第23話:裏切り
ドサッ。
沙紀は完全に意識を失いその場に崩れ落ちた。
そんな沙紀に涼と呼ばれた少年は手を伸ばす。そして体に触れようとした瞬間、沙紀を守るように炎が円を描き出す。
炎が上がる寸前で、涼は沙紀から離れる。
「何するんだよ、おっさん」
「その方に気安く触れるな」
そう言って炎の前に立ちふさがったのは、杉浦だった。
「困るんだよね、そういうことされると。僕達にだって任務ってもんがあるんだ、それにマスターから言われただろ? 僕達の邪魔はせずにしたがっていろって」
「ふん、悪いが私の主はあの男ではない。今回は、彼女を誘き出し事の真偽をする。それが互いの共通の目的でありそれを成すまでの契約だ」
「じゃあ、あんたは彼女が本物だって認めるんだ?」
「半分はな」
「どういう意味だよ?」
「お前達に教える筋合いはないさ」
「何だって!!」
涼は、杉浦に向かって風を放つ。が、杉浦はそれを薙ぎ払った。
「くそっ!! 千夏!」
「涼、下がって。行きなさい」
千夏は杉浦に向かい、何かを投げつけた。
杉浦は、持っていた銃でそれを打ち落とす。
そして打ち落としたものからは、水が流れ落ちてくる。
その水はまるで意志を持つかのように杉浦へと向かっていく。
「ちっ! 風と水の組み合わせか!」
杉浦は、襲ってくる水を避けようとはせず、自らの前に炎壁を作る。
「マスターがあなたを信用するとでも?」
「…………………だろうな。こちらもはなから信用されているとは思ってなかったさ!」
杉浦は、自らの周りに火玉を作りだし、それらに涼と千夏を襲わせる。
それを合図に三人の戦いは始まり、意識がそちらに集中したせいか、三人は同じフロアに現れた人間達に気付くことはなかった。