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黒い白百合  作者: 髙津 央
第一章 失踪事件
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11.夜の訪問

 撮影者の帰宅後、ネットオークションサイトをベテランママのメルアドで検索する。

 メルアドと同一のアカウントが見つかった。履歴を見ると、様々なキャラクターグッズが出品され、高値で落札されている。

 隣の市に住む親戚に事情を話し、園から帰った娘を翌日の夕方まで、預かってもらった。

 夫に電話し、仕事が終わったらすぐ帰宅するよう言い、オークションの履歴を印刷した。


 帰宅した夫が、玄関の靴箱に乗せていたクッキー缶も、なくなっていることに気付いた。

 集金用に現金を入れていた物だ。ありふれた缶だが、娘がマジックで名前やイラストなどを落書きしている為、一目でそれとわかる代物だ。


 夫婦で相談し、すぐに盗難届を出した。

 到着した警察の調べで、冷蔵庫の扉から家人ではない指紋が一人分、検出された。

 玄関とトイレのドア、カウンターキッチン、ミニテーブルからは、家人ではない複数の指紋が出た。

 翌日の昼過ぎ、新米ママがオークションを監視していると、件のマグネットがベテランのアカウントに出品された。


 警察が、事件当日に訪れた面々から事情聴取し、任意で指紋の採取を行った。家人と来客、窃盗犯の指紋を区別する為だ。

 その夜、ベテランがマンションに来た。

 インターホンの遣り取りは、至極まっとうだった。

 「引越してきて早々、泥棒に()うて可哀想。心配やから様子見に来てん」

 入口のオートロックを解除。

 ケータイの録音機能をONにし、上がって来たベテランと玄関のドア越しに応対する。

 「どない? 怖い目に()うて、大丈夫? 大事なモン盗られてへんか、一緒に見たるわ」

 「ありがとうございます。大丈夫です。奥さんに指紋の粉が付くといけませんから……」


 後でこの遣り取りを聞いた時、三千院は心底、呆れた。

 知り合ったばかりの赤の他人が、貴重品の位置を把握しているとは思えない。


 「まぁ、そない言わんと、ほな、その掃除も手伝(てつど)うたげるわ」

 「ありがとうございます。大丈夫です。警察の捜査で散らかってますし……」

 「マグネットがバッグの金具にくっついとったから、返したいんやけど、開けてんか」

 「マグネット? どこのマグネットですか?」

 「冷蔵庫の戸ぉにあった奴。使(つこ)たコーヒー茶碗、洗おうとした時に……」

 「流しと冷蔵庫は随分、離れてますけど、バッグを持って洗い物なさろうとしてたんですか?」

 「新入りの癖に生意気な! こんなしょうもないモンくらいで盗人(ぬすっと)扱いしやがって!」

 玄関のドアに何かを投げつける音と、足早に立ち去る音の後、静かになった。念の為、通報する。


 警官……上司と三千院が確認すると、例のマグネットが三つ落ちていた。二つは、キャラクターが描かれたプラスチック部分が割れていた。

 マグネットは証拠品として押収し、録音のデータとマンションの防犯ビデオも提出された。

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野茨の環シリーズ 設定資料
設定の説明とイラスト置場。
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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