2 因縁
その腕輪を贈られたのは、両親が亡くなってからまだ心の傷が癒えない私の10歳の誕生日。
人生の明暗を分けると言ってもいい魔力検査を数日後に控えたある日、緊張して迎えたのは両親と共にやってきた2つ年上のギブスン侯爵家三男レヴィン様。
彼との正式な婚約がその日成された・・・はずだった。
私の後見人となった父の実弟であるボビン叔父様とギブスン侯爵との間で前もって二人の婚約について口約束が交わされており当事者であるレヴィン様と私の顔合わせの席が用意された。
初めてお会いしたレヴィン様はさらさらと流れる金の髪にエメラルドの瞳。二つ年上の彼はまるで絵本で目にした王子様の様に思えた。
その彼が私にこっり微笑んで差し出したのは銀色に複雑な文様が彫られている魔道具の腕輪だった。
「お誕生日おめでとう。僕の大切な婚約者、リディアンヌ。
婚約者の証として君に僕とお揃いの腕輪をプレゼントするよ。
僕のは金色。君にはこっちの銀色が良く似合いそう。
これからはこの腕輪がいつも君を守ってくれるから
これを僕だと思っていつも身に着けていて。」
「ありがとうございます。ずっと大切にします。」・・・
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私が8歳の誕生日を迎えて間もない頃、両親は王都へ向かう馬車の事故で無くなった。
祖父母もすでに他界して他に姉妹も無く伯爵家に一人残された私の元には父の実弟であるボビン・ジーニス子爵一家がやってきた。
叔父がジーニス伯爵家を継ぎ、私は叔父の養女となった。
ボビン叔父様には私にとっては従妹にあたる七歳の娘ミアがいた。
私はジーニス伯爵家の血筋を色濃く表すミルクティー色の巻き毛にラベンダーの瞳。その上長いまつ毛に大きな瞳の所為か実際の歳よりも幼く見えるらしい。
従妹のミアは母親の血を受け継いだストレートの金の髪にローズクォーツの瞳。
私と対照的で大人びて見える。
一緒に暮らし始めて二、三年が経ちミアが私に遠慮ない会話をするようになると初めて会う人たちは彼女が姉だと勘違いする事も珍しくなかった。
時を同じくして私のその後の人生を決定づける魔力検査が行われた。
このイエスタ王国では当主の子息、令嬢の中で魔力のより多い者が次期当主となる。
レヴィン侯爵令息との婚約成立から数日後に希望に満ちて受けた魔力検査でジーニス伯爵家長女の私は魔力発現見込み無しと判定された。
通常は幼児の頃から魔力が発現し始めて10歳になる頃には魔力の有無が確認される。将来の保有魔力量は10歳でほぼ決まる。10歳の検査で魔力が確認できなければ、生涯にわたって魔力の出現は絶望的である。




