の夜は特に用がなかったらしく、新月(にいつき)部長の奢りでステーキハウスに行った。

 部長と先輩社員の一人はハンドルキーパー、普家絵冬は下戸、もう一人の女性社員はアレルギーで、アルコールは飲んでいない。

 部署の十二人で行き、帰りは新月部長の車に五人、先輩の車に三人、残りはタクシーに分乗した。

 普家絵冬と同乗した社員は、異口同音に特に変わったことはなかった、と答えた。車内では、仕事の話と世間話をして、いつもと変わらない様子だった。

 今回の食事会は、ここしばらく忙しく、残業続きだった為、一段落したことで催された慰労会だ。

 中には、早く帰って寝たいと言う者もあったが、部の全員が、仕事帰りに参加した。


 少し残業があり、食事会は二十時前に始まって、約二時間で終わった。

 普家絵冬が新月部長の車を降りたのは、推定二十二時過ぎ。会の間、トイレに立った際に返信しており、交際相手の発言、履歴と一致する。

 コンビニの防犯カメラには、一人で車から降りる普家絵冬の姿が残っていた。車はすぐに出ている。

 帰宅後、荷物を置き、手ぶらでどこかへ行ったことになる。

 SNSで繋がっていた大学時代の友人らにも当たってみた。

 特に悩んでいる様子などはなかった、と言う。


 捜査員は、新月部長にも話を聞いていた。

 食事会を催した部長は、まだ若かった。聞けば、二十七歳だと言う。創業者一族のひとりとのことだった。

 普家絵冬(ふけえふゆ)の失踪については、自分のせいかもしれないが、そうではないかもしれない。

 一段落したとは言え、ヒマになった訳ではない。無断欠勤状態で、会社としても困っている。

 早く戻って欲しいが、今月中に戻らなければ、臨時でアルバイトを雇い、次の繁忙期に備えたい、と他人事のような答えだった。


 「サンちゃん、人攫いの魔法て、何かあんの?」

 「うーん……【跳躍】なら、知ってる場所に瞬間移動できますけど、誘拐となると……呪文を唱えてる間に腕を振り解かれたら、逃げられちゃいますよ」

 「スタンガンか何かで、動けんようにしたら、いけるやんな」

 「複数犯やったら、捕まえとく人と、魔法使いがおったら、いけるやろ。悲鳴を上げられんように、口にタオルでも押し込んで」

 鴨川と嵐山が即座に答えた。どちらもよくある手口だ。

 しかも今回は、行方不明者の身体を使うことも可能だ。女性相手なら、警戒も緩む。まさか、中身が魔物だとは思うまい。

 百合はもう一株、渦の中心にもある筈だが、みつからない。

 およその捜索範囲を絞り込み、魔道課とパトロールの警官が目を光らせているが、発見には至らなかった。鉢植えで室内か、マンション上層階のベランダや屋上、中庭で育てている可能性がある。

 備東安美利(びとうあみり)の身体は、殺人事件の被疑者として追われている。一課の別の班が捜査を続けているが、こちらも、事件以降の消息は掴めていない。

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野茨の環シリーズ 設定資料
設定の説明とイラスト置場。
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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