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黒い白百合  作者: 髙津 央
第二章 殺人事件 
22/65

22.術者候補

 捜査本部に戻り、嵐山課長に報告する。

 「生きて、ちゃんと体に戻れるんがわかっただけでも、(おん)の字や。ご苦労さん。大分、希望が出てったな。飯田さんも、絶対、助けよな」

 「サンちゃん、元に戻れた原因て、わからんの?」

 嵐山課長が表情を和らげて(ねぎら)い、鴨川が鋭く質問する。

 「何らかの原因で、術が解けたんでしょうね。犯人の用が済んで、自主的に解放したのか、何かアクシデントがあって、術が解けてしまったのかまでは、わかりませんけど……」

 「アクシデントやろね」

 嵐山課長が断定する。

 「どうして、そう思われるんです?」

 「なんでぇ、て、通りすがりの学生さんにひっついて、術で(くく)られてたとこから、出てもたんやろ? 犯人は、そんなんなる(おも)てなかったん(ちゃ)うん?」


 課長の言葉で、三千院は改めて考えた。

 巴が犯人でなければ、そうだろう。

 犯人なら、わざわざ自分から、家族に連絡するだろうか。あの時点では、まだ、江田の失踪は、(おおやけ)になっていなかった。

 巴が犯人だった場合は、どうだろう。

 何らかのアクシデントで、江田の魂を利用できなくなった。江田を誰かに押しつける為に、「手っ取り早く無料で使える見鬼(けんき)」として、警察を利用したのだろうか。

 古都大学は、川端署管内にある。

 行方不明者がこの範囲に集中していると言うことは、この辺りに土地勘のある者の仕業と見て、ほぼ間違いはないだろう。

 江田が覚えていないだけで、巴がコンビニや花屋へ、客として行った可能性は充分、考えられる。川端病院にも、患者か見舞いで訪れたかもしれない。飯田が勤める三光照輝宝飾には、婚約指輪を買いに行ったかも知れない。

 巴は、行方不明者全員と、接点を持つことができる。

 本人は魔力がないと言っているが、少なくとも霊視力はある。

 家族が魔力を持っているなら、無料で水晶に魔力を補充させることも可能だ。

 弟や親戚が持つ文献で、術の知識も得られるだろう。

 動機は不明だが、巴には術の行使……犯行を可能にする条件が、当て嵌まり過ぎる。


 「サンちゃん、難しい顔して、どなしたんや?」

 「巴さんって、実行できる条件が、全部揃っちゃってるな、と思って……鴨川さんは、どう思います?」

 鴨川に聞かれ、三千院は推測を詳細に語った。

 「わざわざそれを、自分からベラベラ警察に喋るて、犯人やったとしたら、古都大生の割にアタマ弱ない?」

 「動機もわからへんし。そもそも、その術は、何するもんなん? 使えるだけやったら、家に包丁ある人ら、みんな殺人鬼候補やで」

 鴨川が、自分のこめかみを指差し、嵐山課長は首を傾げた。

 「かく言う自分も、条件には当て()まるんですけど、犯人なのかって言うと……うーん……術については、明日、伏見教授が戻られるんで、調査を伝言してあります。万一、断られても、蒼い薔薇の森にも頼んでありますので、時間は掛かりますが、わかると思います」

 「何の術かわかったら、動機もわかるやろからね。ほな明日、センセによぉ頼んでな」

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野茨の環シリーズ 設定資料
設定の説明とイラスト置場。
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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