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第12話:特異研

 特異能力研究所。その建物に着き、建物を見上げると大祐の口からは思わず感嘆の溜息が出る。


 (旧・国会議事堂。まさか、こんな所がなぁ。世も末だ)


 大祐は、ボーっと入口で立ち続けていた。するとそれを見た沙紀は、大祐の腰を思い切りどつき、先へ行くように促す。


 「何、ボーっとしているのよ、行くわよ!」

 「はっ、はい」


 入口を抜けると正面に受付があり事務員らしき女性が座っていた。受付カウンターまで行くと沙紀は、警察手帳を取り出しその女性に提示する。それを見た大祐も慌てて同じように提示した。


 「特異課の九重と大熊です。ライブラリーの使用申請をしているのですが」

 「はい、聞いております。どうぞ」


 沙紀は女性に軽く会釈すると右手奥の階段へと向かう。大祐はその後を追いながらキョロキョロと周りを見る。


 (確か地震で半壊したって聞いたけど)


 そんな大祐の疑問に沙紀が答えてくれた。


 「この建物は、補強と建て増しを行ったの。外観は以前と変わらないけれど、中身はだいぶ違うわ。設備やセキュリティの面でも段違いよ」

 「へー。でも、まさかこんな歴史的建物に入れるなんて思いませんでしたよ、俺」

 「そうね、でもこれからはあなたにとって馴染みの深い建物になるわよ。私達の健康診断もここであるのよ」

 「まじですか!? すげーっすね」

 「ここよ」


 階段を二階まで上がり、右方向に進んだ一番奥の部屋が目的のライブラリーだった。


 「この入口で前に渡したカードを通してちょうだい。じゃないと、警備装置に引っかかるから」

 「はい」


  大祐は、返事をすると沙紀と同じようにカードを通し、ドアを開けた。今まで、特異課関係の施設のドアを開けるとちょっと普通とは違う場所につながっていたりしたので内心、びくついていた。

 しかし、今回は予想がはずれたようだ。広い、室内の奥には書棚があり、中央にはいくつかのブースに区切られた席があり、左手には個別に仕切られたパソコンブースがある。


 沙紀は、左手のパソコンブースの一つに向かい、椅子に座り起動させた。

 大祐は、その作業を先の後ろから眺めることにした。


 「このパソコンのパスワードはカードに書いてある各自のIDナンバーを入れて」

 「はい」


 沙紀は、画面に向かい、ファイルを検索する。目的のファイル名は、『学園名簿』とだけ書かれていた。開いてみると、生徒の名前の一覧がずらりと並んでいた。生徒だけでこの人数。家族も入れると相当な人数になるだろう。しかし、今は全てを閲覧している時間はない。


 「いくつかのキーワードで検索したほうがよさそうね」


 沙紀はそう言いながら、キーボードを打ち始めたのだが、どうも手つきがおぼつかない。どうやら、沙紀にも苦手な事があったらしい。


 「沙紀さん、代わりましょうか?」


 その様子を見かねた大祐が、恐る恐る切りだす。すると長い沈黙の後、ボソリと沙紀は呟いた。


 「……………………お願い」


 大祐は、沙紀と場所を入れ替わると問いかけた。


 「何ていれますか?」

 「そうね………。能力者、家族会のメンバー、三年前の犠牲者の親族で」

 「はい」


 大祐は、言われた言葉を打ち込み、エンターキーを押す。すると数秒後、ある一人の男性の姿が写しだされた。


 「杉浦 仁すぎうらじん。家族会の会長で能力は発火ですね」


 大祐は確認を取るように口にした。すると画面に映し出された男の顔を見つめ、沙紀はつぶやいた。


 「昔、会ったことがあるかもしれない」


 沙紀は、男の顔を食い入るように見つめながら懸命に自分の記憶を探った。


 (でも、いったいどこで?)

 



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