木枯らしに揺れる下宿の江戸風鈴
挿絵の画像を作成する際には、「AIイラストくん」と「Gemini AI」を使用させて頂きました。
宅飲みに誘われた私がゼミ友の王美竜さんの下宿で目にしたのは、美しいけど季節外れな一品だったの。
「あらら、美竜さんったら。あの江戸風鈴、まだつけてたの?もう秋だってのに。」
窓枠の所にぶら下がっているガラス製の江戸風鈴は、大学の休みを利用して訪れた東京旅行でのお土産品だ。
この風鈴を見ていると、浅草寺や東京タワーとかを見て回った三泊四日を思い出すよ。
確かこれと同じ物を、台南市の国民中学に通う妹さんとその友達にプレゼントしたって言ってたっけ。
ところが嬉々として宅飲みの準備を進める美竜さんには、片付け忘れた風鈴に今更気付いた焦りも、季節外れになった事への恥じらいや自嘲もなかったんだ。
「おっ、蒲生さんも気付いてくれた?そうなんだよ、もう秋風どころか木枯らしまで吹くようになった季節だってのにね。」
その上機嫌具合と来たら、「よくぞ聞いてくれました!」と言わんばかりだったよ。
「その様子だと片付け忘れたとかじゃなさそうだね、美竜さん?」
「当たり!何しろ木枯らしに鳴る風鈴の音色を聞けるのは、日本の秋だけだからね。それを聞きたくて吊るしているような物だよ。」
確かに秋に吹くユーラシア大陸由来の風を「木枯らし」と呼ぶのは日本だけだからね。
日本人の私には単なる季節外れに感じられる秋の風鈴も、台湾からの留学生である美竜さんにとっては日本の木枯らしを聴覚込みで味わう為の意図的なツールって事か。
「成る程ねえ、美竜さん…それはそれで風流な気もするよ、風鈴だけにね!」
大学祭みたいな学内イベントで何度か漫才をしているせいか、隙あらばダジャレを言いたくなっちゃう。
普段の漫才だとツッコミ担当の私だけど、今回はボケさせて頂いたよ。
「風流と風鈴をかけたダジャレって事、蒲生さん?ならばここで一句、『木枯らしに、揺れる風鈴、季語がズレ』なんてね。」
「夏と秋の季語が両方入っているよ、美竜さん!」
すると現状に最適な俳句を即興で詠んじゃうんだから、全くこのゼミ友には敵わないよ。
「という訳でさ、蒲生さん。今日の宅飲みは、あの木枯らしに揺れる風鈴にでも乾杯しようよ。」
「それは悪くないね、乾杯!」
こうして缶ビールで喉を潤した私達の耳には、木枯らしに揺れる江戸風鈴の音色が涼しげに響いていたんだ。
だけど「冬の北風に鳴る風鈴の音色を肴に呑もうよ!」って美竜さんが言い出したら、流石に止めようかな。
だって部屋に北風が入り込んで寒いじゃない…




