「徳」の換金所
掲載日:2026/01/15
ある日、政府は「徳」を可視化するチップの埋め込みを義務化した。善行を積めばポイントが貯まり、不徳を働けば減る。人々は競って席を譲り、ゴミを拾った。
貧乏な青年エヌ氏も必死に徳を貯めた。ようやく高級車一台分のポイントが貯まった日、彼は換金所へ向かった。
「これを全て現金に」
窓口のロボットは冷淡に告げた。
「承知しました。ですが、換金した瞬間にあなたの『欲』が『徳』を上回ります。ポイントは全消滅し、さらに強欲罪で罰金です」
エヌ氏は絶望したが、ふと気づいた。
「じゃあ、このポイントを誰かに無償で譲るよ」
「その瞬間、あなたの徳は倍増します。より換金できなくなりますが、よろしいですか?」
この街には、一生贅沢ができない「聖人」があふれかえっている。




