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黒い白百合  作者: 髙津 央
第三章 誘拐事件
26/65

26.不明六人

 「すんませんなぁ。ウチからも、悪いお知らせがありますんやゎ。昨日……九日にやね、またぞろ(またしても)、若い女の子の捜索願が出されましたんやゎ」

 生活安全課の大原が、申し訳なさそうに後頭部を掻いた。

 「氏名は普家絵冬(ふけえふゆ)さん。年齢は二十三。詳しいことは、手元にお配りした資料に書いてある通り、どうも、江田さんらと状況が似てるんですゎ。まだ、関係あるとは断定できませんのやけど、念の為、お知らせしときます」

 大原は時折、資料に目を落としながら報告した。

 これで六人だ。

 一同、資料を目で追いながら、大原の説明に耳を傾ける。

 「最後に姿を見たんは、七日の晩。会社の上司。職場のみなさんで、お食事をして、方向が一緒の人を途中まで、車で送りはったそうなんです。四人乗せて、最後に普家さんを降ろしはったそうです」

 「実家で親と同居やのに、どなして親の知らん間に、家へ荷物置いて消えてまうんや?」

 「あぁ、それなぁ、お父さんは帝都へ出張、お母さんは、近所に住んではるお姑さんが、熱出して寝込みはったから、看病しに行ってやったんやそうです」

 橘警部の質問に、大原がのんびりした声で答えた。


 母親は、八日の昼前に帰宅。

 午後、会社から、普家絵冬が出勤していない、と電話があった。

 会社から本人の携帯電話へ、何度も掛けているが応答がない為、実家の固定電話に掛けたと言う。

 母親が確認したところ、通勤鞄と携帯電話は、本人の部屋に置いたままだった。

 その日は結局、出勤せず、夜になっても帰宅しなかった。

 上司の話では、七日の夜、実家近くのコンビニ前で、普家を降ろしたと言う。

 コンビニからの帰宅途中、何かあったのでは……と母親が九日朝、警察に届け出た。


 「中身と身体が分けられて、ほぼ確実に術中やと思われるんは、江田英美(えだえいみ)飯田珊瑚(いいださんご)。江田さんは元に戻って一件落着。飯田さんの身体は行方不明。ひょっとしたら、備東安美利(びとうあみり)もそうかも知れん、と」

 鴨川が状況を整理する。

 今回の普家絵冬については、まだ不明だが、聞いた限りの状況は、よく似通っている。

 同じ状況での行方不明者は六名。残る三人の行方は、全く手掛かりがない。


 不可解な事件ではあるが、魔法使いや、魔法の道具のせいと決めつけるのは早計だ。

 もし、魔道犯罪対策課の推測通り、失踪事件の第一発見者でもある捜査協力者が、一連の失踪事件の犯人に殺害されたのだとすれば、警察が批難の矢面に晒されることは必至。更に、国内の魔法使いや、魔法の研究施設、魔法の道具を扱う企業や商店なども、巻き添えで批難を向けられる恐れがある。

 まだ、犯人像すら判然としない段階での報道発表は、見合わせることに決まった。

 「普家さんの関係者に、もうちょっと聞いてみよか」

 一課の橘が席を立った。


 翌朝、一課が改めて聞きこみに出た。

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野茨の環シリーズ 設定資料
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地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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