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退魔師の光〜一般人の私が、兄を殺した妖魔達を引き寄せてしまう理由。覚醒して退魔師を目指します〜  作者: seika
二章

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昇級試験――終わりと始まり

 会場の熱気が冷めないまま次々と順位が映し出されていく。脱落者が多かったので58人中20位までしか発表されなかった。


「さてさてー! では【星1】担任、みんな大好き玲司先生からお言葉をいただきましょう!!」


 指名を受けた玲司先生は、静かに壇上に上がった。


「はぁーい! みんな、お疲れさま〜! 先生見ててドキドキしちゃった!」


 玲司先生のほのぼのした感想に張り詰めていた空気が少しだけ緩んだ。


「リタイアした子たちも、落ち込まずにまた一から頑張りましょう。自分の弱さを認め、諦める選択をしたことを悔しく思っている人もいるでしょう。でも恥じることはないわ。自分の命を守ることが何より大切なのよ。」


 玲司先生は観客席を見渡す。

 私たちに気付くと優しく微笑んだ。


「凪くん1位おめでとう! 天音さんも結菜さんもよく頑張ったわね。とても白熱してて先生感動しちゃった」


 凪は照れくさそうに頭をかいた。

 結菜は少し照れているようだ。

 私は……どんな顔をしていたのだろうか。


 玲司先生は何かを企んでいるのか、ニヤリと笑った。

 あの笑い方をするのは、夜間授業以来だ。

 また何か企てているのだろうか。


「ふふ、1位を取ったからって昇級できるとは限らないわよ? 審査基準は得点の多さ、とは言ってなかったからね〜」



「え? そうなの?」

「言い切ってなかったのか? 俺たちがそう解釈しただけで」


 みんなから疑問の声が上がる。

 凪が大声で、壇上に立つ玲司先生に詰め寄った。


「はあ!? ほんならオレはどうなるんやーーー!!?」


「さあね、結果は次のクラス替えのお楽しみ! だからまだ希望は捨てちゃダメよん」


 私と結菜は顔を見合わせた。

 玲司先生の言葉は、私たちに希望を抱かせるものだった。まるで「昇級の権利は私が握っているのよ」と言われたように受け取ってしまう。玲司先生の考えはいつも一筋縄ではいかない。


「退魔師に必要なのは妖魔を倒す力だけじゃないわ。別のこともまた、評価の対象よ」


 玲司先生の話す別のこととは何を指すのか。私たちはもちろん【星2】の生徒たちも分からないみたいだった。


 霧島くんたち【星3】は……表情が読めない。

 そもそも話には興味がなさそうだし。

 ん? ピンク髪の女の子があたしを見てる。

 ……穴が開くほど見ている。


 な、なんかしたっけ?



「誰が昇級するんだ……?」

「2位以下でも可能性あるってことか?」

「いや、そもそも昇級するやつがいないってことも……」


 まだ玲司先生の言葉の意図を汲もうと、近くにいる者同士で憶測が飛び交っている。玲司先生に目を向けると、不敵な笑みを浮かべるだけで、それ以上何も語ろうとはしなかった。




【星2】の昇級試験が始まった。

 大小さまざまな壁や障害物で構成された闘技場で、防御役と攻撃役に分かれたチーム戦が行われた。結界で防御しつつ、相手に攻撃を命中させ、最後まで残ったチームが勝利するサバイバル形式だ。


「なんや、【星2】言うても、こんなもんかいな」


 凪の呟きが耳に届いた。

 確かに想像していたよりも手が届きそうに思えた。

 勢いで突き進み、連携の取れていないチームは序盤で次々と脱落していく。最終的に勝ち残ったチームは見事な連携と戦術で攻撃を決め、観客席からも拍手が湧き起こった。



 そして【星3】の昇級試験。こちらは個人戦のトーナメント形式。武器は禁止され、体術と結界だけで勝負する。


「蓮様、超かっこいいーーー!!!」

「烈様も素敵ーーー!!」


【星3】の生徒たちはアイドル要素が多いみたいだ。

 イケメンや美女が並び、見るだけで圧倒される。


 それぞれの戦い方も別次元で、私ではとても太刀打ちできないような戦いだった。あの中に入って行ったら瞬殺だろう。


 目に見えないほどの速さで、周囲の生徒たちもその動きについていくのがやっとだった。後半になるとさらに白熱し、凪さえも終始黙ってその戦いを見守っていた。


 試合は一歩も引かない攻防が続いた。


 そして、ついに決着がついた。

 勝利の栄冠を手にしたのは蓮だった。

 結界を一切使わず体術だけで相手を制したその姿に、観客席の誰もが【星3】の差と、蓮の圧倒的な強さを改めて思い知ったのだ。



 一年生の試験が全て終了すると、私たちは春休み休暇に入った。一方、教師たちに「春休み」というものはない。教師陣が会議室に集められ、今年度の昇級者を決定する議論が行われた。私たちの運命もまた。ゆっくりと決まりつつあった。





 *


「――では、【星2】からの候補者はなし、ということでよろしいかな? 柏木先生」


「はい、【星3】に上がれる実力者は今のところいませんね」


 柏木先生はため息を吐き、校長先生は穏やかに頷いた。


「【星1】クラスはどうかな、玲司先生?」


 呼ばれた怜司は静かに資料を開いた。


「はい、【星1】からの候補は三人です。

 体術授業を担当していた美濃先生と話し合い、模擬テストや昇級試験なども踏まえた結果ですが、まず一人目の候補者は……早川凪さんです。今回筆記の点数は一応合格圏内でしたので」


 周囲の教師が頷く。


「まあ、彼は当然でしょうな。座学が基準を満たしているなら異論はありませんね」


 みんなの合意を早々に受けた玲司は、流れるように次の話に移る。


「二人目は篠宮結菜さんです。以前の彼女は成績こそ申し分ありませんでしたが、実践の場ではやや躊躇する面が見られました。


 ですが最近は、白瀬天音さんや早川凪さんと共に訓練を重ね、模擬テストではチームを支えるサポート能力を発揮しています。昇級試験でも自分の知識を活かした見事な戦いぶりを見せました。一位には届きませんでしたが、その戦術やサポート能力は彼女だけの立派な武器です」


「ふむ……あの子はこの一年で、自分を理解して自分だけの戦い方を見つけたようですな」


 校長先生がふぉふぉと、愉快そうに笑った。


「まあ、【星2】に上げて伸ばしたほうが良さそうですね」


 反対する者はいなかった。

 そしていよいよ、最後の候補者の名前が玲司によって読み上げられる。


「最後は――」


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