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黒い白百合  作者: 髙津 央
第二章 殺人事件 
25/65

25.魂の証明

 今日の会議では、更によくない情報が、取り交わされた。

 江田英美(えだえいみ)を発見した白神百合子(しらかみゆりこ)が死亡。目撃証言やカメラの映像から、殺人事件と断定。聞きこみなどで、発生時の様子がわかった。


 白神百合子は、婚約者の巴経済(ともえつねずみ)と共に古都大学を出て、出待箭内駅(でまちやないえき)へ向かった。先日の不審者のこともあり、毎日、巴が白神を下宿まで送り迎えしていたと言う。

 昨日も、二人で電車を待っていた。

 卒業制作の準備で遅くなり、ラッシュのピークは過ぎていた。電車が出たばかりで、次の電車まで十分程あり、巴は白神をホームに残し、手洗いに行った。

 回送列車が駅に進入する。

 白神の次に並んでいた女が、数歩下って助走をつけ、体当たりした。白神は線路に転落。直後に、回送列車が通過した。白神百合子は、搬送先の病院で死亡が確認された。

 ホーム監視カメラの映像から、白神を線路に突き落とした女は、備東安美利(びとうあみり)と判明した。

 行方不明者の一人で、江田英美のアルバイト先の同僚だ。

 備東は騒ぎに乗じて逃走。ハイヒールを履いているとは思えない速さで、駅を出た。その際、切符を通さず、改札機を強行突破している。

 駅前の人混みに紛れ、駅近くのコンビニの防犯カメラを最後に、行方がわからなくなっている。

 付近のカメラから、備東は二人を尾行していたことがわかった。駅へは、定期券ではなく、最低額の切符を購入して入場していた。どこかへ行く目的はなかったとみていい。

 尾行の開始地点は不明。

 江田と備東が勤務するコンビニは、古都大学にも近い。土地勘は充分ある。店員と客として、接点があった可能性もある。


 「もし、備東さんも、江田さんと同じ状態なら、本人はどこか別の場所に固定されていて、何かに身体を乗っ取られている可能性があります」

 「白神さんと備東の関係を(あろ)ても、アカン言いたいんか?」

 一課の神楽岡(かぐらおか)が、三千院に鋭い目を向ける。

 「仮に、本人さんのせいやなかったにしても、その、魂のアリバイ証明は、どないすんのや」

 見えたものを普通に解釈すれば、備東が白神を線路に突き落としたようにしか見えない。

 この日之本帝国は科学文明国だ。通常の事件であれば、肉眼で捉えることができ、科学的に検証できることを証拠採用する。

 例外的に魔道犯罪と断定された場合にのみ、「その他の証拠」が採用される。三千院らの魔道犯罪対策課は、その為に創設された部署だ。

 「何の術か特定できれば、身体を道具として使われたことは、証明できます」

 「術の特定は、今、古都大の伏見センセにお願いしてますんで、センセの返事待ちなんです」

 嵐山が言い添えた。

 魔道士の国際互助組合「蒼い薔薇の森」にも依頼してある。公判の資料として、物証と専門家の鑑定書が必要だ。

 ただ、その物証は、まだひとつも得られていなかった。

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野茨の環シリーズ 設定資料
設定の説明とイラスト置場。
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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