第15話:振り出しに戻る?
「課長! 出ましたよ。おお、帰ってきたか」
そう大声を上げながら入って来たのは、田丸だった。
「そうかい、どうだった?」
「予想通り、犯人は杉浦ですね。それと、当時中にいた人間の証言がとれました。今、銀行内にいるのは、杉浦と人質のカップルが一組だそうです」
「おかしいな………………」
田丸の言葉は、課長にとっては予想外のことらしくかなり驚きを誘ったようだ。
「大熊君、悪いけど沙紀君を急いで呼んで来てくれないか? 資料室にいるだろうから」
「了解です」
大祐は、田丸の脇をすり抜け、急いで資料室へと向かった。
「何か気になることでもあるんですか?」
「ああ、少なすぎる」
課長は、そう言うと腕を組み考えた。
(これはどういうことだ? 犯人の狙いは……………………)
大祐は、ダッシュで階段を駆け上り一気に資料室まで走るとノックもせずドアを開けた。
そして部屋にいるはずの沙紀を探すと捜査ファイルの棚の前に立っていた。その手には1冊のファイルが手にされていた。
「沙紀さん! 課長が急いで来るようにと」
「…………………分った」
沙紀は手にしたファイルを棚に戻すと小走りで部屋を出て行く。
大祐も急いで踵を返したが、沙紀の手にしていたファイルが一瞬目に入りのとても気になった。
そして本部に戻りながら思った。
(捜査ファイルNo.1。あれは、もしかして沙紀さんの家族の………………)
「課長! 何か分ったんですか?」
「沙紀君。やはり犯人は杉浦だ。それと人質はカップルが一組だそうだ」
「おかしくないですか?」
「やっぱり、そう思うかい?」
「はい」
大祐には課長と沙紀の会話がさっぱり分らなかった。
「あのー、さっちゃん。私達にも詳しく説明して貰えるかしら?」
皐月の言葉に沙紀は一言謝り、大祐達にも説明した。
「人質を入れて行内いるのは三人。ということは杉浦単独での犯行。でも、それでは少なすぎるの」
「少ない?」
田丸は、まったく分らないという風に肩をすくめる。
「銀行には強力な結界が張ってある、皐月ちゃん達でも侵入が難しいという代物が。その上、中にはトラップの幻覚の気配がする。あんな結界を張りながら同時にトラップを仕掛けて人質を取るなんて無理よ。杉浦の能力は発火なのよ? だから少なすぎるの」
「つまり、その人質も共犯の可能性が大だ」
沙紀の言葉を引き受け、課長は最後にそう締めくくった。
「人質も共犯って。そんなの我々が捜査したら分ることですよね、まして特異課の存在を知っている人間なら尚更ではないですか?」
大祐の言葉にもっともだと沙紀と課長は頷く。
「犯人の狙いは何なのか? はっきり言って振り出しに戻ったわ」
沙紀には内心ある一つの考えが浮かんでいたが、いまいち確信が持てずにいた。
(杉浦の狙いは、いったい何? もしかして……………でもそれは……………)