第21話:誕生!危険探知犬
「いいかげんにしやがれ――――――――――――!!」
田丸の叫びが部屋に響く。その足元では、疲れ果てた大祐と皐月が座り込んでいた。
部屋に入ること、30分。時間にしては短い。が、3人にとっては何倍もの時間と労力を使った30分だ。
そもそも、建物に侵入した時に着いた部屋には無数のドアがあった。そのドアのいずれかの先にこのトラップの出口があるだろうと結論を付けた3人は、慎重に1つ、1つ、ドアを開けていく作業にあたることにした。
今までの経験からしてすぐにかたがつくだろうと楽観視していた田丸と皐月ではあったが、ところがどっこいそうそう楽にはいかないということを身をもって知らされていた。
とりあえずこの部屋に存在するドアは全部で30個。先ほど開けた、ドアが半分の15個目だ。
それまでに仕掛けられていたトラップは、そこまでひどい物ではなかった。
例えば、開けた先が極寒の地であったり、突然の雷雨にさらされたり、逆に太陽がさんさんと降り注ぐ砂漠だったりした。
そしてこのトラップのたちが悪いのは、一度入るとドアが消えてしまい、その空間の何処かにあるドアを通らなければ元の場所に戻れないということだ。
今までは皐月の感応能力でドアの場所を探知できていたが、その皐月の疲労も大分深刻なものになっているようでつらそうである。
「………………新人。あなた、残りのドアで入っても大丈夫そうだなっていうドアを探しなさい」
「は? そんなの分りませんよ……………」
「いいから、探せって言ってんだよ。無駄口を叩く暇があるならやれ」
皐月のドスの聞いた声と鬼のような形相にすぐに立ち上がり探し始める。
(と言われてもな……………。このドアは止めよ)
ドアの前を行ったり来たりし始めた大祐を見物しながら、田丸は皐月の隣にしゃがみこんで皐月に水を手渡す。
「姐さん、水。てか、新人の言う通り、ドアを判別するなんて無理じゃないですか?」
ゴクリと喉を鳴らしながら水を飲み、ひとごこちついた皐月は田丸の疑問に答えた。
「さっちゃんがね、言ったのよ。彼は危険探知犬だって」
「危険探知犬?」
「そう。彼の特異能力は、予知なのよ。それもかなりの精度を持ったね。と言っても意識して自在に使える能力ってわけじゃないらしいわ。だから、使うとしてもすぐ近くにせまった危険ぐらいが本能で嗅ぎ取れる程度。だから、危険探知犬ですって」
「そうなんですか。でも………………姐さん?」
「何?」
「犬はひどくないっすか?」
「命名したのは、さっちゃんよ。何でも昔飼っていた犬に似てるらしいわ」
「……………さっちゃんが命名したなら仕方ないか。一応、愛情はあるわけだし」
「そういうこと。でも、さっちゃんが本人に命名するまでは内緒よ」
「了解っす。おっ、戻ってきましたよ」
一通り、ドアを調べ終わった大祐がダッシュで戻ってきた。
「あの、一応これかなっていうのはありましたけど………………」
「そう、じゃあ行くわよ」
「了解です。どれだ?新人」
「あれです」
大祐は、幾つ目かのドアを指差す。
そのドアを目で確認すると3人は、ドアの前へと移動する。そして、先程までと同じように田丸が先頭に立ち、皐月、大祐と続き準備を整える。
「行くぞ!!」
田丸は、後ろの2人にそう叫ぶと思い切りドアを開け放った。




